レムデシビルとヒドロキシクロロキン 2
ヒドロキシクロロキンをくわしく知りたい
レムデシビルとヒドロキシクロロキン
の記事で少しずつわかってきた、COVID-19の治療薬の特定をめぐる動き。中国、米国、日本の方向性には、幾らか近似しているような気配がありました。
では、なぜ似ているように見えたのか? 錯覚なのか。これを知ろうという動機づけで、疑問点を深堀りしてみます。
1.レムデシビルの推進
2.クロロキンの推進
3.緊急使用の許可
こういった共通項はあったものの、そもそもレムデシビルとヒドロキシクロロキンは別々の病気に用いられてきた治療薬。
レムデシビルはギリアド・サイエンシズという製薬会社の開発による、ウイルス性疾患の薬品ですから、まずまず納得の行く話です。では、ヒドロキシクロロキンは実際、コロナウイルスの治療になぜ効くとされたのか?
クロロキンとは違うの?
クロロキン、といえば憶えやすいし、発音するのも面倒でない、名前らしい名前かもしれません。
検索するのも、クロロキンは件数が多いようです。ヒロドキシクロロキンや、リン酸クロロキンは合計してようやくクロロキンの件数に届くといった程度。
そもそも、2020年の初頭に急速に有名になった新型コロナウイルス。その治療薬として一躍脚光を浴びることになったのは、リン酸クロロキンでした。
リン酸クロロキンは新型コロナウイルスに効くのか
きっかけは中国。ヒドロキシクロロキンに類似したリン酸クロロキンを含む7種類の物質の作用について研究を重ねてきた公的機関。武漢ウイルス研究所を中心とする研究グループがNatureに寄稿したLetter(論文の一種)において明かされたのは、レムデシビルとの比較において十分に比肩しうる、クロロキン類の効能でした。
この結果が好ましいことを知った行政当局は2月、研究調査への支援に乗り出しました。その顛末は、このような流れにまとめることができます。
さらに、3月になると、日本でも実際に医療機関が患者への投与によって得られた臨床データを公表。
日本感染症学会が3月10日に公表したのは、次のような事例。
時間の推移とともに見ると、上にような順番でヒドロキシクロロキンの効能が徐々に明らかになったことがわかってきます。
副作用は十分に検証されてきたの?
気になる副作用ですが、20年以上前に、クロロキンの動物への投与試験があり、試験対象動物(ラット)において次のような副作用がみられたことが研究論文で明かされています。
あとがき
このように、副作用はすでに20年以上の時間を経て公表されているので、人間に投与するにはより慎重であることが求められます。しかし、コロナウイルスの世界的な流行が、医薬品開発の速度に勝ってしまうと、人類が感染症を克服した、とは言えない状況が待っています。
6月に米国がFDAの公式の許可を打ち消すような混乱が生じたのは、上にまとめたような展開を考えれば、ありえない事態ではなかったと思われます。薬品の開発にかかる時間と、感染症を沈静化したという実績を残すまでに時間がかぎられる政治家の事情が、こういった事態を招いた一因であることは、指摘しても差し障りなさそうです。
2020年という時代の特異性が、COVID-19という社会現象を、ある種後押しするという(本来望まない)展開になっているのかもしれません。