EMCがヴイエムウェアの分社化ではなく完全子会社化をめざす可能性

アクティヴィスト・ヘッジ・ファンドとの合意にもとづき、ストレージおよびITの巨人であるEMCは同社のもつ例外的な企業構造の再編に着手する可能性が高まっている。大株主であるが完全子会社ではないソフトウェア企業ヴイエムウェアの株式買い取りも想定される。
EMCはこれまで、ポール・シンガー率いるヘッジ・ファンド「エリオット・マネジメント」からの圧力に直面している。同社はこれまで、企業の議決権を多数取得し、企業構造の変更や分社化を迫る手法を度々用いてきた。昨年秋には同社株主宛にEMCがヴイエムウェアをスピンアウト(分社化)するべきではないかと公開質問状を送付していた。EMCはヴイエムウェアの約80パーセントを保有しており、分社化は両社の価値を高めることに寄与するとの提案だ。EMCはこの提案を拒否した。
同社はむしろ、ヴイエムウェアの「スピンイン」つまり完全子会社化を望んでおり、CEOジョー・トゥッチはエリオット提案を拒否しただけでなく、EMCとヴイエムウェアが分離するより統合することの効果を説いた。
先月の決算時に行なった電話会見でトゥッチはEMCが2017年末までに年間売上原価の8億5千万ドル削減をめざすと表明した。当面は今年中に5千万ドルの削減、さらに2016年度末をめどに1億75百万ドルの削減を見込むという。
また、先月の電話会見でアナリストから出た質問への返答として、トゥッチはEMCがヴイエムウェアとの共存によって実現できる削減額が10億ドルと想定されると述べている。このことから、EMCの取締役会がスピンインの検討に入っているとの憶測が飛び交っている。
これは幾つかの点で理にかなった選択だ。エリオット・マネジメントの指摘ではヴイエムウェアが成長することで、親会社の事業領域と重複するだけでなく競合することが起こりうるという。トゥッチはこれに対し、鉄壁の守りをほどけば突破を図ってくる競合は数多く潜んでいると反論している。
しかし、これを進めるうえで両社は原価削減の犠牲となる者を生み出すことになる。RBCキャピタル・マーケッツのアナリストであるアミット・ダーリャナーニによると、EMCとヴイエムウェア統合によって削減できる売上原価は来年度で9億5千万ドルにものぼるという。これはすでに計画にある来年の1億75百万ドルと併せると、トゥッチが目標として掲げている10億ドルに十分手が届く。
また、統合によってEMCはヴイエムウェアの収益力を十全に生かすことができ、ひいては四半期決算ごとの会計手続きで目減りする部分を避けることができる。ダーリャナーニによると、EMCにとっては40セントないし50セントの1株利益上乗せが見込まれるという。
ピンインはさらに、大型テクノロジ企業に散見される例外的な事業構造の解消を一歩前進させることにもつながる。2001年よりCEOを務めるトゥッチは築き上げた企業「連合」の大部分を、買収の連続によって達成した。この連合に属するセキュリティ企業RSA、ビッグ・データ企業ピヴォタルにはゼネラル・エレクトリックも出資している。
EMCは2003年にコンピュータ仮想化とよばれる、物理的に1つのコンピュータを複数のコンピュータと同様に稼動させるソフトウェアを手がけるヴイエムウェアを約6億25百万ドルで買収した。2007年にはEMCは同社のIPOをきっかけにヴイエムウェアの株式の15パーセントを売り出した。当時の同社の時価総額は190億ドルだった。なお、シスコ・システムズは5パーセント弱を保有している。
多くの企業がコンピューティング・システムのクラウド移行を進めたことによって、ヴイエムウェアの仮想化テクノロジは、これまで多大な設備を要してきたコンピューティング機器を1つに統合するという重要なツールとして普及した。ヴイエムウェアは仮想化ソフトウェア事業でマイクロソフトとの全面的な競合に置かれているが、それでも市場シェアの50パーセント近くを握っている。ヴイエムウェアは現在370億ドル程度の時価総額で、EMCの510億ドルの時価総額のうち75パーセント近くを占めている。続きを読む
(From the Re/code blog post. Thanks to Arik Hesseldahl.)