ボックスがライフロックおよびセールスフォースで事業提携を指揮したイルチェヴを新設のSVPに起用(2)

これは、買収がまたあるというだけではなく、企業への一部出資も見込まれる。ボックスはこれまでに、さほど多くはないが数社への出資を行ってきた。昨年、同社は電子健康記録スタートアップであるダーチロノに少額だが出資をしている。
イルチェヴは先日までライフロックで事業提携および戦略担当エグゼクティヴ・ヴァイス・プレジデントを務めてきた。同社はID成りすまし防止技術企業だ。昨年彼はモバイル・ウォレットのスタートアップ「レモン」への4300万ドルの買収提案を指揮した。この買収契約はその後、期待したほどの成果が得られなかった。5月に同社は、レモンがこれまでに収集したデータは、決済業界の規準であるPCIに適合しなかったことを開示した。同社は400万人分のデータを削除し、さらに同社ライフロック・ウォレット・モバイル・アプリをアップルとグーグルのストアから取り下げた。このニューズはライフロックの株価を一時17パーセントも押し下げたが。その後株価は持ち直している。
ライフロックの前にはイルチェヴはセールスフォースで事業開発担当幹部を4年間近く務めた。このあいだに同社はもっとも注目に値する買収を実施してきた。そのひとつは、クラウド・ソフトウェア開発プラットフォームであるヒロク、ソーシャル・メディア追跡調査企業のラディアン6、クラウドマーケティング・ソフトウェア企業のバディ・メディアエグザクトターゲットが挙げられる。
セールスフォースではイルチェヴは、クラウド・ソフトウェアの巨人であるボックスへの出資を指揮してきた。2011年、セールスフォースはSAPヴェンチャーズとの協同により8100万ドルを同社に出資した。
セールスフォースの前には、彼はコンピューティングの巨人であるヒューレット・パッカードM&A部門に務め、この時期に同社はITサーヴィス企業であるEDSへの140億ドルの買収を完了させた。
ボックスは秋にもIPOを完了させることを予定している。同社は7月7日付で合衆国証券取引委員会への提出文書様式S1を修正申告した。この日、同社はTPG、コアチュー・マネジメントといったプライベートエクィティ投資会社を幹事とした1億5千万ドルの資金調達を実施した。直近の当局提出文書からは同社が4月30日を期末とする四半期が続けて赤字だったことがわかる。同四半期は4530万ドルの売上高に3850万ドルの赤字、これに対し2013年の同期は2340万ドルの売上高に3400万ドルの赤字であった。また同社はキャッシュを月間1970万ドルの勢いで減らしており、これはよその企業であれば警戒水準となる。同社の法人課金顧客は電機大手であるGEをはじめとした3万9千社で、個人顧客は2700万人がいる。M&Aの見地からして興味深いのはボックスの貸借対照表に計上されている7930万ドルのキャッシュである。この報告書が公表されたのはTPGとコアチューからの1億5千万ドルの資金調達ラウンドより前のことである。IPOにより調達するのが2億5千万ドルと仮定した場合、その後数ヵ月以内にボックスは大型買収に打って出ることもありそうだ。これはレヴィーによるボックスのテクノロジ拡張戦略にも合致することであり、同社の柱といえる、ヘルスケア、保険、製造業など垂直統合型業界へのクラウド・ソフトウェア設備提供にも寄与する。彼はこれについて今年行われたリコードとのインタヴューで概説している。(続きを読む)
(From the Re/code blog post. Thanks to Arik Hesseldahl. )