マイクロソフトがインドに大きく賭ける

先進国の多くではスマートフォン市場はサムスン電子とアップルによる寡占となっているが、新興国経済では必ずしもそうではない。
途上国の値段に敏感なコンシューマはこれらの市場リーダーにはあまり関心をもたず、当地特有のたとえばインドではマイクロマックス・インフォマティックス、中国でのシャオミーといった企業が国内の市場シェアを握っている。
マイクロソフトはこれらの国々への注力を強めており、コンシューマがこれまで数ドル分でも節約しようとしてきた流れが世界中のスマートフォン戦争の主導権を握る展開を狙っている。
たとえば、カルカッタノキア・ルミアを購入した女性シャヨーニ・チャクラボルティは、63ドル分の値引きでアンドロイド携帯の新製品を売り込まれたという。彼女はそこで、ルミアについて少し調べものをした結果、値段と新製品という理由で購入を決めた。
「みんながアンドロイドを選んでいました。わたしはそこで『ひとつ試してみるか』と考えたのです」と31歳の保険コンサルタントを務める、インド東部の都市カルカッタ居住の女性は語った。
いまなお、彼女は決断を悔やんでいない。「機能という点ではとてもいい携帯ですよ」とチャクラボルティ氏は語り、買い替えの計画はないと付け加えた。
マイクロソフトは2014年4月にノキア・コーポレーション傘下の携帯電話事業を70億ドルで買収完了した。インドにおける彼女のような顧客を感心させるため、また新興国市場での勝利によって合衆国、ヨーロッパ、日本の各地で失った勢いを取り戻そうと取り組んでいる。
新興国市場はいまのところ、マイクロソフトの唯一巻き返しの可能性がある地域です」と語るのはニール・シャアだ。彼は香港を本拠とするテクノロジ・コンサルティング会社「カウンターポイント・リサーチ」のアナリストである。
マイクロソフトによるノキア買収は出遅れ同士の結婚といえる。マイクロソフトのウィンドウズ・フォン・ソフトウェアは2013年世界市場の3%のシェアとなっている。
ノキアは携帯電話といえば皆がつかっていた時期もあったが、顧客の定着度が強いアップルが参入してきたことでシェアを失い、その後はアンドロイド・スマートフォンの新製品が躍進するなかで勝ち残りは困難となった。
それからはずっと長い迷走となった。
ガートナーの調査によると、2014年、グーグルのアンドロイドが81%、アップルのiOSが15%というなかでウィンドウズを搭載したスマートフォンの出荷数は3%にすぎなかった。
一方インドでは、状況は悪くなかった。マイクロソフトは2015年最初の3か月で出荷されたスマートフォンのうち4.5%を握り、直前の四半期の3.6%から増加したことがカウンターポイント・リサーチの調査で判明した。
この成長を確立し、さらなるインド投資を進めるためマイクロソフトのインド支社はインド国内のノキア・ストア9000店舗をマイクロソフト・ストアへと模様替えした。そして、店舗では携帯電話だけでなくゲーム・コンソール「エクスボックス」などマイクロソフトの製品を併せて販売する。
同社はさらに、世界第2位の人口を誇る国で同社製品の周知をめざし、テレヴィジョンや印刷媒体の広告に投資してきた。
マイクロソフトは、ノキアがすでにインド国内で固めていた市場を受け継ぐことで、イチから築き上げる必要がなかった。
ノキアはかつて、国内では誰もが知る名前で2005年には携帯電話市場の60%を握っていた。その後同社は国内での販売ネットワークを確立したが、現在はサムスンとマイクロマックスの2社が市場の主導権を執っている。
ノキアの強みは販売ネットワークの力と、アフターセールスのサーヴィス・ネットワークです。マイクロソフトはこれを生かしてノキアがインドで確立したブランド認知度を引き継ぐ必要があります」と語るのはラシャブ・ドーシだ。彼はシンガポールを本拠とする調査会社「カナリス」のアナリストである。
昨年マイクロソフトは、購入しやすい価格のスマートフォンを強化してきた。「いまのところ非常に好評をいただいています」とマイクロソフトのインド国内携帯機器統括者を務めるアジェイ・メータは語る。
たとえばマイクロソフトが最近出したルミア430の価格は最安値のスマートフォンで、83ドルという安さだ。
しかし同社は単に市場の底辺を狙っているだけではない。今後はインドでハイエンドの携帯電話を発売する計画で、リリースが近づいているオペレーティング・システム「ウィンドウズ10」を搭載する予定だ。
「もしわが社がマイクロソフトをコンシューマに評価されるブランドとして確立したいなら、フラッグシップとなる、ハイエンドの価格帯にも積極進出する必要があります」とメータ氏は述べる。続きを読む
(From the Digits blog post. Thanks to Saptarishi Dutta.)