パンドラ・メディアの経営陣が伝えたかった5つの要点

パンドラ・メディアは先月から30%以上の株価上昇となっているが、これには十分な理由がある。同社は2015年7月23日に第2四半期決算を発表し、決算書の最上段と最下段の両方でアナリストの予想を大きく上回ったためだ。
だが音楽ストリーミングのスペシャリストである同社にはアクティヴ・リスナーが8千万人いる一方で、パンドラの事業は売上高と1株利益だけでは測れないものがある。投資家にとっては幸いなことだが、パンドラの経営陣は定期的に時間をとってアナリストと四半期決算について対話の機会を設けている。これは将来を見込まれた同社の行き先についてより長期的な視点で理解するうえで役に立つ。パンドラが今回の四半期決算の電話会見で述べた5つの要点を以下に挙げよう。
1 リスナーはこれまでにないほど忠実
2015年6月末時点のリスナーは(通例この時期は数字が落ち込みやすい)月間アクティヴ・ユーザは7940万人と、前年6月とくらべて4%の増加となりました。また、昨年比では微増となりました。リスナーはアクティヴ・ユーザ単位での利用時間が22.2時間と、順調な定期利用となっています。当四半期の総視聴時間は53億時間で、これは前年同期の5%増となりました。(パンドラCEOブライアン・マカンドリューズ)
よりはっきりと伝えると、このように視聴時間がリスナー数の増加率を上回ったことはパンドラのリスナーがそれぞれサーヴィスへの定着傾向を強めたことの確たる兆候である。マカンドリューズはこれに加えて、プレイリスト機能とユーザ・インタフェースへの改善が奏功したと述べている。パンドラは前年同期とくらべ、楽曲スキップ機能の利用件数が減少した。これによって購入したものの再生を中断した楽曲の件数は減少し、視聴時間への短期的な下方圧力は減衰している。
パンドラの視聴時間がこのように伸びていることを踏まえ、マカンドリューズがパンドラの事業について「長期的な健全性と将来性を期待させる兆候」と呼んでいることは妥当だろう。
2 モバイル向けプログラマティック広告はスケジュールを前倒しして開設
プログラマティック製品については、第3四半期の予定を前倒しして6月中旬に開設いたしました。このように広告主の皆様から早期の引き合いが活発にみられたことを弊社は歓迎しております。2016年の売上高にも十分つながる内容だとみています。これは伸びしろの大きな分野で、マーケティング担当の皆様が確信をもって予算を投入できる追い風にもなると期待しております。(ブライアン・マカンドリューズ)
パンドラはモバイル機器向けプログラマティック広告購入ソリューションを2015年6月18日に開設した。アナリストの一部には懐疑的な声もあり、同サーヴィスへの「持続性の乏しい熱狂」が観測されると指摘しているものの、それとは対照的に投資家は「おおいに歓迎」しており、パンドラの経営陣がみせる自負と合致したかたちである。パンドラのスポンサード・リスニング広告(ユーザが1時間広告による中断を拒否するかわり、最初に商業ブランド各社の動画またはリッチメディアが流れる)は地域ごとの広告営業部隊を増員することによって急増し(地域広告は前四半期に67%増加した)今回のプログラマティック製品の導入によってパンドラは持続的な売上高の成長を数四半期にわたってみせるだろう。
収益化はこれまでにないほど強い
弊社はオーディエンスの増加だけでなく、収益力の増強についても順調です。1000時間あたりの売上高は当四半期に53.91ドルと過去最高を更新し、前年同期から10.50ドルの増加、(通例年間でピークを迎えやすい)第4四半期から2.37ドルの増加となりました。(ブライアン・マカンドリューズ)
パンドラの売上高は前年同期比で30%増の2億8560万ドルとなり、年間で低調となりやすい四半期のなかで過去最高を更新した。マカンドリューズはパンドラが連結12か月決算で10億ドルの大台に乗せたことを明かしている。
4 アップル・ミュージックのデビューはさほどの出来事ではなかった
第2四半期におけるアップル・ミュージックは、6月末の開設でしたが、いまのところ弊社への影響はありません。もちろん、弊社の競争優位については十分な自負があります。この分野での派手な進出はまだ始まったばかりであり、一般の皆様があれこれと手にとって試したいと思う時期にあると感じております。短期的には影響はみられるでしょうが、これまでのリスナーがこれをきっかけに離れることや、長期的に大きな影響は心配しておりません。(ブライアン・マカンドリューズ)
アップル・ミュージックのデビューについて評論家の多くは心配しすぎていたようだ。とりわけ、クパチーノの大企業である同社が3か月無料お試し期間を提供し、競合のひしめきあうストリーミング音楽サーヴィス業界へのキックスタートを仕掛けてきたためであろう。
アップルの取り組みについてはまだ可能性の大小を決めることはできない。アップルのシニア・ヴァイス・プレジデントであるエディ・キューは先日USAトゥデイの取材に応じてアップル・ミュージックが最初の5週間で11百万人の利用者を集めたと表明した。公平に見るならば、このユーザは無料お試し期間に得られた数字であり、じっさいどの程度のユーザが自分の財布からお金を払って定着するかは時間をおいて見るべきだろう。いまのところ、パンドラの経営陣がとくに懸念を示していないのは意外ではない。
5 著作権料理事会の問題は終わった
1か月の審議が明け(2015年6月21日)、著作権料理事会の料率設定委員会は結審となりました。弊社ではこれに対し法務専門家を雇い反論を提起しております。理事会の審議に対する弊社の見解が妥当であることに自信をもっております。いまは理事会の決定を待つ段階にありますが、すでにいくつかのシナリオを想定して対策しており、パンドラが今後とも長期的な成長を妨げられることのないよう、法廷の結果うんぬんに関わらず施策を進めてまいります。(パンドラCFOマイク・ヘリング)
この法定料率の審議は(一般に「ウェブIV」とよばれる)昨年著作権料理事会によって開始された。これは2016年から2020年の期間にパンドラ(と数千社のデジタル・ラジオ・サーヴィス)が利用するライセンスのウェブキャスティング使用料率を決定するためである。だが、使用料の収納機関であるサウンドエクスチェンジはこれに先がけ、理事会に料率の引き上げを要求し、パンドラが払い切れないと主張する額を提案していた。
これはパンドラにとって大きな障壁になりうる問題で、コンテント費用は長期にわたる持続可能な利益創出の最大の山場となるためだ。四半期ごとにパンドラは最低1億ドルの使用料を著作権者に支払っており、先月末までに累計費用は15億ドルにも達した。
だが12月に述べたとおり、理事会の審議は未決のまま終わると予想される。仮に不利な決定となったとしてもパンドラはレーベルとの直接契約を成立させることによって双方にとって妥協可能なお年どころを作る可能性もある。ヘリングの言う「結果うんぬんに関わらず」はこの方策のことを指している。
これを踏まえ、またパンドラの経営陣が四半期決算発表の会見で示したカタリストを見れば、パンドラの株価が辛抱づよく待つ投資家の期待に応えることができないという理由は見当たらない。続きを読む
(From the Motley Fool blog post. Thanks to Steve Symington.)