レムデシビルとヒドロキシクロロキン15

前回はマラリアへの治療薬として果たしてきたクロロキンの役回りと、プロテアーゼの内情について掘り下げました。今回は少し方角を転じますが、掘り下げている場所はほとんど同じです。

レムデシビルとヒドロキシクロロキンのツイート数

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前回からの変動としては、ヒドロキシクロロキンの関心が急増していることです。とくに英語におけるツイート数が目だっています。ついでにいえば、ヒドロキシクロロキンの別表現である「HCQ」はさらに多く、2時間で1100件以上という数字が出ています。
レムデシビルの横ばいにくらべて、ヒドロキシクロロキンが賛否両論のなかで上昇波動を発生、これは何かの予兆かもしれないと筆者はみています。

さて、前回のプロテアーゼの係わりで、抗マラリア剤として用いられてきたクロロキンが、耐性菌の発生によって効きにくくなってきたという話を紹介しました。

この耐性菌とは、いったいなんでしょうか。

耐性菌と組み合わせて検索されたワード

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耐性菌と組み合わせて検索されたワード

Yahooにおいては「とは」「種類」「抗生物質」が上位に、Googleにおいては「治る」「を作らない」「対策」が上位に入っています。

抗菌薬は種類が多くありますが、共通していることは、細菌の増殖をなんらかの過程で「阻害」することで、病気の重症化を防ぐということです。

「阻害」するということの実態は、DNAやRNAの複製によって増殖する、その現場に薬物が自ら入っていくことにあります。リボソームなどの重要な物質に結合して、たんぱく質の合成や、核酸の合成を不能にする。

しかし、これは、細菌の根元を断つというよりも、自然に死滅するような環境を作ることに特化しています。ということは、うまいこと逃げてしまい、増殖に成功する細菌もある、と言うことができます。

そのようにして増殖の道を見出した細菌が「耐性菌」と呼ばれ、これは薬物を通じて種の存続を図ってきた人類にとって、おおいなる脅威です。

クロロキンがマラリアには用いられる例が減ったのは、耐性菌の登場と、副作用が原因といわれています。ヒドロキシクロロキンはもう少し副作用がおきにくいのですが、それでも薬と毒の関係で、治療薬としての地位が徐々に失われていったという事情があります。

「クロロキン耐性」検索上位10件

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「クロロキン耐性」検索上位10件

Yahooで「クロロキン耐性」と検索すると、1ページ目には上のようなアドレスが出てきます。「.ac.jp」が3件、「.go.jp」が3件で、併せて過半を占めています。あまり一般には需要のない検索ワードかもしれません。

この分野が、ある意味ではブルーオーシャンであり、研究の進展しだいでは、きわめて豊潤な市場開拓が可能であるとも推測できます。

近年では、平成30年に上原記念生命科学財団の学会誌に興味深い論文が寄稿されています。抗マラリア薬にかんして、耐性菌の発生を回避できる可能性があるという指摘です。

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上原記念生命科学財団の論文集から

クロロキンは弱塩基性なのですが、マラリア原虫の増殖に必要な環境であるリボソーム、そしてヘモゾインの働きに干渉することで病気の重症化を食い止める役割を果たしてきました。

この役割が、だんだん効かなくなってきたというのが、耐性菌の発生です。

PfCRT は栄養素の輸送体で、食胞内で分解された栄養分の排出体であること。薬剤感受性型も耐性型も共に抗マラリア薬を輸送すること。耐性化の原因は基質輸送の親和性の変化に伴う輸送量の違いであること。がその理由であることがわかった

https://www.ueharazaidan.or.jp/houkokushu/Vol.32/pdf/report/136_report.pdf

岡山大学の研究者である樹下成信氏は以前よりこの問題に係わってきたことで、大事なデータを突き止めたようです。

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耐性化のない抗マラリア薬開発に向けたPfCRTの機能解析

クロロキンの耐性菌という問題は、やはりコロナウイルスの治療薬としての可能性を検討するうえで、避けて通れない問題のように思えます。

弱塩基というのは、かんたんにいえば酸に対して塩基ということで、その度合いが弱いという意味です。

塩基(えんき、英: base)は化学において、酸と対になってはたらく物質のこと。一般に、プロトン (H+) を受け取る、または電子対を与える化学種。

https://ja.wikipedia.org/wiki/塩基

Wikipediaの説明で的確に表現されているので、ここでは付け加えるのを控えます。なんにしても、塩基性なので、うまく効くということで合っていると思います。

それが耐性菌の出現という問題に突き当たったのは、pH値の状況しだいで、「輸送量」が変わってきて、原虫の増殖を阻害するには不十分になってしまったということ。

とても込み入った話をしていることは自覚しています。ただ、これは避けて通ろうとすればかえって遠回りになると筆者は感じています。

問題点を少し振り返ってみると、
耐性菌の出現
クロロキンの副作用
マラリア原虫のもつ性質として、アスパラギン酸プロテアーゼ

このあたりが、結局は肝心だということがわかります。

新型コロナウイルスの治療に用いられたヒドロキシクロロキン。3月には米国で、4月にはブラジルでそれぞれクロロキン投与の方に体調急変で死亡という実例が報告されて、期待がしぼんでしまった残念ないきさつがあります。

しかし、これらの結果を、クロロキンの有効性に対する反証とするには、相当な不確定要素が絡んできます。結局は時間をかける外にできることがなく・・・という話になってしまいます。

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