ファイアフォックス43が登場、ウィンドウズ向け64ビット版、ブロックリストの精度向上、アンドロイド版ではタブ・オーディオ通知機能が追加

モジラは本日、ファイアフォックス43をウィンドウズ、Mac、リナックス、アンドロイド向けに開設した。注目すべき機能追加は、ウィンドウズ向けブラウザに64ビット版ができたこと(やっと!)、ブラウザの追跡拒否機能でブロックリストの精度を高めたこと、また、アンドロイド向けにはタブ・オーディオ通知機能が追加されたことが挙げられる。
デスクトップ版ファイアフォックス43はfirefox.comでダウンロードすることが可能で、既存ユーザは全員、自動アップグレードの対象となる。いつも通り、アンドロイド版はグーグル・プレイから一足遅れての登場となる。
モジラはファイアフォックスの利用状況について詳細な内訳を公表していないものの、「10億人の半分ほどが世界中で利用」していると表明している。言い換えれば、ウェブ開発者にとっては主要なプラットフォームとして目されている。モバイル・アプリがますます普及を進めるなかであってもだ。
デスクトップ版
今回のリリースの最大の注目点といえば、ウィンドウズ向け64ビット版の開設である。この新ヴァージョンではウィンドウズ7以上が動作要件となっており、すなわちウィンドウズ・コンピュータのほぼ80パーセントで動作可能ということだ。ファイアフォックスの64ビット版はこちらのページからダウンロードできる。
では、ファイアフォックスの64ビット版はユーザに何を提供してくれるのか? もしあなたが64ビット版のシステムをもっているなら、その答えはアプリケーションの容量に余裕が出ること、より高速な実行、そしてセキュリティの向上だ。
32ビット版ブラウザはアドレス・スペースの限度が4GBで、あるいは驚く人もいるかもしれないが、ウェブ・アプリケーションの多くはもはやこの容量が障壁になってしまうほど大型化している。たとえばブラウザをベースとしたゲームでは、とりわけネーティヴ的なゲームプレイを提供しているものだと、オンライン・アプリとくらべてずっと容量が大きくなる。これは同期読み込みを正常に作動させるメモリ保存が必要になってくるためだ。
たとえば、エピック・ゲームの「アンリアル・エンジン」を土台に制作されたゲームをファイアフォックスで動かしている様子は以下の通りだ。

「この手のアプリでとくに容量の大きなものになると、64ビット版ブラウザかどうかで、ゲームが動作するかの分岐になることがあります」とモジラは今年、説明している。4GBのアドレス・スペースとは念のために知っておくだけでは済まない限度である。たとえばヒープ・サイズは32ビット版ブラウザでは512MBが推奨されているが、64ビット版ファイアフォックスになると2GBへと一気に上昇する。
実行時間については、モジラによると64ビット版ファイアフォックスが高速化する理由はハードウェアの認識および動作手順へのアクセスが新機能として加わったことだという。すなわち、JavaScriptの実行速度が著しく向上するわけだ。
こうしてアドレス・スペースが増加すると、ファイアフォックスでハードウェア・メモリ保護機能を動作させたり、ASLR(アドレス・スペース・レイアウト・ランダマイゼーション)を有効化することができる。その結果、悪意あるウェブ・コンテントがブラウザに侵入することが困難となる。
といっても、そこにはコツがある。ファイアフォックスのウィンドウズ向け64ビット版はプラグインのサポートに一部制約が設けられている。プラグインを要求する一部のサイトではファイアフォックス32ビット版では動作しても64ビット版では動作しないこともある。
だがモジラはこれを大きな問題ととらえていない。あってもデザインの問題程度だという。そのため同社は今年中にもファイアフォックスでのNPAPIサポート打ち切りを計画している(ただし、フラッシュは今後も継続)。モジラはこの計画を実行するまでに1年近くを費やしてきた。
リナックスおよびMacOSX向け64ビット版ファイアフォックスは数年前から提供されてきたが、ウィンドウズ向けについてはその正式提供が遅れていた。2012年11月にモジラは64ビット版ファイアフォックスをひっそりと中断したが、1ヵ月後にそれを撤回したことでユーザからの反発が広がったことがある。
2014年11月に同社はウィンドウズ向け64ビット版ファイアフォックスの提供を「まもなく」開始すると公約していた。3月に同社はディヴェロッパ版として64ビット版ファイアフォックスを開設していた。そしてようやく正式版として登場したというわけだ。
64ビットのサポート以外に、ファイアフォックスはブロックリストの精度を高めている。ファイアフォックス42ではブラウザの「プライヴェートブラウジング」モードで追跡拒否機能の追加を行なっていた。
ファイアフォックスはiOSでの「フォーカス・コンテント・ブロッカー」と同様、追跡拒否機能の動作基準として、アンチトラッキング・スタートアップの「ディスコネクト」が提供する基準を採用してブロックリストを作成している。
この標準装備リストをもとに、ファイアフォックス開発によるプライヴェートブラウジングでは広告、アナリティクス、ソーシャル・トラッカーといった数多くの追跡機能をブロックすることができる。「フォーカス」のときと同様、ファイアフォックスはブロックリストを「厳格」に設定でき、追加コンテント追跡拒否も可能となった。
「コンテント・トラッカーの別カテゴリとしてはたとえば動画、写真、組み込み型コンテントからの追跡をブロックすることが挙げられます」とファイアフォックスのプロダクト担当ヴァイス・プレジデントを務めるニック・ナグイエンはヴェンチャービートの取材に応じて先週語っている。「このカテゴリについてもブロックの対象とすることで、動画内に組み込まれた追跡をブロックしたり、あるいはサイト自体を拒否する場合もあります」
言い換えれば、これはかなりプライヴァシーを重視するユーザ向けとなっている。トレードオフなのは一部のサイトがまったく動作しないことがある点で、「厳格」を設定するには注意が必要だ。続きを読む
(From the VentureBeat blog post. Thanks to Emil Protalinski.)