レムデシビルとヒドロキシクロロキン13

前回は抗生物質の係わりで、レボフロキサシンにも触れました。それにともない、mRNA転写というしくみを考え、遺伝子情報の複製がとにかく絡んでくる話だということが見えてきました。今回はまた深堀りしたいテーマが見つかったので、少しずつ、でもしつこく続けます。

ツイート数からみるレムデシビルとヒドロキシクロロキンへの関心

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レムデシビルとヒドロキシクロロキンのツイート数

レムデシビルは日本語では「24時間で40件」英語では「2時間で40件」、ヒドロキシクロロキンは日本語では「24時間で90件」英語では「2時間で270件」という数字で現れており、ややヒドロキシクロロキンの関心が差をつけはじめていると観測します。

集計の結果に多少の揺らぎがあることは自覚していますが、仮に大きな変動があるとすれば、それはレムデシビルもしくはヒドロキシクロロキンに集計困難なほどの関心が寄せられるときだと考えています。

現状では、以下の図に表せる程度の違いなので、この数字に統計的な意味はさほどないとの認識です。

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レムデシビルのツイート数推移
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ヒドロキシクロロキンのツイート数推移

DNAジャイレースと、トポイソメラーゼIV

リファンピシンに触れたとき、RNAポリメラーゼを阻害すると述べました。
もうひとつ、レボフロキサシンに触れたとき、核酸合成を阻害すると述べました。
レボフロキサシンが阻害するのは、DNAジャイレースと、トポイソメラーゼIVです。
では、核酸の合成を行なう酵素であるこの2つの物質を、少し考えてみたいと思います。
DNAジャイレースとトポイソメラーゼはきょうだいのような間柄と言えばわかりやすいかもしれません。
年長、というか広い範囲を指し示す呼称はトポイソメラーゼであり、2本鎖のDNAの切断と、結合をとりおこなう酵素をDNAトポイソメラーゼと呼びます。

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二重らせん - Wikipedia

二重らせんのかたちをしたDNAは、たがいに結び合って成り立っています。この、結び目をいったん切断するとらせんではなく1本のひものような形状になります。
このとき、DNAの遺伝情報を複製することができるようになるわけですが、抗生物質であるレボフロキサシンはこの作業に干渉して、割り込んできて阻害してしまいます。
もちろん、生物にはDNAがあって、それを阻害すれば細胞にまつわる生産ができなくなるので、いわばエラーを起こしてしまう。でも、病原菌のDNAが生産不能ということは、病気の進行が止まるわけで、こうして「くすりで治った」と人間はわかる。
くすりで治る、というのはもちろん色んな形があります。抗生物質で治るのは細菌による感染症であり、このなかでもニューキノロン系のレボフロキサシンは、点眼薬としての利用が多いほか、膀胱炎、吐き気、クラミジアといった症状にも多くの利用実績があるようです。
細胞の増殖を食い止め、病気の進行を防ぐ。その、内訳をじっくり見ていくと、レボフロキサシンが阻害するのは、「核酸合成」だということがわかりました。
遺伝子に関係するDNAやRNAを合成していくうえで不可欠な核酸
ここを阻害する=菌が死滅
こうなるわけですが、
さらにくわしく見ていくと、5つほどに分類できるようです。

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核酸合成阻害の様態

前回に出てきたRNAポリメラーゼは遺伝情報が記載されたRNAを、mRNAに転写するための酵素
DNAも、遺伝情報の記載された、核酸の構成要素です。
では、ヌクレオチドとは何?

かんたんにいえば、ヌクレオチドはとは、DNAやRNAを構成する、単位です。

といってもわかりにくいので、いったん連想ゲームにしましょう。

ヌクレオチドと組み合わせて検索されたワード

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ヌクレオチドと組み合わせて検索されたワード

Yahooにおいては「とは」「構造」「ヌクレオシド」が上位に、Googleにおいては「ATP]「ヌクレオシド」「構造」が上位に入っています。

たとえば・・・。
ATP」は上位に入っていますが、これはAdenosine TriphosPhateで、構造は下の図のとおりです。

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ATP

また、ヌクレオチドはDNAやRNAを構成する単位なので、これを、「食品への利用」で活用する例が近年目立っているようです。

「うま味」をもつヌクレオチド

うま味調味料、スープ原料には「L-グルタミン酸ナトリウム」と組み合わせて、このヌクレオチド(およびポリヌクレオチド)が生かされています。

さて、ヌクレオチドに親しみが沸いてきたところで、DNAとRNAに戻りましょう。

DNAにしても、RNAにしても、核酸合成阻害薬の、ターゲットになる要素です。リボフロキサシン等(ニューキロノン系)でもそうですが、リファンピシンを含む多種の抗生物質でやはり真核生物のもつゲノムDNAに働きかけて、病気を「治す」わけです。

何にしても遺伝子がどうこう、という話につながっているんですね。

ヌクレオチドときょうだいのような存在である、トポイソメラーゼ。こんな姿をしているそうです。

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トポイソメラーゼ

トポイソメラーゼと組み合わせて検索されたワード

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トポイソメラーゼと組み合わせて検索されたワード

Yahooにおいては「阻害薬」「とは」「1」が上位に、Googleにおいては「4」「阻害」「ジャイレース 違い」が上位に入っています。

この、「1」とか「4」というのは、トポイソメラーゼの種類です。少しややこしいかもしれません。

たとえば、大腸菌のトポイソメラーゼ1(topoisomerase I)は、I型のうち、IA型という小分類に属します。
そして、どうやらIA型というのは、マイナスのDNAらせんを扱うそうです。

マイナスというのは、たしか・・・。

インフルエンザウイルスのマイナス一本鎖という話がありました。

・インフルエンザウイルスはふつうのウイルスと異なる
・A型、B型、C型があり、A,Bのみヒトに感染する
・RNAウイルスで、マイナスの一本鎖


インフルエンザの抗ウイルス剤にしても、病原性大腸菌の疾患(食中毒、下痢、敗血症など)の治療に用いられる抗生剤も、このマイナスの一本鎖を標的にするわけですね。

ここで、レムデシビルに話を転じます。

新規ヌクレオチドアナログのプロドラッグで、抗ウイルス薬。

https://ja.wikipedia.org/wiki/レムデシビル
そう、レムデシビルにも、ヌクレオチドが係わっているんですね。
もう一つ言えば、ATPの「アデノシン」は、レムデシビルが体内で変身するかたちです。といってもわかりにくいと思います。レムデシビルの作用機序を図にすると、こういう矢印で表せます。

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レムデシビルの作用機序


ヌクレオチドの構造を見てきたことで、レムデシビルの特徴が少しずつ浮かび上がってくるようです。

あとがき

レムデシビルがウイルス性の疾患(エボラ熱、ニパウイルスなど)に果たしてきた役割が、今回流行している新型コロナウイルスにどの程度、通用していくのか。それは今後の課題になると思います。まだ実際の有効性は十分な事例が集まっているわけではなく、他の治療法と併せて慎重な検証が必要になるかと思います。
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