二種類の資産が逆方向に動くという事実

株式市場はホレイショ・アルジャー(アメリカの小説家)を好んで読む一方、債券市場はウィリアム・ブレイク(イギリスの詩人)を好んで読む。債券の持つ恐ろしい対称性は、人々が泣き叫ぶ時に上昇し、大笑いする時に下落するという形になる。したがって、楽観論を排するというのは必ずしも悪いことではない。それと引き換えに、投資からはほとんどのリスクを排除することができて、悪い時でも大きなクッションがあることになる。それはすべて金利のおかげである。債券市場におけるテコの支点では、金利と債券価格は常に釣り合っていて、片方が下がれば、もう片方はまったく同じだけ上がる。これは単純に、金利が上がれば、既発債(新発債よりも低い金利を払っている)の価格が下落するからだ。金利が上昇するという形で経済が非常に好調な時には、通常、株は上がって債券は下がる。債券が何とか儲かるのは金利が低下している時、つまり弱気論が広まっている時であり、その際には、株価は毎日下がり続ける。その際にはウォールストリートで唯一笑っていられる人種は債券を持っている男女だけとなる。
2000〜02年に株がメルトダウンを起こしていた時、債券の方は素晴らしい時期を迎えていた。2003年に株式市場が活況を取り戻し始めると同時に、債券は下げに転じた。しかし、この二種類の資産が逆方向に動くという事実は、過去20年間はあいまいになっていた。債券の方は1981年、株式は1982年に始まった未曾有の強気相場が、両方ともずっと続いたからである。このような偶然の一致がわれわれの存命中に再現される可能性はないだろう。近代における最高水準から近代における最低水準にまで、インフレが急落した恩恵を両市場とも被ったのである。そのような画期的な事態がないとすれば、債券が栄えて株が衰退するか、その逆になるかのいずれかのはずだ。(『債券王ビル・グロース 常勝の投資哲学』東洋経済新報社、2004年 176−177)(From the traslated version of "The Bond King" pp.176-177. Thanks to Timothy Middleton.)

債券王ビル・グロース 常勝の投資哲学

債券王ビル・グロース 常勝の投資哲学