Core 2 Duoを24時間走らせつづける実験、終了

fuzzy2さん、naoyaさん、maoeさんに背中を押してもらって勇気が出たところでひとつ予期しないことが。
事件は昨日起こった。というとなんだか物騒に聞こえるだろうか。
自作のコンピュータが転んだ。机から転がり落ちたとか、横に倒れたとかそういうことではないのだけれど、24時間走りつづけて何週間というコンピュータが走るのを止めた。15週間くらい走りつづけていたのではなかろうか。厳密に言えば給水とか、着替えとか、そういった長距離走に必須の中断は何度かあった。だが基本的にいえば3か月半くらい24時間運転を基本としていたコンピュータ。これはひとつの実験のつもりだった。

こんな構成の自作PCを翻訳とブログ書き込みに使っていた。よくがんばってくれたと思う。だが舞台を降りることになった。「ああ、これはもう引退だな」と思ったのがきっかけ。たぶん、マザーボードとシャーシ(筐体)に決定的な理由があると思う。24時間の実験としてはそろそろ耐久の限界だ、という判断を下した。24時間というのは、いくつか理由がある。
「自宅兼事務所でサーバを運用することは可能か?」「可能だとしたら、どのような条件が必須か?」「必須ではないけれど、望ましい条件は何か?」「このカタチでの運用のメリットはどこにあるか?」「メリットを最大化するうえで、それをもっとも強力に後押しするような差別化要素は何か?」
こんなことを考えるために、まずは実験しようということになった。それでわたしが考えたのは、何よりも「データ収集にかける手間よりも、直感にもとづく行動をいざというときにとれるための一次情報収集にかける手間」ということだ。これは厳密に言えば実験の体を成していないかもしれない。ベンチマークだとか消費電力だとか平均故障間隔だとか、そういったことはほぼすべて抜け落ちている。
それではこの実験から以上の問いの答えを導きだすことはできたのか。それを昨日から考えている。言語化することができるかわからないけれど、できるだけ率直に自分の思いを残しておきたい。
Core 2 Duoで大きく変わったことは、どこかで書いたような記憶がある。

  • 発熱が少ない
  • 消費電力が低い
  • ペンティアムとは比較にならないほどの高性能

と10月8日の記事に書いたようだ。そう、これはいまもあまり考えが変わっていない。それで、いま思うのはこれらの条件は「自宅兼事務所でサーバを運用することは可能か?」という問いへのひとつの答え(あるいは答えを出すきっかけ)になっているということだ。
「発熱が少ない」というのは、直感的にわかる。PCを動かしてみればいい。ファンから流れてくる風が熱ければ、発熱が多いということだ。あるいはしばらくPCを動かしてみたあと、電源を切ってCPUのヒートシンクに手を触れてみる。触って何ともなければ発熱が少ないと考えていいと思う。
ペンティアム(Northwood、Prescottあたり)やAMDアスロン(Thunderbirdあたり)を使った経験でいえばだいたいの場合熱くて触れない。CPUは熱いもの、冷やさないと焼き鳥になる。わたし自身の経験を振り返ってみるとNECの薄型デスクトップVL5001D(AMDアスロン)と自作PCマザーボードGIGABYTE GA-7VTXEを熱で壊す寸前までやった。2002年前後はコンデンサの質が悪かった時期と言われていて、その後だいぶ改良されるきっかけになったと記憶しているが。それから、2007年春にウェブサーバを作ってみようと思い立ったとき、わたしはPentium 4 540JなどのCPUを使ってみた。だがこれは動かしてみるとやたらうるさい。発熱が大きいのでファンが常に最高速で回っているのだ。これにはずいぶん苦しんだ記憶がある。なんとかBIOSで制御して静かにしようと思い、型落ちで安くなったASUSのP5N32SLI-Deluxeという高機能マザーボードを中古で掘り出してきたのだが、これが裏目に出た。nForceというチップセットがCPUに負けないくらいにがんばって熱を発していることがわかった。高機能のマザーボードでも熱には勝てないんだな、と教えられた気がする。その後インテルG965のマザーボードとの組み合わせで使ったCore 2 Duoの発熱の低さは驚異的だった。
「消費電力が低い」というのは、どちらかといえば直感的に判断しづらい。これはデータに頼る価値が大きい材料だと思われる。最近ではTDP65Wだとか、目安となる消費電力も店頭で明示されて売られている。ただし、実際の消費電力は使ってみないとわからない。たとえばE6700とE6750は同じTDP65Wだが、E6750は後から出てきた改良型のため、実際の消費電力は低いようだ。これは雑誌「DOS/V PowerReport」参照。ちなみに直感的に判断する方法はないわけでもない。CPUファンの速度だ。これが速く回るとそれ自体が非常に大きな電力を消費する。わたしは2007年7月に改良型Core 2 Duoが発売されたあと、E6700とE6850を使ってみたが、E6850のCPUファンの静かさにまたもや意表をつかれたような気がした。そして2008年1月に発売されたPenrynシリーズ、E8200を昨日買ってきた。これはあとで書く。
ペンティアムとは比較にならないほどの高性能」というのは、わたしの主観が入りすぎているかもしれない。実際にあちこちで言われていることは事実だ(Googleで検索してみれば出てくる)し、インテルもそのような自負を表明している。だがこれはそろそろ冷静な目で判断してもいいかもしれない。実際の継続的なサーバ運用のときに、Core 2の足もとにある土台とペンティアム一連の足もとにある土台は、それほど決定的に違うのだろうか。たとえばPentium D 820(参照)といった旧型とCore 2 Duo E6600といった新型のあいだにある基本的な設計の違いは、ただ単純に「新しい=効率的」「古い=非効率的」と切り捨てることができるのか。そのあたり、もう少し検証し直してみたい気がする。(参照
ここまでをまとめてみると、

  • Core 2はペンティアムよりずっと発熱が低い(静か、夜ゆっくり眠れる)
  • Core 2はペンティアムよりずっと消費電力が低い(限られた電力でたくさん置ける)
  • Core 2は高性能だが、ペンティアムの高性能なCPUもある

こういったことで、Core 2の「自宅兼事務所でサーバを運用することは可能か?」に対する答えは、やはり上の2つに尽きるのではないかと思った。要はこれでよかった。
ただし。
昨日引退したコンピュータは、継続的に運用するうえで2つの問題点があることがわかった。

  1. マザーボード
  2. シャーシ(筐体)

の2つ。両方に共通するのは、ホコリ。とにかくすごいことになっている。まず一目見て、掃除機の出番かと思うほど。だがわたしは掃除機の扱いが苦手。力の加減が難しい。もう少し軽いブラシだとか綿棒だとかティッシュペーパーあたりで時間をかけて掃除をしたいと思った。マザーボードでいちばんホコリが多いのはCPUファン。その次がCPUヒートシンク。それからI/Oパネル周り。隙間にぎっしりと詰まっている。このあたりはティッシュに泡クリーナーをつけて吹き飛ばないように取り除く。シャーシ(筐体)は後ろの空気排出用のファンがいちばんホコリが多い。次は前面の空気吸い込み網。これは吸い込みができなくなるほどのホコリだった。たぶん、これはAntec Soloという特徴的なカタチのシャーシにやはり原因があるのだと思う。吸い込み口が狭い。形状が特殊。おそらくこれを継続的に運用すると、ハードディスクがやられる。ちょうどハードディスクの差し込み位置に合わせて空気吸い込み網がある。これが唯一のハードディスク冷却装置と見られる。そのため、これが機能不全になったとき、クラッシュは時間の問題、というよりすぐそこといったほうがよさそうだ。それから意外だったのはDVDドライヴの差し込み口にもホコリが混入していたこと。これはおそらく、吸い込み網が通気不可能になった時点で代替通気口になったと思われる。そこが通気不可能になっていたら、ほかに考えられる通気口はどこだろう。たぶん、どこにもない。結局、図らずもDVDドライヴばかりを冷やしていたことになる。
マザーボードのことは説明が難しい。P5B-Plus Vista Edition(参照)というマザーボードはハイエンドでもローエンドでもない。アッパーミドル・レンジ(参照)と呼ばれるだろうか。それなりに「耐久性のある」製品だ。Core 2が出たころ自作界隈でよく言われていたことだが、「オーバークロックするならP5B Deluxe、しないならP5BオーバークロックはしないけれどRAIDするならP5B-E Plus(P5B-Plus Vista Edition同等)」というものがある。わたしにとって耐久性を試すうえで最適と判断したマザーボードだ。「耐久性のある」と思われたこのマザーボードには、どうやらあちこちに問題が生じていたようだ。
ひとつにはホコリ。ホコリがちょうど溜まりやすい隙間がある。I/Oパネルのあたりにキーボード、マウス、ディスプレイ、LANケーブルなどをつなぐわけだが、このパネルの形状が複雑なため、ホコリがたまりやすいのだと思った。あえて言ってみれば「新しいものを取り入れすぎ、古いものを残しすぎている」あたりに問題があるのだろう。このあたり、アップルの「古いものを残さない」潔さはひとつの哲学なのかもしれないなと思った。さきほど述べたとおり、空気の吸い込み口がふさがれているので、思わぬ場所から空気を吸い込もうとしているようで、このI/Oパネルの隙間にそういった痕跡がみられた。eSATAの接続口にホコリが吸い込まれているように見えたのは気のせいだろうか。
もうひとつは冷却。ひょっとしたら冷却しきれなかったのではないかと思われる痕跡が見られた。コンデンサは何ともないのだが、ボード表面に何か湿ったものが乾いたような跡がある。これは危険信号だ。P5B-Plus Vista Editionのヒートシンクはあまり大きくない。P5B Deluxeあたりはヒートシンクだけでなく、ヒートパイプも万全に備えている。「PCの使用で発生する熱であれば、いかなる熱にも耐える」といった意思表示がありそうな気がする。24時間運用するにはヒートシンクは大きすぎて困ることはなさそうだ。あるいはE6700のような上位CPUよりはE6300のような下位CPUにするか、はたまたE6550のような改良型Core 2 Duoを使用することも考えていいかもしれない。あとは、グラフィックボードがGeForce 7600GTという比較的上位機種だったことが熱をこもらせる原因のひとつになったようだ。このGV-NX76T256D-RHはファンレス。ボードの下部(PCIスロット周辺)に表面のざらつきが見られたので、これは熱がこもったと断じていいと思う。
マザーボードについては、交換が難しい。ハードディスクはRAID 1か5にしておけば多少の猶予はある。だがマザーボードの取り替えというのは「部分的でない故障」となってしまう。この場合の取り替えコストは非常に大きい。はてなの自作サーバについても、「jkondoの日記」を読ませてもらったら、ファンがいくらうるさくても冷却が大事というようなことが書かれていた。

  • 必要最小限のパーツだけが取り付け可能
  • どれだけうるさくても構わないので、内部が良く冷える
  • できる限り小型化して、できればラックマウントサーバーよりも小さくしたい
  • パーツはなるべく汎用的なものを利用可能で、長く使えるようにしたい

これはマザーボードを守る第一の方策としても有効だ。近藤淳也さんの独自のシャーシを見て、自分もこうやって作れないだろうかと考えたことを思い出す。でもCore 2 Duoなら冷却にかかる費用を劇的に減らすことができるのではないかと思って、市販されていて広く出回っているシャーシのなかで安くて丈夫そうなAntec Soloを選んだ。だがこれは考え直す価値があるかもしれないと昨日から思っている。
そこで昨日、アキバに行ってきた。買ってきたのはこれ。

  • DG31PR (G31/ICH7)
  • Core 2 Duo E8200 (FSB1333MHz/2.66GHz/6MB)

この2つの存在意義は何か。「ホコリのたまりにくいマザーボード」「発熱のもっと低いCore 2」ということになるかな。とくにDG31PRはとことん割り切りのマザーボードといった具合で、なかなか潔くて気持がいい。「余計なものは一切つけませんよ」とでも言いたげなI/Oパネルにほれぼれする。eSATAもシリアル/パラレルもついていない。あとはグラフィックボードを載せる必要のないG31チップセットだから、熱のこもる心配がひとつ減る。だがこれならG965とそれほど変わらない。やはりI/Oパネルの割り切りだろう。
Core 2 Duo E8200は気になっている人も多いかもしれない。わたしは今回のシリーズでこれがいちばん買いたいと思わされた。自分の求めているサーバの能力からすると「クロックを少しでも速く」ではなくて「ボトルネックを作らない」ことが第一の達成目標だ。そうである以上、CPUはキャッシュが多ければ十分。E6600が大ヒットしたのも、E6400と決定的に違う4MBキャッシュが理由だったのではないかと思う。本当の意味で合理的なCPUこそが、インテルの持ち味だと思う。E6700を使ってみたが、継続的に運用するという観点にかぎれば、それほど感心しなかった。
よって、「わたしの考える合理的なマザーボード、CPUのリスト」には、

  • E6600 (FSB1066MHz/2.4GHz/4MB)
  • DG965RYCK (G965/ICH8)
  • E8200 (FSB1333MHz/2.66GHz/6MB)
  • DG31PR (G31/ICH7)

が記録された。あと追加するとしたら、

  • E6550 (FSB1333MHz/2.33GHz/4MB)←キャッシュが決め手
  • GA-G33M-DS2R (G33/ICH9R)←RAIDが決め手
  • F-I90HD (Radeon Xpress 1250/SB600)←メモリ容量と45nmプロセス対応が決め手

だろうか。
こんな具合で新しいサーバの検証作業を少しずつやっていこうと思っている。ちなみに「DG31PRはE8200に対応しているのか?」という問いが非常に気になるところだ。これは「出荷時のBIOSでは起動しない(ようだ)」という結果が出た。BIOSアップデートが1月25日に出ている。この0042を適用すればおそらく対応する、というのはソフマップ秋葉原中古駅前店の店員さんのありがたい助言だ。
追記
fuzzy2さん、naoyaさん、maoeさん、それから見てくださっている方、CentOSのほうが進んでいなくて待たせてすみません、Windows環境が復活次第、とりかかるつもりです。