本格モバイル・ウェブをつくる

(This is a translated version of "A VC" blog post. Thanks to Fred Wilson.)
わたしはワールド・ワイド・ウェブのそれと同じようにつかえるモバイル・ウェブができることを期待している。ワールド・ワイド・ウェブは創造性の波を引き寄せ、技術的な達成も打ち立て、この20年のあいだ、社会へもいろいろな意味で影響を与えてきた。わたしたちはモバイル・ウェブでも同じことを成し遂げることができるだろう。だがいまはまだそうなっていない。
ワールド・ワイド・ウェブは世界中で相互接続している通信システムのネットワークであり、あらゆるコンピューティング・デヴァイスが接続しあうことができる。これらのデヴァイスはそれぞれオペレーティング・システムを動作させ、あらゆるアプリケーションをインストールすることができる。そして、世界中のどこでも、あらゆるデヴェロッパがウェブ・アップ(あるいはデスクトップ・アップ)を開発し、ワールド・ワイド・ウェブに参加することができる。
これはモバイル・ウェブについては当てはまらない。モバイル・キャリアは互いに接続しあっており、ウェブにも接続できる。だがすべてのデヴァイスがすべてのモバイル・ネットワークで動作するわけではない。また、すべてのモバイル・アップがすべてのモバイル・ウェブに接続されたモバイル・デヴァイスで動作するわけではない。
このことはブログでもずいぶん前から言ってきたことで、わたしたちがほんとうにモバイル・ウェブをオープンにするまでは、ワールド・ワイド・ウェブのようなイノヴェーションを起こすプラットフォームを手に入れることはできないだろうと繰り返して言ってきた。すべての人がそれを手に入れているわけではない。
だからこそ、「グーグル・ヴォイス」とアイフォンの問題はとても大事なのだ。わたしはアイフォンを使っていないし、グーグル・ヴォイスも試してみたが気に入らなかった。だからアップルとAT&Tが、グーグル・ヴォイスをアイフォンで動作させるのを遮断するという決断をしたのは、少なくともわたしにとっては影響がない。だがこの事件からわかるのは、いまのビジネスと技術上の構造が、すべてのモバイル・デヴァイスがすべてのモバイル・ネットワークで動作することを可能にしていないということであり、そしてすべてのモバイル・アップがすべてのモバイル・デヴァイスで動作することを可能にしていないということだ。これはコンシューマにとってもよいことではないし、イノヴェーションにとってもよいことではないし、社会にとってもよいことではない。
わたしの友達であるバイジャンが言うように、政府が市場に介入するよりも、市場の力にまかせるほうが望ましい。だがこの案件については、政府がこの問題にじっと注目しているのは正しいことだと思う。少なくとも、FCCがにらみをきかせることによって、モバイル・キャリアやデヴァイスの製造業者は自分たちがつくるプラットフォームやネットワークがふさわしいものか、前もってもういちど考えるようになるだろう。そして、モバイル・ウェブについてはシンプルで明快な政策があるべきだとわたしは思っている。
わたしはつぎのようなことが求められるだろうと思う。
1) コンシューマが自分の電話番号を保有し、それをどのネットワークでも使えるようにする(わたしたちはこれを手に入れた)
2) コンシューマが自分のモバイル・デヴァイスを保有し、どのネットワークでも使えるようにする
3) 不当な仕掛けのないモバイル・アップスが、それで動作するようにつくられていればどのデヴァイスでも動作するようにする
わたしは報奨金についてはとくに困ったことはない。キャリアの報奨金はモバイル・デヴァイスのコストを下げるうえで役に立っていることをわたしは理解している。アイフォンはAT&Tの報奨金のおかげで低価格にすることができ、非常に大きな利益を得ている。だが報奨金は結局のところ、契約期間内の解約金というかたちによってコンシューマが支払っている。報奨金は有用な金融商品であり、それはおおいにけっこうなことだ。だが報奨金は同時に、独占契約のデヴァイスを許してしまうことにもつながる。市場を活性化させ、すべてのキャリアがすべてのデヴァイスをネットワークでつかえるようにコンシューマに提供することで市場で競争しあうこと、そして一番条件のよく競争力のある報奨金を提供することで競い合うことが大事だ。デヴァイス製造業者とのあいだの独占契約はコンシューマの意向によって市場を活性化させ、価格を下げ、選択肢を増やすることにはならない。
わたしはグーグルがアンドロイドにおいて目指していることを好ましく思うし、アンドロイド・フォンがわたしの信頼しているブラックベリイを置き換えるかといえばまだそうではないが、アンドロイドはきっと大きな成功を手にするだろうと思っている。市場に対して正しいやり方をとっているし、可能なかぎりオープンであろうとしている。わたしはアップルにもそれを見習ってほしいと思う。だがアップルは25年前にもマックでそれを行なわなかったこともあって、かれらは同じ過ちを繰り返すかもしれない。そうでなければいいと思う。