モジラはファイアフォックスの攻勢転換をかけプレジデントのリ・ゴンとモバイル担当ヴァイス・プレジデントのリック・ファントを交代させる

モジラはファイアフォックス・ブラウザとともにブラウザ市場においてグーグル・クロム、マイクロソフト・インターネット・エクスプローラ、アップル・サファリとのシェア争いで苦戦を続けている。そして同社はこのたび、プレジデントとモバイル担当ヴァイス・プレジデントを交代させることでリストラクチャを準備中である。また、マーケティング部門、プロダクト部門でも5月に組織再編が行なわれる見通しだ。この背景には、iOS版ファイアフォックスをついにリリースするという事情がある。
テッククランチが入手した情報によると、モジラのプレジデントであるリ・ゴンと、モバイル担当ヴァイス・プレジデントのリック・ファントは退社することになった。「リ・ゴンとリック・ファントは退任し、モジラを退社してそれぞれの機会を追求することになりました」とモジラCEOクリス・ビアードは述べた。「われわれは彼らの多大な貢献に感謝するとともに、今後の活躍を祈念いたします。今回の人事により、ファイアフォックスOS担当ヴァイス・プレジデントを任命し今後のファイアフォックスOSの発展を強化します。詳細については近日中にお知らせできる見込みです」
ゴンは2007年にモジラに加入、前職はべセミア・ヴェンチャー・パトナーズ中国オフィス統括者だった。その前には長らくサン・マイクロシステムズに務めた。一方ファントはモジラに加入して2年で、前職はヨーロッパの携帯電話キャリアであるボーダフォンのほか、ヴォランティスマイクロソフトと歴任している。
昨年CEOの交代において、就任後まもなく辞任に追い込まれたCEOがカリフォルニア州同性婚禁止法案に献金していたことが論議を呼んだ同社は、その後ゴンとファントの両名とも比較的地味な活動を続けてきたが、これらは本来重要な役職である。
弊誌で両名の退社の知らせを入手したのは、ビアードが大幅なリストラクチャを検討しているとの示唆を聞いたのがきっかけだ。モジラはそれについてコメント要請に応じなかった。
それとは別件で、弊誌はモジラが今年第2四半期(おそらく5月)にも開始を計画しているマーケティング戦略が準備中であることを示すプレゼンテーション文書を入手していた。これはファイアフォックスにより多くのユーザを呼び込むのが目的である。弊誌の取材に対し、モジラはこの文書が偽物でないことを公式に認めた。
このキャンペーンでは、マーケティング費用の追加によって、競合するクロムやIEなどと違ってファイアフォックスは「独立」を保っている中立的なブラウザであることをユーザに広く知らせることを狙っており、最近検索パートナーになったヤフーとの協働も並行して実施される。また、同社は新プロダクトの発表を通じてプラットフォーム利用の促進を狙う。
具体的にいえば、モジラはiOS版ファイアフォックスをついにリリースするほか、クロムをはじめとするブラウザと違ってプライバシー問題の懸念が低い中立的なブラウザであることをユーザに呼びかける。
同社は長らく、グーグルのブラウザやIEとの競合で後れをとってきた。前述のプレゼンテーションのなかで、モジラはファイアフォックスが2014年に「警戒水準まで落ち込んだ」ことを指摘している。その後はやや持ち直しの傾向がつづいているようだ。そのあいだに行なわれたマーケティング・キャンペーンが少額ながらも奏功したようで、現在は合衆国内のデスクトップ版市場シェア18%を確保している。これに対しクロムは41%、IEは28%だった。世界総合ではクロムから大きく引き離されたもののIEと対等で、クロムが53%、IEが19%、ファイアフォックスが18%だった。
モジラはこれまで、モバイル戦略の迅速化を掲げてきた。3月にはローエンドのファイアフォックスOSベースの携帯電話を発表し、近日中に合衆国にも上陸するが、主にアフリカなど新興国市場での携帯電話普及を狙った商品である。
このたび10周年を迎える同社は市場シェアの奪回とユーザ層の拡張を狙う。現在ユーザ数は3億人程度となっている。続きを読む
(From the TechCrunch blog post. Thanks to Ingrid Lunden.)