サブプライムと2010年のユーロ・キャリートレード

ギリシャ問題は2007年から3年遅れのサブプライム問題と考えることもでき、どちらも信用拡大の反動・バブル崩壊である。即ち、米国においてサブプライム・ローンという借入で低所得者の住宅投資が過度に進んだように、欧州でのサブプライム地域がギリシャを中心とした欧州周辺国であり、それまで借入ができなかった国が、ユーロという共通通貨になったことで国家レベルで過大な借入をしたことの反動である。しかも、そこにユーロの通過がからむだけにより複雑化したのである。
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サブプライム問題で始まった金融危機は2009年秋頃から、ソブリンリスクの上昇という新たな局面に入った。通常、ソブリンリスクは政府や地方政府がデフォルトするリスクを意味するが、現在、各国の発行増による金利上昇や、出口戦略の開始に伴う国債暴落も懸念されている。また米国では、カリフォルニア州等、地方財政の急激な悪化も注目されるようになった。国であれば、カリフォルニア州のGDPは世界第8位に入るとされており、ギリシャ共和国ドバイ首長国よりも大きいだけに、その影響は甚大である。
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ECBによる低金利でのファイナンスに支えられて、スプレッドのあるギリシャ国債に投資することでスプレッドを確保する、「ユーロ・キャリートレード」の蔓延がギリシャ問題の背景にあった。この構造が過度な信用拡大をもたらし、同時に、危機が生じたときの伝播の主因であった。ただし、こうしたモラルハザード状態に対し、安易な格付け依存で投資が拡大した状況は2007年に顕在化したサブプライム問題と類似した構造である。

世界国債暴落 ―世界を蝕む日本化現象

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