レムデシビルとヒドロキシクロロキン 4

新型コロナウイルスがきっかけで、ウイルスへの関心がますます高まっています。同じウイルスでも、インフルエンザのウイルスは、ウイルスの一般認識と分けて考えることが通例のようです。
ここでは、自分なりにその違いを探り、わかったことを共有します。

インフルエンザのウイルスはどんな構造?


インフルエンザウイルスはその内部構造たんぱくから、3種類に分けられる。
A型はRNA分節が8、鳥や豚にも感染する。B型はRNA分節が8、鳥や豚には感染せず、ヒトに感染する。C型はRNA分節が7、豚に感染する。

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インフルエンザウイルスの内部構造 Wikipediaより和訳

ウイルスと違うの?

インフルエンザウイルスの表面はエンベロープをもつという点でウイルス全般と同様だが、特有のたんぱくをもって、この分類がおこなわれる。

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インフルエンザウイルスの特徴

A型の場合。
細胞内部では、ウイルス粒子から遺伝子が放出される。この、ウイルスゲノム複合体は、細胞核へと移行する。ノイラミニダーゼは、細胞表面のシアル酸を分解する。そうすると、子孫ウイルス(出芽で発生)はべつの細胞へと移るとき、宿主細胞と切断を行なって、また感染のために吸着する。

吸着→ウイルス取り込み→膜融合→脱殻→ウイルスゲノム転写→複製→ウイルスたんぱく質の合成→ウイルス粒子の再構築

インフルエンザの治療薬のポイントは?

上に挙げた感染サイクルを、いかにして中断するか?
これがインフルエンザの治療に本質的解法をもたらします。
たとえば、インフルエンザを対象に開発された抗ウイルス薬の例は、このサイクルの「どこ」を阻害するのかで分けられます。

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抗ウイルス薬を阻害過程で類別

抗ウイルス薬といえば、アビガンもあるけど?

インフルエンザから話を転じると、

「複製」のプロセスを阻害する抗ウイルス薬が、新型コロナウイルスの治療薬として、富士フイルムの肝いりで開発されたアビガンです。

アビガンの別名はファビピラビル。中国語では、「法匹拉韦」で知られています。

富山化学工業の江川裕之らが合成し、古田要介らが抗インフルエンザ活性を見出した。富山大学医学部の白木公康らがインフルエンザ感染マウスでの有効性を確認し、タミフルより強い治療効果を有していること、薬剤耐性を生じないことを見出した。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ファビピラビル
インフルエンザの治療に使えることで普及が進んできたファビピラビルですが、2020年に一気に有名になったのは、新型コロナウイルスの流行中の3月です。日本国内では、これまでに2月から厚生労働省の判断で、感染者への投与を開始しています。
中国の武漢では3月下旬に、7割以上の軽症患者において1週間以内での快方がみられるとの研究結果が発表されています。
アビガンとレムデシビルの共通点は、このRNAポリメラーゼを阻害する点です。一方、異なることはレムデシビルが点滴を通じて投与するのに対し、アビガンは内服薬として投与すること。また、副作用も異なります。レムデシビルは肝障害、腎障害が主な副作用なのに対し、アビガンは催奇形性が指摘されています。このため、アビガンを妊娠している方に投与することができないという問題があります。現状ではレムデシビルを承認する国が続出したのに対し、アビガンは承認に至らず、やはり副作用の安全性が大きな要素になっているようです。

アビガンの関心の向きを検索から

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アビガン検索とサブワード

Yahoo!ではアビガンとともに検索されたサブワードとして、「製薬会社」「効果」「副作用」が上位に、Googleでは「副作用」「承認」「コロナ」が上位に入っています。なお、Googleでは「レムデシビル」との組み合わせで検索する人が比較的散見されます。Yahooでは、「価格」という関心を寄せる方が見受けられ、このあたり、日本国内での承認を目指し、先行しているレムデシビルとアビガンが比較対象になりつつあることが垣間見えるようです。

レムデシビル、ヒドロキシクロロキンの現況をツイート数から

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レムデシビルとヒドロキシクロロキンのツイート数

レムデシビルがやや優勢だった前日とは若干の変動があったようで、ヒドロキシクロロキンは日本語で「24時間以内200件」英語で「2時間以内で400件」(8月9日14時現在)という数字を見せています。レムデシビルをファイザーが製造するという速報に影響された前日からの反動もあったかもしれません。

あとがき

インフルエンザのウイルスが新型コロナウイルスと共通項が多ければ、もう少し治療薬の開発は順調に進んだかもしれません。RNAを基盤とするウイルスであることは共通ですが、増殖過程をみていくと、

プラス鎖の一本鎖RNAをゲノムとして持つため、標的細胞の細胞質でそのままmRNAとして機能し、標的細胞のリボソームに結合して、RNA合成酵素を含むウイルスのタンパク質が作られる。

との記述がWikipediaにもあるように、インフルエンザはマイナス鎖の分類であって、このあたり一筋縄ではいかない要因とも見受けられます。
アビガンに関しては、中国での先行事例が奏功するかに見えた3月に、日本が国を挙げて推奨したのが期待を盛り上げたのですが、その後承認へのプロセスが難関で、結局中国でも事例が十分にあったレムデシビルを日本も承認するという流れが出来やすかったように見えます。
現状では、レムデシビルを上回る関心がヒドロキシクロロキンに寄せられている観測結果もあり、筆者のみたかぎり、レムデシビルとヒドロキシクロロキンのテーマで継続して調べていく意味はあると思われます。


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