ヒューレット・パッカード・エンタープライズとHP社の決算は明暗分かれる

コンピューティングの巨人であるヒューレット・パッカードは11月1日をもってその存在を消し、新たな2つの企業としてHP社とヒューレット・パッカードエンタープライズへと分割された。
本日新しい2つの企業は第4四半期決算を同時に発表し、今後の四半期について業績見通しを公表した。しかしその見通しは全面的に明るいものではなかった。
HPの連結決算は営業収益が7パーセント減の284億ドル、あるいは為替調整後で2パーセント減の数字となった(米ドル高は変わらず、HPは国外市場での事業を多くもつ)。1株あたり利益は93セントで、前年同期比12パーセント減となった。
HPEは主にサーバ、ストレージ、ネットワーク、ITサーヴィスからなるエンタープライズ会社だが、営業収益は前年同期比4パーセント減の141億ドルとなった。ただし、為替調整後では3パーセントの増収となった。
HPEにとってのグッド・ニューズは今後の四半期および通期の業績見通しだ。同社はすでに公表していた見通しを堅持し、2016年度の営業収益が18.5億ドルないし19.5億ドルになるほか、2月を期末とする四半期の1株利益は37セントないし41セントになると表明した。この四半期業績見通しはアナリストが事前に予想した43セントををわずかに下回った。HPEの株価は時間外取引で3パーセント近い下落となっている。
CEOのメグ・ホイットマンは季節的な売上の落差が生じることについて、分割前の同社とは状況が異なると述べた。「エンタープライズおよびソフトウェア事業についてはバックエンドの傾向が強く、そのため業績見通しに数字として現れてきた可能性があります」とインタヴューに応じて彼女は述べた。HPEの主要な部門については売上高の増加が2四半期連続で続いていると指摘した。これは彼女が分割前の会社のCEOだった当時は発言できない言葉だった。
また、彼女は会社を分割したことについて正当であると擁護した。「分割に至った背景は徐々に明らかになっています。おそらくはみなさんも感じていると思います」と彼女は述べた。「新たな2つの企業はそれぞれが機敏かつ柔軟に動くことができるようになりました。身軽になって、順調な駆け出しをみせています」
その後の電話会見の最中、彼女は当会計年度における5つの優先課題を挙げた。売上増(少なくとも為替影響込みで)、営業利益増、フリーキャッシュフロー増、「イノヴェーション・ロードマップ」の執行、そして長らく波乱含みだったエンタープライズ・サーヴィス事業における売上安定だ。
ハードウェアを主力とするエンタープライズ・グループの営業収益は2パーセント増、為替調整後では9パーセント増となったほか、営業利益率は14パーセントとなった。ネットワーキングにおける売上高は35パーセント増、サーバの売上高は5パーセント増となった。ストレージの営業収益は7パーセント減となり、特殊サーバの営業収益は8パーセント減となった。
エンタープライズ・サーヴィシズ・グループにおける売上高は前年同期比9パーセント減の50億ドルとなったほか、営業利益率は8.2パーセントだった。この減収は主にアウトソーシングの売上高が11パーセント減少したことが理由で、アプリケーションおよびビジネス・サーヴィシズ・グループについては5パーセント減収となった。為替調整後ではわずかな増収となった。ソフトウェアの営業利益は8パーセント減の9億58百万ドルだった。
「HPEの数字はほぼ予想していた通りで、ハードウェアにおける強含み、ソフトウェおよびサーヴィスにおける弱含みが原因です」と述べるのはアナリストのパトリック・ムアヘッドだ。彼はテキサス州オースティンでムア・インサイツ・アンド・ストラテジを運営している。「戦略的にもっとも重要なことは、ハイブリッド型クラウドへの順調な移行といえます」
ハイブリッド型クラウド・サーヴィスはたとえば、アマゾン・ウェブ・サーヴィシズやマイクロソフト・アズールといった他社の管理するコンピューティング・ハードウェアをレンタル利用し、そこに連結して顧客が自社保有するハードウェアのコンピューティング能力と同時稼動させるものである。
パーソナル・コンピューティングとプリンターを手がけているHPについていえば、かなり異なっている。同社が2016年度決算の見通しを1株あたり1.59ドルないし1.69ドルの範囲に設定したことを受け、アナリストの見通しを下回ったため株価は時間外で5パーセントを超える下落となった。アナリストは事前に1.77ドルを予想していた。第1四半期の1株利益は33セントないし38セントで、これもアナリストの事前予想である42セントを下回った。同社は予想を9セントほど下回る数字について、退職金の計画進捗や一部のコストが予想外となったためとしている。IBMやレクスマークも先日、同様な見通し変更を表明していた。
パーソナル・コンピュータの売上は前年同期比14パーセント減となったが、事業者向け販売の15パーセント減が響いた。コンシューマ向け販売は12パーセント減だった。ユニット全体の売上は12パーセント減で、原因としてデスクトップ・マシーンの17パーセント減、さらにノートブックの5パーセント減が足を引っ張った。
プリンター事業の売上は14パーセント減で、個人向けプリンターが17パーセント減となったことが主な原因である。事業者向けプリンター販売は23パーセント減だった一方、コンシューマ向け販売は14パーセント減だった。インクおよびペーパーの販売は10パーセント減だった。
CEOディオン・ワイスラーはリコード誌のインタヴューに応じ、HP社は減収となったものの、とくに重点化している領域については十分な市場シェアを堅持できたと述べた。「弊社は市場平均を上回るペースを確保しております」世界全体の市場シェアは19.7パーセントへと増加し、商用セグメントにおけるシェアは23.7パーセントへと増加した。これは同社にとって過去最高となった。
このようにきびしい市場環境は、「ニュー・ノーマル」といえます、と彼は指摘する。
「弊社は価格だけで競争力を得ることができません」とワイスラーは述べる。10億ドルの生産管理費削減という公約を改めて表明したほか、彼は営業外損失の3億ドル削減計画を加速させると表明した。「今後3年間で3億ドルをコスト削減することをすでに公約していますので、ぜひ実現させるつもりです」と彼は述べた。
「意外だったのはHP社のPCおよびプリンター販売がかなり減少したことです」とムアヘッドは指摘する。「といってもあまり外野は悲観すべきでなく、既存生産設備の効率化を進めている同社は今後新たなスタートを切ることができると個人的にみています」続きを読む
(From the Re/code blog post. Thanks to Arik Hesseldahl.)