IBMはメインフレームZ13をスマートフォン経済向けに初披露目(2)

新型のメインフレームは、とロサミリーア氏は言う。先代から技術的に進歩があった点はメモリが3倍、処理性能の向上、データ同時処理容量の拡大です。IBMは10億ドルを投じて、Z13を開発し、その調査研究により新たに500種の特許を生み出した。たとえば、モバイル・コンピューティングのセキュリティを改善することを目的としたデータ保護技術が挙げられる。
これらのテクノロジの大半は、とロサミリーア氏は言う。ビジネス向けリアルタイム分析向けに設計されています。たとえば、と彼は言う。このメインフレーム・システムはスマートフォンからの注文があると、自動的にデータ流出防止機能を作動させることができます。
もうひとつ例をあげると、と彼は言う。買い物客が店舗に入店したとき、パーソナライズされた優待割引の提供を受けることができます。これはそれぞれの来客がいる場所を特定し、それぞれの好みを示すようなデータを取得することで可能となります。おもに、店舗での購入履歴からそのパターンを検出します。
こういったリアルタイムのアプリケーションは、IBMのワトソン研究所の著名なエンジニアであるダナ・ディレンバーガーによると、メインフレームの環境でこそ可能となる。クラスター化された商用では標準的な汎用コンピュータではまだ可能となっていません、と彼女は語る。だがたとえばオープンソースのソフトウェア・プロジェクト「アパッチ・スパーク」などでは、大量のコンピュータを連動させることでリアルタイムのデータ処理が可能となっている。
モバイル・コンピューティングは、あらゆる業種のビジネスにおいてデータ容量や取引処理の難題を生み出している。スマートフォンタブレットからの購入は昨年、合衆国内で1140億ドルと推定され、2018年にまでに倍増以上の2930億ドルに達する見込みだ。これはフォレスター研究所の試算である。
この手の成長の痛みはアメリカだけでなくどの地域でもそうで、モバイル機器の人気や性能がますます向上していることが原因となっている。だがタップやスワイプといったシンプルな操作でできるモバイル・コンピュータは、ユーザの目には決して入らないものの、きわめて複雑なタスクを生み出すこともある。たとえば、オンライン購入でもそうである。ある買い物客が何か操作をすると、それはときとして、コンピュータ処理が100種にものぼることがある。これは情報を安全に送信するために、クレジットカードの悪用防止や認証のために必要とされる。
アナリストのハワード・ルービンによると、これは「スターバースト効果」とよばれるもので、モバイル・コンピューティングの進歩は「バックエンド取引処理の急増を招くのです」と彼は言う。Z13の開発にあたりIBMは民間企業と行政機関をあわせて60団体との共同作業により、メインフレームを長らく利用している顧客の意見を聞いた。IBMはそのほかに、レーディックス・インターナショナル首席経営執行役員ロナルド・J・ペーリからシステム移行の依頼を獲得した。レーディックスはフロリダ州オーランドーを本拠とし、航空業界40社のコンピュータ予約システムを運営している。これらの大半は合衆国外の中小規模の各社である。1980年代後半、保険会社に勤務していたペーリ氏はいち早くメインフレームからパーソナル・コンピュータへの移行を提唱した。その当時のウォール・ストリート・ジャーナル紙の記事では、ペーリ氏はメインフレーム・コンピューティングという金食い虫の独裁に対する「反乱軍の隊長」として紹介されていた。
だがペーリ氏は現在、レーディックス者のデータ・センターを商用標準の汎用サーバから新型IBMメインフレームへと、バックエンド・コンピューティングの移行を進めている。このメインフレームを試験運用した後、彼はその性能、セキュリティ、さらにはコストにまで感心することとなった。彼はトータル・コスト・オヴ・オーナーシップ(維持管理総費用)を試算した。ハードウェア、ソフトウェア、そして人件費。これらは「サーバ農場を抱える」ことよりも50パーセントも安かった。ハードウェアやソフトウェアを複数の業者から入手しそれを管理するという複雑さを鑑みれば「メインフレームがこんなによいものかと見直したのです」とペーリ氏は言う。続きを読む
(From the NYTimes.com blog post. Thanks to Steve Lohr.)