ヴェライゾンがAOLを44億ドルで買収

合衆国の通信大手ヴェライゾンはデジタル・メディア企業AOLを44億ドルで買収したと発表した。
ヴェライゾンはこれまでにも、AOLを買収する準備を進めていると憶測が飛び交っていた。現在判明しているかぎり、AOLの事業全体を買い取る契約が水面下で協議されてきたようだ。
ヴェライゾンはブロードバンドや電話のサーヴィスでよく知られているが、ニューヨークを本拠とする同社は、コンテントに重点化するメディア企業として動画や広告を商品に加えようと精力的な取り組みを続けてきた。
AOLはインターネットではもっとも旧世代に属する名前のひとつで、ウェブ草創期ではイーメールやインスタント・メッセージの代名詞ともみられていた。同社はまた、1990年代にはじめてインターネットをつかう人が接続に利用した企業でもあった。現在も2百万人が回線契約をしている。だが、もちろん、ヴェライゾンが食指を伸ばした理由はAOLが抱える古びたダイヤルアップにはない。
2001年にタイム・ワーナーと合併したがAOLは2009年に再び単独企業となり、その後まもなくデジタル・メディアへの注力という新たな方針を掲げて出直した。また、数多くの買収が同社の新事業として組み入れられた。
AOLのメディア企業としての成長は、ハフィントン・ポスト、テッククランチ、エンガジェットといったブランドに加え、オリジナル・ビデオ・コンテントやプログラマティック広告テクノロジといった同社の強みをもって双翼としてきた。とりわけ後者はヴェライゾンにとって魅力的に映ったものとみられる。ヴェライゾンにとって、広告の購入および販売過程を自動化して保有できるというメリットがあり、同社の強みであるモバイルおよびブロードバンド商品に活用される可能性が高い。
AOL広告部門は、サードパーティによるAOLデジタル広告ツールへのアクセスを可能にしており、同社傘下にある「アドヴァタイジング・コム」広告ネットワークは広告主が自社にとって重要なオーディエンスをターゲティングするための仕組みで、これらによって同社の収益が支えられていた。
「ヴェライゾンの長期展望は顧客の皆様に、弊社による世界規模のマルチスクリーン・ネットワーク基盤を生かしたプレミアム・デジタル・エクスペリエンスを満喫していただくことにあります」とヴェライゾン会長兼CEOのローウェル・マカダムはプレス・リリースで述べている。「今回の買収は弊社のお客様にクロス・スクリーン接続を提供するうえでの戦略に生かされます。一般のお客様をはじめ、コンテンツの制作者、広告主に至る方々が利用できる、プレミアムなエクスペリエンスをお届けしていけるものと存じます」
44億ドルのキャッシュによる契約は、1株あたり50ドル程度の評価に換算され、AOLの株価は本日の発表直後から17パーセント急伸している。
「ヴェライゾンとAOLが手をつなぐことによって、モバイルおよびOTTメディア・プラットフォームを制作者、一般のお客様、広告主の方々に、両社にしかできないスケールで提供できるようになります」とAOL会長兼CEOティム・アームストロングは述べている。彼は今後もAOL事業の統括を継続する予定だ。「ヴェライゾンとAOLの掲げる長期展望は共有されることになります。両社はこれまでにもパートナーシップを成功させており、今後ともその関係を強め、ヴェライゾンがモバイルとビデオを通じ次世代のメディアを担う存在になることをAOLは喜んで協力いたします」
本日の発表が流れたことで、長らく憶測の対象となっていたヤフーとAOLの合併という線は途絶えることになる。アームストロングは昨年この憶測をすげなく否定してきた。続きを読む
(From the VentureBeat blog post. Thanks to Paul Sawers.)