マック・ミニは「おとりで買い替え」の小細工か?

(This is a translated version of 'The Mac Night Owl' blog post. Thanks to Gene Steinberg.)
かつて、アップルはその製品があまりに高額であるとの非難を耐え忍んだときがあった。Macに行くなら、「アップル税」なるものを払う決意が必要だった。その一方でPCは明らかにずっと安かった。
ところが、この頃ではそれは当たっていない。MacとそれなりのメーカのPCを同程度ハードウェアとソフトウェア設定で、できるかぎり近いものを選んでくらべてみると、Macはかなり健闘している。要するに、PCのほうが少し安いこともあるが、Macが安いことだってあるということだ。
誤解がないように言っておくと、わたしはなにもここでMacのすべての機能がじっさいに必要かどうかを論じたいのではない。それはべつの話だ。あなたに要るものがあなたに要るものだから、そう考えればカスタマイゼーションの選択肢はやはりごくかぎられている。もっとも、マック・プロのようにハイエンドを求めればいくらかの可能性はあるが。
もうひとつ言っておくと、わたしはディスカウント・ストアで買ったり、自作するといった、いわゆる「白箱」PCの話をしたいのでもない。たしかにこれは安上がりだが、テック・サポートが必要になったときが運の尽きという話になるかもしれない。自分でなんでもやれるというのなら話はべつだが。
わたしが思うに、マック・ミニはシンプルに、客を入り口に呼び込むための製品で、とくにMacは高くて買えないと思っていた人に向けられている。たとえば、自動車のディーラがどういう商売をやっているか考えてみよう。まずは格段に低価格の激安モデルを広告して、あなたを見に行こうという気にさせる。
ショウルームの敷居をまたいでみると、なるほどそこには見たとおりのクルマが置いてある。だが、多くの場合、色はどれも期待はずれで、しかも欲しいオプションにかぎってついてなかったりする。たとえばパワー・ウィンドウ、アイポッドのジャック、ことによるとラジオひとつ備えていないこともある。これでは最低限の移動手段があればいいというのでもないかぎり、買って帰ろうとは思わないだろう。
この魂胆は、もちろん、ディーラが十分な利益を出せるだけのタマを買わせようというものだ。当然、この頃ではそれは簡単ではない。あなたが融資を受けられると仮定して--これ以上は借りられないとして--あなたが欲しいモデルを選ぶところまではいかないだろう。どこかで妥協することになって、そうなるとディーラにしてみれば在庫がはけてよかったと思って満足するしかない。
さて、わたしがここでアップルがあまりこれが売れても売れなくても気にしないのではないか、これは宣伝上のしかけで、とくにPCを使ってきた、安価なハードウェアに馴れたユーザに向けた小細工だからと主張したら、マック・ミニを買ったあなたは反論したくなるだろう。実際はといえば、メモリを満載すれば、ミニはまともなコンピュータだ。オフィスや学校で十分使える製品だし、ウェブ・サーバの仕事だってこなしてくれる。あなたはミニが24時間週7日の使用にどれだけ保ち堪えるかといった疑問を感じるだろうが、わたしはごくまじめにそう思っている。
だが話を変えて、ミニの内部設計を見てみよう。アップルはほかのハードウェアでやっているほどには、細かいところにこだわっていないとあなたは思われるのではないか。たとえばRAMやハード・ドライヴの交換作業。この面倒な仕事のために、あなたはパテ用ナイフなど、筐体を傷つけないように開ける道具を用意しなければならない。インテル・ベースのミニは初代よりずっと具合の悪いことに、RAMスロットに届くためにハード・ドライヴもついでに外さなければならない設計になっている。これを説明するのに、この製品をできるかぎりユーザにとっつきにくいものにして、なんとかマックブックやアイマックを買おうという気にさせたいからだ、という以外に理由があれば誰か教えてもらえないだろうか。
やろうと思えば、たとえばミニの狭いケースの底に4つ、隠れたネジをつけておくなど、方法はあるはずだ。そうすれば2分もあればネジを外すことができるし、製品の見栄えを損なうこともないだろう。ミニの底など、他所に持って行くとか(そうでなくても)アップグレードをしたいとか、そのくらいの理由がなければ、誰が見るだろうか?
あるいは、ことによったら、アップルのエンジニアリング・チームには、1990年代のMac(あの不評だったクアドラ800など)の不合理な設計をした人が残っていて、ミニの設計に関わったのだろうか。わたしは確かめたわけではないので、ただ推測にすぎないが。
もちろん、可能性が高いとみられていたマック・ミニの終焉が、こんどのマックワーアルド・エキスポ2009で発表されることだって十分ありうる。あるいはアップルVPフィリップ・シラーが--スティーヴ・ジョブズの代わりに基調講演に出てきて--誇らしげに新しい設計のミニを公開することになるのかもしれないし、タイム・マシンやアップルTVを思わせるようなスリムなケースで登場するのかもしれない。おそらく、マックブックの例にならって、エヌヴィディアのGeForce 9400Mチップを載せて、評判のよかった統合グラフィックスの全面的な改良を施してくるのだろう。
アップルはマック・ミニをあまり本気でやろうとは思ってなかったのかもしれないし、しばらくまな板の上に載せたままだったのかもしれない。だがますますきびしい景気悪化のおそれのなかで、多くの人がパーソナル・コンピュータを新調しようという話になれば、高望みはできなくなっている。生まれ変わったマック・ミニが、ひょっとしたら499ドルの最低価格で出てくると、アップルの売上が順調に伸びるチケットとなるのかもしれない。
「おとりで買い替え」の小細工か? かつてはそうだったかもしれない。だがものごとは変わった。わたしはアップルがきっと、この長らく見放されていた製品に、正しいことをしてくれるだろうと信じている。