アップルがGPSスタートアップのコーヘレント・ナヴィゲーションを買収

シリコン・ヴァレイ最大のテクノロジ企業数社にとって、位置情報ソフトウェアは数多くのアプリケーションやプロダクトの諸機能を支える土台となってきた。
アップルにとって、この分野はいかにして遅れを取り戻すことができるかのゲームとなっていた。その意味では、アップルは日曜日にベイエリアを本拠とする世界地図情報企業「コーヘレント・ナヴィゲーション」を買収したことを公表した。アップルの位置情報テクノロジおよびサーヴィスを強化するのが狙いだ。
「アップルは時節に応じて小規模企業の買収を進めており、弊社ではその個別の意図や計画について公表しておりません」と同社は取材に対してイーメールによって回答した。
2008年に設立されたコーヘレント・ナヴィゲーションは商業用ナヴィゲーション・サーヴィス制作を強みとする小企業で、とくにボーイングやイリディウム(衛星ネットワーク運営)など他社との提携に主力を置いている。これについては同社元首席経営執行役員ポール・レゴのリンクトイン内個人ページに記載がある。
創業以来同社のテクノロジは重要性を増してきた。コーヘレント・ナヴィゲーションは高精細ナヴィゲーション・システム上で稼動し、一般向けの世界地図システムとは一線を画すテクノロジとなっている。なお、その精度は3メートルないし5メートルの誤差とされてきた。これまでコーヘレント・ナヴィゲーションは無人ナヴィゲーションおよびロボット・プロジェクトのほか、防衛省のプロジェクトに取り組んできた。
アップルが同社のサーヴィスやテクノロジをどのように活用するかは明確に見えてこない。また、同社がこれらの業務をアップルの現行プロダクトに移行するか否かも不明だ。
アップルによるコーヘレント・ナヴィゲーション買収の成約金額は公表されていない。
今回の買収の知らせはテクノロジ・サイトの「マックルーマーズ」が最初に報じた。アップルにとっては6年間で2件目の位置情報テクノロジ・サーヴィス関連の買収となる。2009年に同社はプレースベースという地図サーヴィスを買収しており、自前の地図テクノロジ構築への意図がうかがわれる取引だった。その後数年が経過し、アップルは同様な企業を数社買収してきた。たとえばロケーショナリー、ホップストップが挙げられる。
これらの買収はすべてグーグルが提供するナヴィゲーション・サーヴィスである「グーグル・マップス」への依存から脱却することを狙った動きといえる。2012年にアップルは自前のテクノロジによって地図サーヴィスを開設したが、このとき併せて採用されたのがオランダのデジタル地図企業「トムトム」によるライセンス提供だった。こうしてアップルの旧世代地図アプリケーションは役目を終え、グーグル・マップへの依存を打ち切った。
位置情報サーヴィスでの競争は苛烈さを極めており、シリコン・ヴァレイ最大のテクノロジ企業数社がこれらのテクノロジへの関与を強めている。
2月にはライド・ヘイリング企業であるユーバがピッツバーグ無人運転車両の研究調査機関を設立したと発表した。同社は国立ロボット工学センターとの協働を計画しており、さらにカーネギー・メロン大学との協働によってロボット工学研究調査費のため奨学金基金を設立する見通しである。
直近では、ドイツの自動車メーカー各社がユーバに対抗して、フィンランドのテクノロジ企業であるノキア傘下のデジタル地図部門「ノキア・ヒア」の買収提案に乗り出していた。仮にユーバが成約に至れば、グーグルの地図情報サーヴィスへの依存から脱却する足がかりにもなるとみられる。グーグル・マップスはユーバのナヴィゲーション・テクノロジの大半を支えてきた。続きを読む
(From the NYTimes.com blog post. Thanks to Mike Isaac.)