ワイヤレス・ネット中立性をめぐる、グーグル対グーグル

(This is a translated version of "Techdirt" blog post. Thanks to Mike Masnick.)
ネット中立性についてグーグルとヴェライゾンが声明を出した「提携」「合意」「指切り」「施策枠組み」にかんしての騒動は、誰も認めてはいないだとかこの枠組みはまったく無意味だとか、誇張されているように思うが、これほどの反響があるのを眺める分にはおもしろい。グーグルにあまりに頼り切っていた(かもしれない)多くの人たちは、いまやグーグルがダークサイドに駒を進めたと金切り声をあげる。わたしはどちらの味方でもない。だが、これはよく計算されたビジネス上の決定で、グーグルは遅かれ早かれそうする運命にある種類のことだったし、それほど特別な意味をもつことでもないように思える。
一方に立つグーグルは、これらの攻撃に応じ、いくつかのポイントで回答し、自己弁護をしようとしている。グーグルにとって不幸なことに、世の中にはグーグルと呼ばれるすばらしい検索エンジンがあって、それを使えばグーグルと呼ばれる会社が過去になにを言ってきたか掘り返すことができる。「ブロードバンド・リポート」の記事でカール・ボードはグーグルの施策弁護士リチャード・ホイットの心変わりを指摘している。例を挙げると、ヴェライゾンとの合意「枠組み」(失礼)を弁護するブログ投稿で、ホイットはなぜかれらがネット中立性のルールをモバイル・ネットワークに適用しないことに問題がないと考えているかを説明している。彼はまず、過去においてかれらがオープンネスの守護神として振る舞ったことを認めたものの、今回は容認できる妥協であることの理由を数点述べている。

第一に、ワイヤレス市場はワイヤライン市場とくらべ、より競争が盛んです。コンシューマはプロヴァイダをより多くの業者から選び取ることができます。第二に、ワイヤレス・ネットワークはワイヤではなく電波を利用するのと、多くのユーザの混在する緊迫したキャパシティを共有するため、キャリアは自社ネットワークをよりうまく活用する必要があります。第三に、ネットワークとデヴァイスのオープンネスは、当分野において注目すべきビジネスモデルとして飛躍しつつあります。

だが・・・当のリチャード・ホイットは2007年、モバイル・プロヴァイダはモバイル・ネットワークを無駄に使っており、一層のオープンネスが求められると論じている。

ワイヤレス・プロヴァイダは一般的なインターネット・アプリケーションおよびサーヴィスをブロックしており、自社の認めるもの以外はネットワーク上に付加されるデヴァイスを許可しないことが大筋であり、また自社の限定され定義の不明確なリストから外れたサーヴィスを利用しようとするものにはサーヴィスの提供を停止する権利を保持しています。

ボードが指摘するように、あれから「競争の盛んな」市場となるような劇的な変化はなにも起きていない。むしろ、変わったのはグーグルのモバイル分野への膨大な投資額である。

ではなにが変わったのか? グーグルだ。2007年、アンドロイドはメジャーなモバイルOSではなかったし、グーグルはヴェライゾンやAT&Tとのあいだに数十億ドルものワイヤレス広告の関係をもっていなかった。それから思い出されるのは、グーグルはキャリアによる小売り形態を素通りできるのではないかという期待をもっていた。この期待はネクサス・ワンとオンライン販売ストアの中断によってものの見事に打ち砕かれた。その施策の変更は明らかであり議論の余地はなく、動機付けもしかりである。グーグルはコンシューマにそっぽを向かれてまで(プライヴァシにせよネットワーク中立性にせよ)ワイヤレス広告の売り上げを保持しようとはしなかった。

繰り返すと、これらはどれも驚くほどのことではなく、ただ念を押すためだけだが、結局のところグーグルはグーグルにとってベストであると信じることを行なうのだ。それはなにも間違ったことはない。過去においてグーグルは、コンシューマにとってベストであることはグーグルにとってもベストであると考えていたが、いまは・・・必ずしもそれほど確かではなくなっている。思うに、グーグルはそのうち後悔するだろうというのは誤解である。こんどの合意(忌まわしい)「施策の枠組み」が何の結実にもならなかったとしても、今回の一手はグーグルはもはやコンシューマをサポートすることがベストなことであると信じていないことを多くの人に気づかせてしまった。同社が思っている以上に大きなバックラッシュを呼び込むことにもなりかねない。