アリババがサウス・チャイナ・モーニング・ポストを買収し、西側諸国による中国の印象を改善へ

数週前より推測されていた通り、中国を本拠とするイーコマースの巨人であるアリババは、香港を本拠とする出版社「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」(SCMP)を買収し、メディア事業へと乗り出した。
今回の取引は1億ドル程度の買収とみられており、アリババは同地でもっとも影響力のある英語媒体を保有するメディアを手に入れたことになる。中国では政府による検閲が悪名高く、英語媒体ではその対象から外れている。
SCMPは自ら今回の取引について報じているが、アリババによると同紙の印刷版は10万部程度の定期購読部数があり、今後も編集上の独立性を保つことになるという。「わが社は企業の所有者となりますが、それでも編集者が編集方針を決定し、あらゆる記事について取材対象は独立して選択することになります。それが基本原則です」とアリババのエグゼクティヴ・ヴァイス・チェアマンを務めるジョーゼフ・ツァイは説明している。
しかし、今回の買収の動機付けとして中国への西側諸国の印象を変えようとしているところが見受けられる。
「わが社の事業は中国に深く根付いており、そのため中国経済のあらゆる側面に関係しています。ということは、多くの人が中国のことを正当に理解せずに間違った中国観をもっていれば、それはすなわちアリババへの間違った認識にもつながるのです」とツァイはニューヨーク・タイムズの取材に応じて述べている。「中国にとってよいことは、アリババにとってもよいことです」
ツァイは「西側メディアのレンズにあるバイアス」について言及しており、中国を外からみる諸国の人が、投資家も含めてアリババについてもつ印象をゆがめられていると彼は述べている。同社は現在ニューヨーク証券取引所で上場しており、中国にかんする否定的な報道があれば、株価にも影響していると主張する。
表面的にはアリババが同社にとって好影響をもたらすメディアをカネで買おうという意図で、同地における新聞のひとつで国外にも読者が多数いる、希少な媒体を手中に収めることがその手段になったと見受けられる。この意図を達成するためにSCMPが10年ほど続けてきた有料記事の廃止を予告している。ツァイは加えて、アリババはSCMPの編集部により多くの資金を投じることによって「デジタル部門の強化」を図ると表明している。
アリババは新聞の買収について主な動機付けをオープンに表明してきたが、これは編集上の独立性について同社が公式に表明しているものと相容れない性質のものだ。SCMPはこれまで中国政府について批判的な立場をとってきた。また、同紙の報道はツァイによれば同国にまつわるさまざまな関係者に悪影響を及ぼしているという。アリババもそこに含まれる。
新聞社として同紙は中国について独立した取材方針をもっていることで知られてきたが、アリババは中国内できわめて強い事業基盤をもっていることからすれば、利害は対立しないのだろうか?続きを読む
(From the VentureBeat blog post. Thanks to Paul Sawers.)