いまさらだけれど「英語で読むITトレンド」を読む

今日は朝起きて一通り身の回りを片づけた後、コーヒーを飲みながら梅田望夫さんのブックマークを見に行ったら、おもしろいものを見つけた。

おお、小飼弾さんがさっそく書評をブログに載せている。それにしても弾さんは読むのが速いな、28日発売のものを28日午前0時に書評にするとは速読にもほどがある。と思ったら献本じゃないか、これ。

文藝春秋出版局経由で著者より献本御礼。

そうだよな、前にメール越しに対談なんかもしていたみたいだし、同業者みたいなものだから献本が先に行くってわけだな。
と納得したところで、ぼくの予約した『ウェブ時代 5つの定理』はまだ届かない。アマゾンだと書店みたいに号砲が鳴る前に走っちゃいけないのかな。それとも2冊注文するような欲張りには後回ししてやれ、ということなのかしらん。
近所の書店に走れば手に入ると知っていながら手にとって読めないこのわびしさ。寒風が吹き荒れる。びゅう。
と落ち込んでも仕方ないので、お楽しみの読書時間にありつくまでは「英語で読むITトレンド」を読んでみようか。
そう、この「英語で読むITトレンド」だが、ぼくは読んでいない。一部が手を加えられて『ウェブ進化論』の一部になったということは聞いている。梅田さんが「狂気の連載」と呼んだ、2003年4月から1年半あまりにわたって「毎日たくさん書く」ことを基本としてつづけられたブログだ。
これを全部読んでみたいな、などと思いついて夕方から少しずつ読み進めている。さっそくワクワクするような記事にいくつか出会ったので自分のブログにメモしたくなった。でも自分のところに書くとその間読むのが中断されるなあ。ブログを読むか、ブログを書くか、それが問題だ。
エイヤッ、ブログを書く。

CloudmarkのCEO、Karl Jacobの「Back to the Real Entrepreneur」に、こういう文章がある。

「But for a true entrepreneur, at the end of the day it's not about the money? it's about changing the world.」

真の起業家にとって本当に重要なのは「カネではなくて(not about the money)」、「世界を変える(changing the world)」ことなのだ。

これだけ読むと、脊髄反射してしまいそうになる。だがここで少し踏ん張る。この記事の最初に梅田さんは注意深く前置きをしている。この「カネのために働くのではない」という意味の文章を引いてきた理由がしっかりと提示されているのだから、これは見逃しては損だ。

昨日は、 IT産業において今後シリコンバレーが果たしていく役割について、「反権威的性格とIT最先端を結びつけて、既存産業を破壊する力強いイニシアティブ」であると書いた。今日はそのことをもう少し補足してみたい。なぜならば、このテーマこそが本連載の基調なのだということが、たくさん書くことによって、僕自身にも理解できるようになってきたからだ。

なるほど。「反権威的」というのはだいたいわかるような気がする。ソニーやホンダなどを知っているからだろう。しかし「既存産業を破壊する力強いイニシアティヴ」というのは正直よくわからない。アメリカではそれほど珍しいものではないのだろう。しかし日本で自分が参考にできそうなお手本は思い浮かばない。ソニーやホンダも「破壊する」ように見えて実は上流の人たちが仲良くゴルフやっている姿が見えてしまう。それではたぶん、「世界を変える」とは行かないよな。
正直に言って、企業として「世界を変える」を成し遂げそうなところは思い浮かばない。例外、はてなを除く。
個人ならけっこういると思う。でもそういう人はなぜか日本から出て行ってここに定住しない。
ぼくがやろうとしているのは、たぶん日本に定住しつつ、何ものかを世に問うことだと考える。「世界を変える」は実現可能かどうかを考えるよりも、長い目で遠くを見渡すときに胸ポケットに入れておきたいトランプカードのひとつだ。そしてぼくにとってより大事なのは「カネのために働くのではない」というカードだ。これは毎日胸ポケットに入れておきたい。
では次。

Business 2.0誌に掲載されたゲリー・ハメルの最新論考「Why It's Time to Take a Risk」を読みながら、イノベーション起業家精神について考えてみよう。
ゲリー・ハメルは、「リーディング・ザ・レボリューション」等の著者で、シリコンバレー在住の経営学者兼コンサルタントである。
「in this forbidding business environment」(この近寄りがたいビジネス環境の中で)起業する2人の起業家、Groxisを創業したPittmanと、CometaをスタートさせたBrilliantの話が冒頭に出てくる。

「Pittman thinks this is a far more auspicious time for entrepreneurs than, say, 1999. "Office space is cheap, and talent is available," he points out. "And the signal-to-noise ratio is much better now that all the junk dotcoms are out of the picture."」

2人は厳しいビジネス環境こそが、起業には良い時期だと言う。

この記事は「不況期の方が起業家にとって環境が良い理由」という題で、その理由として挙げられているのがオフィスの家賃が安いことと、優秀な人材を獲得しやすいということ、そして3つめの理由が

リソースの過剰(容易にカネが集まる状態)は、人の脳をぐにゅぐにゅにしてしまう。一方、欠乏は工夫を呼ぶ。

というものだ。たしかに、「資金がない方が人間は工夫をする」というのは言い得ている。これは間違いなくぼくにも当てはまるので、非常に参考になる。
こういったことがゴロゴロと転がっている「英語で読むITトレンド」はいまなお、ぼくにとって有用だということに気づいた。



(参考)ほかにおもしろいと思った記事をいくつか挙げる。

最後のはゲストとして伊藤直也さんが書いている。