グーグルのクラウド事業にとっての秘密兵器

グーグルはクラウド・コンピューティングの顧客に対し、アマゾンやマイクロソフトとの対抗を狙った新兵器を持ち出してきた。グーグルである。
グーグルは同社のクラウド事業の顧客企業についてこれまでになくオープンに語るようになった。そしてコンピューティング・リソースについてその全容を明かし始めた。同社のリソースは地球最大とも言われている。超高速ファイバー・ネットワークをはじめ、ビッグ・データ・リソース、自社製作によるコンピュータおよびソフトウェアがそれを構成する。
目的はグーグルを世界で最大かつ最強の圧倒的速度コンピュータ性能をもつ企業であることを社外に示すことである。グーグル・クラウド・プラットフォームの名で展開する、検索会社によるクラウド・コンピューティング事業による戦略を今後どう展開するか自ら道筋を示す。ヨーロッパから合衆国の遠距離であっても情報を100ミリ秒以内に移動させる性能、ユーザのデータを9箇所以上の設備でバックアップ保管するための技術が、グーグルをつねに最先端かつ普通の人の想像を大きく超える存在とさせている。
だが、アマゾン・ウェブ・サーヴィシズが2013年に同社グローバル・コンピューティング・ネットワークによって圧巻の性能を誇ることが公表されて以来、グーグルはその手法にならってきたともいえる。
火曜日に開催されたグーグル・クラウド・プラットフォームによるイヴェントでグーグルは台湾の携帯電話メーカーであるHTCを顧客事例として紹介した。グーグルは事業者向けに販売するコンピューティング、ストレージ、およびネットワーク設備を同プラットフォームとして運営している。HTCはグーグルを新方式のコンピューティング・アーキテクチャ開発のために活用し、スマートフォン・アプリ利用者向けにデータのアップデートを迅速かつ安定して行なえる基盤を維持している。携帯電話の評価があまり高まらない時でさえ、その高効率性は揺るがない。
水曜日にグーグルの上級幹部はグーグルのネットワーク設計がこれまで前例のないほど高度に達しつつあることを発表する予定だ。内情に詳しい顧客企業から入手した情報によると、たとえば膨大なスケールにおいて世界中のコンピューティング機器を管理するためのツールが紹介されるという。
「弊社はこのネットワークを利用して200万から300万台のスマートフォンを管理することになります」とHTCのエンジニアリング担当シニア・ディレクターであるジョン・ソンは語る。「グーグルはクラウド業界において唯一、世界各地で高速光ファイバー網を自前で保有する企業で、ユーザのデータを9箇所の設備で常時保管しています」そしてこういった制御があるおかげで、と彼は言う。ユーザは技術上は困難とされることでも容易にできるのです。
ソン氏はHTCがアマゾン・ウェブ・サーヴィシズやマイクロソフト・アズールといったクラウド製品のほか、IBMやアリババも検討してきたと語る。グーグルはむしろダークホースだった。同社は中国では事業展開を行なっておらず、HTCは世界中での展開を必要としていた。だが、グーグルによる技術への執念が決め手となったという。「他社のセールスマンがやはり売り込みに来ていたのですが」と彼は言う。
一般の顧客を大量に集めるときには、技術への執念は必ずしも勝利への近道とはならない。だがクラウド事業では、それぞれの企業が本業の性質に大きく左右される。アマゾンの本業は小売業で、コンピューティングを大量かつ安定してデータ分析に生かせることが重要だ。マイクロソフトの本業は数十年来ビジネス向けソフトウェアで、既存のシステムとの相互運用がとりわけ重要である。また、IBMは非常に高度なデータ解析を運用してきた。
「それぞれのクラウド事業が顧客企業のデータを保管し処理する必要があるわけです」と語るのはクリアストーリー・データ社の共同創業者で首席経営執行役員であるシャーミラ・マリガンである。同社は事業者向けデータ解析を手がける。マリガン氏はクラウド事業を運営する企業はどこも同社の顧客企業とのつながりが深く、ビッグ・データ・サーヴィスを提供する需要が断続していると指摘する。
「データ解析は顧客の定着を下支えしています。いったん企業データをどこかに預けて、それを解析し始めたら、そうたやすくはよそに移らないものです」と彼女は言う。「絶え間なく新しいデータを注ぎ込んでいくわけですから、移るといってもどうすればいいのでしょう? データを預けているなら、それは会社を預けているも同様です」続きを読む
(From the NYTimes.com blog post. Thanks to Quentin Hardy.)