EMCの決断を変える者はいない、但しCEOを除く(2)

いずれにせよ、EMCにとってM&Aの見地から効力を発するような事態は起きそうもない。アーガス・リサーチのアナリストであるジョン・ケラハーは本日付で顧客宛に発行した短信のなかでちょうど同じ点を指摘している。「弊社では変更のための変更を歓迎しておりません。われわれの考える均衡のとれたかたちは、EMCは2015年2月以後も今日と実質同じ企業であり続けることです」
トゥッチが「有終の美」を飾るための道筋を探っているとはいえ、EMCが画期的な大型合併を決断すべき論理的な理由があるとしたら、IT市場における急速な状況変動であろう。
EMCに問題があるとすれば、あまりに大きく、多角化していることだ。これは合理化に成功したといえるHPやシスコでさえ無縁とはいえない。HPが件の大型合併を、1300億ドル企業誕生というかたちで実質するには、株式交換による契約しか手段はない。HPはEMCを時価総額通り評価しようとしたが、EMCはそれに「かなりの上積み金」を望んだ。それにシスコが公式に候補辞退したことから、もはや候補はいない。
そうすると、「何もしない」選択が残る。「EMCは現状維持が最良の選択といえます」とケラハーは述べる。ストレージ企業にはピュア・ストレージなど野心的な追い上げがあるものの、EMCは従来のストレージ製品をフラッシュメモリ・ベースの新しいシステムで置き換え、ソフトウェア・ディファイン型ストレージの採用で巻き返しを図っている。
さらに同社の財務は良好で独立を保つのに十分で、株主への還元も可能である。2013年売上高は7パーセント増の232億ドルとなったほか、純利益も8パーセント増となった。また、先日同社は四半期配当を15パーセント増配としたうえ、2014年で30億ドルの自社株買いを実施する計画である。今年に入ってから同社の株価は18パーセント上昇した。ただし、公平を期するなら、これは大半がエリオットが同社第5位の大株主となったことを開示したことによる。
そうみれば、次のCEOが抱えるハンディキャップは小さくない。以前トゥッチが引退の計画を取り下げたことがあったのは参考になるが、ケラハーによると、元CFOのデーヴィッド・ゴールドマンが下馬評の最有力候補だという。彼は今年、インフォメーション・インフラストラクチャのCEOに任命された。このほかに名前が挙がっているのは、パット・ゲルシンガーで、彼はインテル幹部を務めた後にVMウェアのCEOになった。また、彼はこれまでトゥッチの後継者として先頭を走ってきた。ポール・マリッツは、EMCの多角化事業の一角であるビッグ・データ・ソフトウェアのピヴォタルを統括しており、やはり後継者として有力視されている。だがピヴォタルの成長の強さからして、そちらが手一杯とみられる。(続きを読む)
(From the Re/code blog post. Thanks to Arik Hesseldahl. )