レムデシビルとヒドロキシクロロキン16
前回はヒドロキシクロロキンの一面である抗マラリア剤としての効き方、そのしくみを掘り下げました。その先に進むのか、引き返すのか悩んだ末、先に進むことにします。
レムデシビルとヒドロキシクロロキンのツイート数
変動があるとすれば、レムデシビルは横ばいですが、ヒドロキシクロロキンは前回の急増の反動も予想されましたが、さほど急減していないことです。みるかぎり、ヒドロキシクロロキンの賛否両論はまだ熱を帯びており、そうかんたんには冷めないと筆者は感じています。
抗マラリア剤としてのクロロキン
前回は抗マラリア剤としてのヒドロキシクロロキンをみた際に、マラリア原虫がもつ酵素でもある、アスパラギン酸プロテアーゼの話が出ました。
ヒドロキシクロロキンはプロテアーゼの不活性化をもたらし、細菌の増殖を抑えることで作用していたわけですが、長い時間を経て、クロロキン耐性を身に着けた、耐性菌が出現したことで、出番が少なくなったという話です。
「クロロキン耐性」の検索上位10件には学術論文のpdfも含まれていて、クロロキン耐性を得たマラリア原虫には固有のトランスポーターがあり、その膜輸送には、定量的に分析できるメカニズムが観測されたという要旨です。
そもそもクロロキンが有効な治療薬として用いられてきたのは、弱塩基であり、酸性である消化胞の内部に入ることはすなわちプロトン化されるということであり、ひいては蓄積してヘモゾインに干渉するという性質のおかげ。
ちょっと待って! 弱塩基? 膜輸送? 何それ
弱塩基と組み合わせて検索されたワード
Yahooにおいては「強塩基 見分け方」「の遊離」「ph」が上位に、Googleにおいては「例」「の遊離」「弱酸 覚え方」が上位に入っています。
「ph」というのは、学校で習った覚えがある、という方も多いと思います。そうです、酸性とアルカリ性のそれです。リトマス紙のそれです。ph値が0-14で、7が中性というような、大雑把な覚え方をしたと思います。
0は強酸性、14は強アルカリ性。だとすれば、弱塩基は7-8あたりのアルカリ性寄りでしょうか。
膜輸送と組み合わせて検索されたワード
Yahooにおいては「とは」「タンパク質」「体」が上位に、Googleにおいては「わかりやすく」「異常」「疾患」が上位に入っています。
生体膜を貫通して、物質の輸送をするタンパク質が、膜輸送体です。そのしくみをさらにくわしく理解するためには、上のむずかしい説明を読み解く必要があります。
わかりやすくいえば、水は高いところから低いところへ移動します。それと同じような高低差が、移動を可能にするという理解でいいと思います。
では、クロロキンは耐性菌を前にして、ただただ縮こまって出番がないまま終わるのでしょうか。
上に紹介した論文の書き手(樹下氏」は定量分析を試みて、その可能性を検証してくれました。この場をお借りして、謝辞を述べさせて戴きます。
抗マラリア薬としての将来を危ぶまれたクロロキンは、ある意味では実験台としての優等生でもあります。
膜輸送のしくみは、濃度差です。高低差です。親油性が低い物質はうまく移動ができない、というWikipediaの説明については、こう換言すればよいでしょうか。
クロロキンは親油性=だから効く
だが、耐性菌はそれを無視する=無視できる強さをもつ
ここまでは理解できます。理解はしたつもりですが、その先がわかりません。クロロキンの親油性は変わらず、その消化胞が変わるということでしょうか。蓄積しようにも、できなくなる。
次に考えることリストに加えるとしたら、マラリア原虫の膜輸送、クロロキンの膜輸送でしょうか。
あとがき
マラリアについて、すでに克服された感染症と感じている人は、どちらかといえば多数派でしょう。しかし、意外なほどにその治療薬の効き目は頼りなく、なぜなのかと考えるに、そもそも「なぜ」「どこに」効くのか解明されていないという仮説がいちばん納得できます。それはおそらく、研究者の方々も同様の感想だと想像します。そのマラリア薬として微妙な立場にいるクロロキン、およびヒドロキシクロロキンが新型コロナウイルスの流行によってかほどに話題を集めているのは、じつに興味深い現象です。もう少し時間がかかるかもしれませんが、このあたりが解明されてくると、マラリアやCOVID-19だけでなく、その先の医療にも大きな成果がみえてくると筆者は感じています。
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