ブレット・テイラーのキップが3千万ドルを資金調達しマイクロソフト・オフィスやグーグル・ドクスに対決へ

ブレット・テイラーは自身で創業したスタートアップ「キップ」の成長に向け、3千万ドルをさらに調達した。これは同社がマイクロソフトやグーグルとの対決へ向け、アメリカ全土の企業内デスクトップを席巻することを狙った動きである。
キップは通信、共同作業、生産性を横断するサーヴィスを制作している会社であり、木曜日にグレイロック・パートナーズを主幹事とする資金調達ラウンド実施を発表した。なお、グレイロックのジョン・リリーが同社の取締役を務めるほか、ベンチマークも投資家として参画している。キップは今回のラウンドによって同社の評価額が幾らになったかを公表していないが、シリーズA時点での15百万ドルを上回る額だと述べている。また、テイラーによれば、キップはいわゆるユニコーン(10億ドル企業)に踏み込むわけではないという。
同社はまた、ニューレリックのマーケティング統括者を務めたパトリック・モーランをチーフ・カスタマー・オフィサーに起用し、営業、マーケティング、カスタマー・サーヴィスの統括を、自称「データオタク」の彼に委ねる。
「わが社の経営チームの専門領域に空いたギャップを埋めることになります」とテイラーはリコード誌の取材に応じて述べた。彼は同社がプロダクト志向であり、マーケティングにはさほどエネルギーを投じてこなかったことを明かした。
モーランはキップについて、ニューレリックの上場準備を進めるなかで非常に有用だったと述べている。彼はニューレリックの上級幹部のあいだではキップを利用している一方で、担当する弁護士たちはイーメール、ボックス、ドロップボックスを利用して文書を送り返してきた話を明かしている。
「けっこうたいへんでした。『こっちのファイルだよ、それじゃなくて・・・ヴァージョン3.a.3423を添付しただろ!』みたいに」とモーランは語る。「それがキップを使い出したとたん、前のやり方には戻れなくなったのです。わたしの仕事は数百万人の人たちがキップの虜になるように仕向けることです」
キップは資金調達を前に進めるものの、テイラーは過去の経験から慎重さを保っており、シリーズA時点で調達した資金の大半を銀行口座に保有していると述べる。
「わたしにとっては到底忘れられないことでした」とテイラーは2009年に運営していたフレンドフィードをフェースブックに売却したときのことを振り返る。テイラーはグーグル・マップスの開設に携わった主要人物のひとりでもある。「わたしたちはどちらかといえば保守的なのです」
とはいえ、同社はすでに業界での地位を固めているマイクロソフトとグーグルという2強に立ち向かっていく。とくに、キップが狙いを定めているのはプロダクトのよさを武器に大企業へと売り込むことである。
同社の計画では、キップを個人向けには無料で提供し、機能制限を取り払うことを求めるビジネス利用者には有料版を提供するというビジネスモデルを推し進める。テイラーによると、現在キップには個人ユーザが数百万人、ビジネス・カスタマーが3万社登録しているという。もっとも、有料会員になっているのは一部である。
キップはテイラーの勤務時間の大半を占めているが、サイド・プロジェクトとしてアイフォーン向アプリも手がける。スタンフォード大学の体育会系学生のなかで流行した、写真や動画で装着しているオタク系メガネを写真に合成するアプリである。保存してある写真、あるいは撮ったばかりの写真にヴァーチャルのオタク系メガネを着せてみられるという楽しみを提供する。
「たぶん2時間くらいで仕上げたコードじゃないかな、でもアップルが認証してくれるまで2週間待ちました」とテイラーはこのアプリ「ナード・ネーション」について述べている。
テイラー自身、学士号と修士号スタンフォードで取得しているが、一度にふたつの仕事を兼けもちするつもりはないと念を押している。「できるなら自分の仕事はキップに専念したいものです」と彼は笑いながら語った。続きを読む
(From the Re/code blog post. Thanks to Ina Fried.)