アップル・ペイが小規模商店主に受け入れられる可能性

おととい、わたしは近所にある小さな店に立ち寄って新聞を買った。そこでわたしはカウンターに新しいクレジット・カード・リーダーが置かれているのを見つけた。それは旧式のものと似ていたが、「アップル・ペイ」のシンボルがしっかりついていた。
李さん(店主の名前)にこのポイント・オヴ・セール(POS)システムを導入すると、かなりお金がかかるのではないかと訊ねてみた。彼はお金はかからなかったと答えた。クレジット・カード発行業者が無料で新しい機械をくれたのだという。これはおもしろい、とわたしは思った。というのも、アップル・ペイをその辺の商店が導入したくても、新しい設備を買い入れる資金、従業員の訓練、会計ごとに発生する手数料のせいでためらうのではないか、と思っていたからだ。(参照:「アップル・ペイ:合衆国内の商店が果たしてその気になるかという疑問」

考えるに、最後のはやはり正しかったが、最初の2つはどうやら李さんのような商店がアップル・ペイを導入する障壁にはならないようだ。
わたしはヴェリフォンの社員と何度か取材で会って話を聞いた。ヴェリフォンはNFC対応決済ターミナルをPOSとして利用するシステムを制作する大手企業だ。同社は大規模小売店向けにターミナルを製造販売する一方、決済業者、アクワイアラー、リセラーを含む数百社の代理店企業を通じて小規模商店主へ供給している。なお、これらの代理店は独立販売組織あるいはISOと呼ばれている。
ヴェリフォンの北アメリカフィナンシャル・グループ担当ヴァイス・プレジデント兼ジェネラル・マネージャを務めるシャーン・エースリッジによると、ISO各社はカード処理サーヴィスを自前で制作しヴェリフォンのターミナルと一体で販売することが多く、そのためISOは加盟店に付加価値を乗せたサーヴィスを提供している。たとえば、POSにカスタマー・ロイヤルティ・プログラムの機能を追加するなどが挙げられる。
だが、近日めだって見受けられる動きは、加盟店の希望でNFC対応決済機器にアップル・ペイなど新世代の決済手段を導入したいとの流れだとエースリッジは言う。「なんといっても、アップル・ペイを使えますといえば『クールなファクター』であり、ISOは小規模商店主にも積極的に売り込み、他店に勝ちましょうと持ちかけられるわけです」とエースリッジはヴェンチャービートの取材に対し語った。
「リセラー業者にとって最も大きな実入りとなるのは代替え需要ですから、加盟店にターミナルを預けて、決済処理や付加価値サーヴィスによって収益化を図るというのは一般的ではありません」とエースリッジはつけ加えた。
それに、EMVという要素もある。10月1日から、POSシステムにおいて新型EMVチップ入りクレジット・カードに対応していない場合その責任は加盟店の責任となった(EMVは「ユーロペイマスターカード、ヴィザの略)。新型のリーダーはこれまで馴れていたカード・スワイプからカード挿入へと変更された。そのため、新しい機械が必要となる。また、加盟店の多くはカード・リーダーをEMV対応にあわせてアップル・ペイをはじめとする非接触決済にも対応させたいと要望する。
新しい機械の導入によって、加盟店は会計ごとに2パーセントか3パーセントの手数料を支払う必要がある(おそらく、いまでも「カードでの最低購入金額は5ドル」と要求する店舗はみられるだろう)。だが、彼らはPOSターミナルを一掃してしまおうという気にもならない。
結局のところ、加盟店は来店した客が望んでいる決済手段に対応していないというせいで買う気をなくさせるのを望まないものだ。エースリッジによれば、アップル・ペイが醸し出すクールなファクターは時間が経つにしたがって、コンシューマの実用的な購買行動に変化を起す可能性があるという。新聞やベーグルをアップル・ペイやアンドロイド・ペイ、あるいはサムスン・ペイでもいいが、それらの手段で買うことができるようになれば、それは「目新しい」からではなく「便利だから」求められるのだろう。続きを読む
(From the VentureBeat blog post. Thanks to Mark Sullivan.)