ツイッターが合衆国政府情報機関による公表ツイートデータ蓄積をブロックした件はおおごとなのか?

週末にかけ、一部のニューズではツイッターがデータマイナーをブロックしているとの記事が見られた。データマイナーとは(もうお気づきかもしれないが)ソーシャル・メディア経由のやり取りを大量に蓄積している会社で、リアルタイムでツイートを解析するツールだけでなく、合衆国の行政機関にも利用されている。
データマイナーはツイッターからの投資、また中央情報局のヴェンチャー・キャピタルであるインキューテルからの投資を両方受け入れている。ツイッターに対しては、公開設定で投稿された(事実上)すべてのツイートを集計するAPI「ファイアホース」を利用する権限を保持する。同社の取引先には数多くの金融機関、大企業、さらに国家公安委員会も含まれている。すでにこの当局はツイッターの内部に入り込んできていることが判明している。
入手可能な情報から指摘されているのは、一部の行政機関は無償の利用プログラムに調印していたが、ツイッターはデータマイナーに対し(行政機関への調査は対象外として)ファイアホースの提供終了を伝えたとの推測である。ツイッターは本件について契約の変更には当たらないと主張し、従前の規約通りだという。
一般の人々はツイッターの方針について賞賛しており、今回もやはり同社の過去のスタンスを引き継ぐものとみられる。行政当局からのアカウント情報介入に反発するのは同社が早くから貫いてきた立場で、スノーデンの件が明らかになる以前のことだ。スノーデンが公表した文書によると、NSA主導のプログラム「PRISM」に唯一参加しなかったのがツイッターであった。このプログラムはFISA裁判所の命令に対しインターネット企業が管理するデータを提供することを促す効果がある。インターネット企業の大手各社が軒並み政府とのあいだに情報開示の「調停」に達したなかでさえ、ツイッターは抗戦を続けてきた。これは政府の要請があっても何をどこまで開示するか個別に自ら決定する権利のためである。言い換えれば、ツイッターは長いあいだプラットフォームを捜査目的で利用されることに立ち向かうという誇らしい歴史があった。
ただし、筆者は今回の決定についてとくに大事とは思わない。というのは公表された情報が対象であり、プライベートな情報が対象になっていないからだ。なるほどファイアホースは誰もが使う権限をもつ道具ではなく、制約を設けるのはさほど困難ではない。だが公表された情報という点でおそらくはそこに、他社に当てはまらない幾ばくかの経緯があっただろう。もっとも、それはそれとして情報保護にたずさわる人のコミュニティにとって公表された情報の取扱いを洗い直すことは悪いことでもなかろう。政府内の情報機関がこれまで、本来収集する権限のないデータベースに入り不当ともみられる蓄積を続けてきた事実はぞっとすものがあるし、弊誌では積極的に問題を指摘してきた。だが公表された投稿などはいつの場合でもあとで見返すのが厭なものだ。投稿してしまったものがプライベートに当たると結論する合理的な理由はないし、よくある「サードパーティー」云々の議論が的外れなことを抜きにしても、ツイートした人は自らそれを公表するという主体的な意思決定をしたはずだ。あるいは筆者が見落としている点があるのだろう(読者の誰かがコメントで指摘してくれるのを期待する)が、やはり公表された情報を情報機関がデータ蓄積することにどういった問題があるのか、私には思いつかない。これまでさんざん、情報保護界隈ではデータ蓄積の是非が裏切られてきただろ、という主張もわかる。だが、プライベートな情報を収集することに問題があるのであって、ただ「データ蓄積反対」では通じない。「裏切りを伴うデータ蓄積反対」が問題だろう。
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(From the Techdirt blog post. Thanks to Mike Masnick.)