セールスフォースが売り出されるとしたら、どこの会社が買い手となるか

話題の渦中にあるセールスフォース・コムはどうやら財務アドバイザーを雇って買収提案者からのオファーに応対するための体制を整えたようだ。ブルームバーグが水曜日に報じた。これが本当なら、考えられる相手先企業としてはセールスフォースの時価総額である440億ドルを買い取るだけの能力を備えている4社が挙げられる。マイクロソフト、IBM、オラクル、グーグルだ。セールスフォースはコメント要請に応じていない。
マイクロソフト:セールスフォース・コムCEOマーク・ベニオフはマイクロソフトCEOサトヤ・ナデラをはじめ数名のテクノロジ企業幹部と火曜日の夜会食を行なったと複数の人物がリコード誌の取材に対し明かした。なお、その翌日にはソフトウェアの巨人である同社がサン・フランシスコで「ビルド」コンファレンスを開催している。そこで話し合われた内容は皆が知りたいことだが、可能性としては次のようなものが挙げられる。
セールスフォースとマイクロソフトは顧客情報管理(CRM)ソフトウェア市場で直接競合しており、得意先情報、注文内容、その他販売データの集計に利用されてきた。ガートナーの調査では、マイクロソフトによる「ダイナミクス」は市場の7パーセントを占め、それに対しセールスフォースは16パーセントとなっている。この勢力を伸ばすうえで、両社が合流するという動機付けはありうる。だが考えるべきことはもっと多い。
オフィス365をクラウド・ソフトウェア製品群として開設したマイクロソフトは現在、ソフトウェア・アズ・ア・サーヴィス(SaaS)プロダクトをセールスフォースのCRM、マーケティングおよび附帯アプリケーションと統合させるという可能性が十分にある。実際、両社は昨年「戦略提携」と自称する関係を締結した。
そしてマイクロソフトは買収を望むなら十分な資本力がある。3月31日時点で同社は954億ドルの現金および現金同等物、投資その他資産を保有している。独占禁止法にもとづく当局の介入がなければ、セールスフォースを呑み込むには十分だ。
IBM:CEOジニ・ロメッティはこれまでクラウドによってビッグ・ブルー再建をめざしてきた。数十億ドル規模のハードウェア事業およびクラウド・コンピューティング・サーヴィス事業およびソフトウェア事業という多角化を進めている。セールスフォースを買収すればそれらの事業への合流というかたちをとるだろうが、これは両社のアプリケーションにはあまり重複する部分がないためで、もっとも近似する事業との合流という線が強い。
IBMはビジネス向けソフトウェア・アプリケーションを豊富に備え、銀行、小売業など特定業種への最適化に対応したソフトウェア「アズ・ア・サーヴィス」への移行を済ませている。これはセールスフォースの戦略の中核である定期利用ソフトウェア・モデルと似通っている。IBMは長らく旧来型のメインフレーム・コンピュータの売上高減少という悩みを抱え、その埋め合わせに十分な新世代のクラウドおよびソフトウェア事業の成長をめざしてきた。
CRMソフトウェアにおいてセールスフォースはSAP、IBM、マイクロソフトと競合関係にある。IBMと合併した場合、200億ドル規模のCRMソフトウェア市場では20パーセント程度のシェアを握ることができる。
セールスフォースはこの数年にわたって、事業領域の拡張につとめてきた。同社は4年間で約40億ドルを投じてエグザクトターゲット、バディメディア、ビッグ・データ関連リレートIQ、クラウド・ソフトウェア開発企業ヒロクなどを買収してきた。その結果、セールスフォースのベニオフはクラウド・ソフトウェア製品の強力なポートフォリオを築き上げ、IBMにしてみれば社内再編の手段として魅力的に映るだろう。
IBMにとっての試練は財務条件だろう。同社は250億ドルの現金および現金同等物、投資その他資産を保有しているが、350億ドルの長期借入金が重しとなっている。だが同社にはきわめて高い信用格付けがあり、買収に必要となる借入金を集めることができれば、IBMの株式の価値を高めることにもつながる。火曜日にIBMは四半期配当を18パーセント増配の1ドル30セントに引き上げた。
ラクル:一見すれば、オラクルはセールスフォースを買収する候補では最有力だ。その理由はかんたんで、セールスフォースのクラウド・アプリケーションの多くはオラクルのデータベースに保管されているからだ。その一方でオラクルは現在旧来型のビジネス・アプリケーションをクラウド上の運営に移行するための取り組みを続けている。
両社はCRMソフトウェアの領域で直接競合関係にある。オラクルはセールスフォースとドイツのSAPにつぐ3位の市場シェアとなっている。オラクルはこの数年にわたってマーケティングおよび人事管理ソフトウェアの領域で買収を進めてきたが、その幾つかはセールスフォースの買収した企業の領域と重複している。これらの重複が独占禁止法に抵触するおそれが高い。そうでなくても規制当局が目をつけそうな赤信号はもうひとつある。オラクルCTOで創業者のラリー・エリソンはネットスイート社の大株主で、クラウド・ソフトウェア企業である同社は複数の領域でセールスフォースおよびオラクルと競合関係にある。
ラクルの強みがあるとすれば、それは資本力だ。2月28日時点で、同社の貸借対照表には440億ドル近い現金および現金同等物があり、今週同社は100億ドル相当の新規社債発行を実施したばかりだ。
グーグル:検索の巨人である同社がクラウド・ビジネス・アプリケーションへの参入に踏み出すとすれば大きな変化となろう。同社にとってビジネス・ユーザ向け製品といえば「グーグル・フォー・ワーク」で、クラウド・ベースのアプリケーション群である同製品はマイクロソフトのオフィス365と競合している。グーグルには潤沢な資金があり、640億ドルの現金および現金同等物、投資その他資産がある。だが同社はセールスフォースを買収するだけの理由に乏しい。続きを読む
(From the Re/code blog post. Thanks to Arik Hasseldahl.)