合同会社設立210日目、朝

港区は曇天。昨夜は空気がきれいだった。今朝もおだやかでイギリスの朝みたいだ。
土曜日と日曜日のインターネット産業は静かで、あまり速報といったものは出てこない。そういうときはブックマークする記事の数は少ない。グーグル・ニューズでキーワード検索すると、掘り出し物を見つけることもあるけれど、あまり時間対効果はよくない。平日のたくさんの記事のなかから効率的に見つける作業にはグーグル・ニューズはすばらしいのだが、土曜日と日曜日はほかの方法を用意しておいたほうがいいかもしれない。
ところで最近、梅田望夫さんのはてなブックマークがすごい。4月から堰を切ったようにたくさんの英語記事のブックマークを再開されている。それも半端なものではない。どうしたらこれだけの質を保って記事をたくさん見つけられるのだろうか、と感心してしまった。
おそらく、「ひきだしの多さ」が決定的に違うのだろうと思う。梅田さんは人並みはずれて多くの時間を記事の発掘に費やしているというわけではない、おそらく。一日のかぎられた時間帯にブックマークに次々と放り込むという方式を見ていると、記事のつながりが非常に興味深いことに気づく。ブックマークのリストがただ直列に並んでいるだけなのに、そこから四方八方にひろがる世界が浮かび上がってくるような気がするのだ。人のつながり、キーワードのつながり、突然変異的なひらめき。真剣に追いかければ追いかけるほど、そのすごさが遠くに行ってしまうような気がする。
「学習の高速道路」どころではないと思った。高速道路はまっすぐに直線的に進んでいくものだが、あちこちで分岐した道がそれぞれの方向へどんどん伸びていく。たぶん、脳のつくりが相当特殊に鍛えられているのだろうと思う。
わたしは脳のことはよく知らないけれど、じつをいうと梅田さんの脳に似たような脳を自分はもっているような気がする。僭越なことを言うようだが、学者になろうとして途中でドロップアウトする人によくあるような気がするのだ。博覧強記、などとむかしの人は言ったらしい。とにかく次々と知らないことを学んでいき、それが人並みはずれた量になってほとばしり出る。いったんそれがはじまると、しばらくはやまない。短期集中的に、ものすごいアウトプットを出して、まわりの人を驚かせる。だがそれは長期的にみれば、必ずしも多くの人の支持を継続的に得られるとはかぎらない。とくに大学のような組織ではいまのところそういう才能を吸収する装置がいまひとつうまく働いていないようだ。茂木健一郎さんのような特殊な大学とのかかわりかたを持つ人が見られるのも、わたしのその印象を加速させる。『フューチャリスト宣言』を読んでいて、梅田さんも、茂木さんも、同じような脳の鍛えられかたをしているようにわたしに見えた。そしてそれは、わたしに途方もないおおきな勇気を与えてくれた。わたしはそのことに感謝したい。
梅田さんのブックマークをこれからも追いかけていきたい。