AOLのマップクエストはマップボックスとの事業提携でユーザ・インタフェース全面刷新を計画中

AOLはヴェライゾンから44億ドルの買収提案を受け、その執行の過程にあるが、コンテント運営(テッククランチもその部門に所属)もヴェライゾンに明け渡すという計画はないと表明した。だが、それを自身で決定する権限は同社はもたない。
弊誌の取材によって明らかになったのは、同社の地図事業「マップクエスト」は今年中にも全面刷新の計画があることだ。そして、具体的には地図プラットフォーム・スタートアップであるマップボックスとの事業提携によって、マップクエストの地図を描画するテクノロジの供与を受けるという。
AOLがマップクエストの国際地図機能を打ち切り、マップボックスへと移行するのではないかというツイートが散見されたため、事実関係を確認した。だが、ちょうど本日ワシントン・ポストがマップクエストの機能について記事を掲載、近日中にプロダクト刷新の可能性があると報じた。弊誌の取材で判明したところでは、プロダクトの刷新は秋に完了する見通しだという。
マップクエストが刷新されてどのような見た目になるのか、まだ詳細は明らかになっていないが、いまのところ判っているのは次のとおりだ。マップボックスの提供による新しいサーヴィスでは、描画機能に留まる見通し。マップクエストはこの過程において、人員の削減を行なっている最中である。(また、幹部の退社もすでに表面化しており、同社CTOを務めてきたタイ・ベルトラーモは今月で退社している。これは一身上の都合による退社で、事業再編にともなう決定とは異なるようだ)
これらの地図サーヴィスの土台となるデータは今後も、マップクエストの現行版を提供するトムトムやオープンストリートマップ(両社ともアップルのマップスでも利用されている)に依存する。
マップクエストは今後も開発者チームを慰留し、これらの地図サーヴィスの技術者として、たとえばユーザが車両が故障したときに呼び出せるロードサーヴィスを探し出す機能などに取り組む。
ワシントン・ポストの記事ではマップクエストが現在黒字だと述べられているが、AOLの広告テクノロジを大幅に導入して収益拡大を図っている可能性も十分あると弊誌は見ている。
事情に詳しい人物から聞いた話によると、マップクエストはその収益の大半をB2Bから得ているようで、エンタープライズ向けサーヴィスには「2千社ほど」の顧客がいるという。
マップクエストがオンライン・マップにおいてマーケット・リーダーと認められていたのはさほど前のことではない。グーグル・マップスがその地位にとって代わったのは2009年のことだ。コムスコアの調査では同年にグーグルが月間ユーザ数4220万人と、マップクエストの4150万人を上回っている。グーグルは検索エンジンの強みを生かし、他社を追い越す勢いで自社製の地図サーヴィスにトラフィックを呼び込んだためである。
その後数年間にわたって、スマートフォンタブレットの普及が急速に伸びた一方、移動用でないコンピュータからの移行が進んだことで、位置情報サーヴィスの利用は大幅な増加となり、コンシューマの需要を満たすうえで地図テクノロジの品質向上が強く求められるようになった。こうしてグーグル・マップスのアプリが大きく躍進し、スマートフォンで場所を知りたいときにもっとも多くの人が使う道具となった。
また、コネクテッド・カーやクラウド・ベースのサーヴィス、データ収集ハードウェアの発展によって地図サーヴィスはこれまで考えられなかったようなかたちの利便性を備え、新たな需要も生み出しつつある。
こういった背景が、昨今のノキア傘下の「ノキア・ヒア」地図部門をめぐる買収提案を大きな関心事へと変えたといえる。
マップクエストにはこういったブームから収益を得る機会を逸した面があるかもしれない。ワシントン・ポストによればマップクエストは現在、4千万人の月間ユニーク・ユーザ数がある(これはデスクトップ版の数字)が、2009年当時より減少している。だが、弊誌の取材した人物から聞いた話では、地図の総表示回数は数十億回に達しているそうだ。続きを読む
(From the TechCrunch blog post. Thanks to Ingrid Lunden and Natasha Lomas.)