投資案件の持ち合いは、廃れたのか?

(This is a translated version of "A VC" blog post. Thanks to Fred Wilson.)
バイジャン・サベットが昨日「ご一緒したい投資案件があります」という題ですぐれた投稿を書いていた。そのなかで彼はVCがお互いに投資案件を紹介するときによく使うやり方を説明している。これはわたしがバイジャンと知り合ったきっかけである。彼はわたしたちにタンブラーを紹介してくれた。その後わたしたちはツイッターのとき、ともに取締役会に座ることとなった。バイジャンとスパーク・キャピタルのパートナーたちとのあいだには、共通の投資先が5つあって、たとえば「バグ・ラブズ」はわたしのパートナーであるブラッドが3年半前に初めてバイジャンと彼のパートナーと一緒に仕事をした投資先だ。
いま挙げたようなのが、VCの世界での投資案件の持ち合いがうまく行った例である。だがこのやり方は最近あまり聞かれないやり方となっているように思う。80年代中盤にわたしがヴェンチャー・ビジネスに入ったとき、これはビジネスのやり方としてとりわけ重要な位置を占めていた。VCは連帯して(これはシンディケートと呼ばれる)、投資案件を成立させるのに何かと協力しあっていたものだ。シンディケートでやりたい案件がある場合、パートナーに「いまだと誰のところに話を持ち込むべきだろうか?」と相談したものだ。
いまでもある話だが、それほど多く聞かれないのには理由がいくつかある。これがあまり使われなくなった理由を挙げてみよう。
1) アントレプレナーはいろいろなカードを持っている。たとえば彼らは自分の会社に誰が投資するかをコントロールすることや、どんなVCと一緒に仕事がしたいかを選ぶこともできる。VCにかんする知識は公の場にかなり流れていて、どこそこのVCは評判がいいとか、どこそこはあまりよくないとかを知ることができる。アントレプレナーに向かって、たとえばスパーク・キャピタルのバイジャンとパートナーから資金を受け取るように指図することはできない。できるのは提案することであり、場合によっては彼らが言われたとおりにすることもある。だが最近では決めるのはアントレプレナーのほうで、わたしたちのほうではない。これはよいことだ。
2) VCはこれまでにないほど熱心に、どの話がいちばん魅力的な投資先かを算出しようと努めている。なかでも特にすぐれたVCたちは市場に参加し、それを算出する。彼らは自分のオフィスに座って友達からよい案件の提案の電話がかかってくるのをただ待ったりはしない。これもやはり、よいことだ。
だが、あまりよいとはいえない理由もいくつかみられる。
1) ヴェンチャー・ビジネスに多くのカネが集まりすぎている。VC法人の多くは、大型の投資を実施し大株主としての地位を望む。最近ではシンディケートを組むことが非常に困難となっている。昔は第1ラウンドなら会社の株式の40%を、VC法人2社くらいで分け合って保有していたものだ。最近では第1ラウンドというとたいていは20〜25%の保有を求めるところが多い。これはアントレプレナーにとってはよいことだが、シンディケートにとってはよいことではない。第1ラウンドをVC法人2社くらいで分け合うよりも、VC法人1社が第1ラウンドを全部自分たちで執行したり、エンジェル投資家を入れたりすることが一般的となっている。
2) 優良案件の場合、第1ラウンドから第2ラウンドへ進むときの上積みが多額となることがある。だからもしVCビジネス界の友人に声を掛けても、「実はいい案件があるのだけれど、まだ1年も経ってないのに前回払ったのよりも3倍の金額が必要なんだ」と言うことになる。こういった話では必ずしも喜んで乗りましょうという話にはならない。すると、その実利を取るというよりも、付き合いを重んじるという考え方になりがちである。
わたしたちは、現在のポートフォリオ会社への追加投資を数件検討中である。アントレプレナーとオプションのことで折衝するにあたって、わたしは今回のラウンドは自分たちだけで実施するしかないだろうか(できればシンディケートのパートナーを探したいのだが)という気になることが多い。アントレプレナーとのあいだに、両者とも満足の行く商談が成立すれば、チームにはビジネスの進展に専念してもらえる。その会社がほかのVCのところへ行ってこの事業機会がどれだけ有望かを説得し、競合のところに資金を積ませないよう図る必要もなくなる。そしてわたしたちは、会社のなかで大株主としての地位を保持し、自分たちや投資者の利益を図ることができる。
このように考えているVCは、わたしたちだけではない。この「自分たちでやる」というアプローチは、この10年ほどのVCビジネスにおいては優勢となっているし、産業全体においてこの新しい環境でカネを稼ごうと思ったらVCが思いつき得る方法として、このアプローチはより普及しつつある。
この投稿でなにか間違った印象を感じさせるようなことはしたくない。わたしたちの法人、ユニオン・スクエア・ヴェンチャーズはこれまでも、そしてこれからもほかのヴェンチャー法人とのシンディケートによる案件を執行していく。わたしたちのポートフォリオを眺めてみれば、これまでに発表した29の投資案件のうち22件において、ほかのVCと共同で投資を行なっていることがお分かりいただけるはずだ。それ以外でも、エンジェル投資家と共同で行なっている。わたしたちはほかのVCと一緒に投資することを好んでいるし、可能なかぎりはこれをつづけていきたい。だが前と比べるとその機会は減りつつあるような気がしているし、わたしたちのビジネス、あるいはヴェンチャー・ビジネス全体において根底からの変化が起きないかぎりは、だんだんとその機会が減っていくのではないかと感じている。