ゴタゴタからわたしたちが学び取れること

(This is a translated version of "A VC" blog post. Thanks to Fred Wilson.)
ゲーリイ・ウルフが「ワイアード」のカヴァー・ストーリイでクレイグズリストの話を書いている。題名は「なぜクレイグズリストはこんなにゴタゴタしているのか」。これはどうも奇妙な記事である。というのは、この記事はクレイグズリストのデザイン、マネジメント、イノヴェーションの欠如などを挙げて強く批判しているからだ。だがこの記事を読んだら、クレイグ・ニューマークとジム・バックマスター、そしてクレイグズリストの精神について感心せずにはいられないはずだ。
わたしのほうで、この記事から事実関係を抜き出した。

このサイトはその競争相手、すなわち「モンスター」「キャリアビルダー」「ヤフー・ホットジョブズ」を大きく上回っているだけではなく、これらのサイトをすべて合わせた以上のトラフィックを稼ぎだしている
合衆国内だけで毎月4700万以上のユニーク・ユーザを獲得している。これはこの国の成人人口の5倍近くである。いま現存するなかでもっとも重要なコミュニティ・サイトであり、それでいながらこれほど発展の可能性ののこされたところはほかにない
有料広告の統計をとっているコンサルティング会社が出した最近の調査では、その売り上げは2009年に1億ドルに達する可能性もあるという。クレイグズリストがもし売りに出されるとしたら、その価格は数十億ドルにものぼるだろう
クレイグズリストはイーベイ、アマゾン・コムのどちらよりも多くのトラフィックを獲得している。イーベイは16,000人以上の従業員がいる。アマゾンは20,000人以上だ。クレイグズリストは30人である
クレイグズリストにいるのはプログラマ、カスタマー・サーヴィス担当、経理スタッフだけだ。事業開発、人事、営業の部門はない。結果として、会議は存在しない

クレイグズリストはほんの数人でこれを実現したのだ。ゲーリイが指摘するように、サーヴィスのインタフェースは、ずいぶん長いこと変更されていない。まったくといってもいいくらい。この会社にはマーケターもいない。ゲーリイからもうひとつ引用すれば、「マーケティング、営業、事業開発を削ることによって、クレイグズリストのプログラマは、その受益者であるユーザとのあいだにある緩衝地帯を取っ払ってしまったのだ」
このような運営をしている会社のことを、こまかく批判していいとは思わない。わたしたちはそこから学ぶことができるだろう。数あるインターネット企業のなかでも、わたしたちの法人が理想と崇めるのはクレイグズリストである。グーグルではない。わたしたちの法人は、30人の従業員で10億ドルもの価値を生み出す会社に融資できれば、夢のようだと思っている。わたしたちはまだそういうことを成し遂げていないし、これからそういうことがあるのかもわからない。だがわたしたちはそれにむけてくりかえし、くりかえし、努力している。
わたしのパートナーであるブラッドがユニオン・スクエア・ヴェンチャーズのブログに最近フリーエコノミクスにかんする議論のことを書いた。かれはしめくくりにこのような意見を述べている。

それよりも興味深い議論はこうだ。ソーシャル・ネットワークにおける適正なエコノミク・モデルは、その参加者による貢献の度合いにかかっていて、より多くの人が利用することでその価値が増すということである。これはひとつの可能性だが、このネットワークスにおけるエコノミク・モデルはヤフーよりむしろクレイグズリストに近いものではないだろうか。最近の調査ではクレイグズリストの売り上げは1億ドル以上と言われている。ヤフーの数十億ドルとは比べ物にならないが、クレイグズリストはいまだに28人の従業員だけでやっている。十分な帯域幅を確保し、サーバのコストを計算に入れても、この会社のコストが500万ドルを超えるとは想像しにくい。クレイグズリストはビリオン・ダラー(数十億ドル)の紙面広告を崩壊させ、1億ドルの高収益ビジネスを打ち立てたのだ。わたしたちは、「ゼロ・ビリオン・ダラー」ビジネスともいうべきデフレーションのもたらす影響について話し合ったほうがいいのかもしれない。ウェブによる急激な効率化が経済のいろいろな方面へと浸透するとともに、ソーシャル・ネットワークスの参加者がドルではなくアテンション(注目)を交換しあうようになってきたので、これから行政機関はその管轄にかかわらず税収減でもやっていけるようになる必要があるのではないか? それは、この大赤字の時代における恐るべき懸念だろう。のこされた道は、従来の行政機関が、少ない資本で多くを提供しているソーシャル・ネットワークスの行政システムの効率から学ぶことしかない。

そしてもちろん、それがまさにクレイグの目指すところである。

「多くの人々は善良で信頼できる相手ですし、たいていはその日を乗り切ることにだけ関心を向けています」とニューマークは言う。もしたいていの人が善良でその求めるものがシンプルであるのなら、忠実に奉仕するために行なうべきことはただ、最小限のインフラストラクチャをつくり、そこに人が集まり、やるべきことを達成できるようにしてあげるだけである。それ以外の機能はほとんどの場合、余分なものであり、場合によっては逆効果にもなる。

クレイグズリストのようなシステムはたしかにスパム、詐欺、虐待を引き起こすこともある。だがそれと同時に、それは市場をつくるためのもっとも効率のよくコスト効果のあるシステムでもある。わたしたちはみな、このシステムから学ぶべきであり、それがどうしてうまく機能しているのか、わたしたちのビジネスや組織や行政機関においてなにを応用することができるか、よく考えるべきだ。それよりほかに選択肢はないと思う。