アップルの株価が上昇: ウォール・ストリートはなにを示唆している?

(This is a translated version of the "Gene Steinberg's Mac Night Owl" blog post. Thanks to Gene Steinberg.)
ここにいつも読みに来てくれる人は知っていると思うが、わたしはウォール・ストリートのファンではない。わたしの手には、市場でひと勝負できるようなカネがあったことなどなくて、むしろラス・ヴェガスだったらちょっとはうまくやれるかもしれない。それでいて、わたしは20ドルを越える賭け金を積んだことはいちどもない。そのわたしに何が言えるだろう?
目下の経済危機では、わたしが苦労して稼いだカネを投資目的で株式仲介人に託すような気にはちょっとなれそうにない。だがわたしが不思議に思っているのはアップルの株価はアイフォン3.0 SDKが今月公開されて以来ずっと上昇を見せていることだ。
といっても、ウォール・ストリートはアップルが好きなわけではない。いつもはその逆だ。じっさい、これまでにも、アップルの株価は、その売り上げがいくら好調を記録しても、うだつが上がらないものだったのは疑いようがない。数字を見ればいい。
今回、たぶん市場はどうにかして楽観視できる材料をみつけようとしているのだろう。それで説明がつくのかもしれない。あるいはアップルのこの先の試合計画をしっかり見ている人がいて、これはかつて社外の人にはほとんど知らされてこなかったことだが、その将来の決算の見込みをじっと見ているのかもしれない。
たしかに、新しいマックが好評であるのは事実だ。とある報告では、といってももちろん非公式なものだが、アップルは最新モデルの需要が予想を超えて大きかったので生産を拡大しているという。COOのティム・クックが改良のタブを次々と閉じていっているらしいし、差し迫った理由がないかぎり、製品をこれ以上増やそうと彼は思っていない。マイクロソフト自動車産業とはわけがちがって、アップルはたんに売り上げの数を伸ばすためだけに製品のチャネルを氾濫させるようなやり方を信じていない。このような試合のやり方では、試練の時が来たら会社を食いつぶすことになってしまう。
こんどの騒ぎはどうも、マックの平均価格がPCの平均価格とくらべて高いという事実とは独立して起きているようにみえる。だが、ここの読者に聞いてもらいたいのは、わたしはいまでも、アップルには価格でも競争する強みがあると思っていて、とくに両方のプラットフォームに同様のオプション、そうでなくとも可能なかぎり同等のものをつけたモデルで比較すればよくわかる。だがわたしにはいま、この数年来の議論をここで蒸し返すような気力はない。
とはいえ、アップルのオンライン・ストアをみれば -- もちろんあなたがこの記事を読んでいる時分では記録が塗り替えられているかもしれないが -- アイマックが、マックの売り上げ1位となっていて、これはマックブックやマックブック・プロにも勝っている。4位となっているのがマック・ミニで、これはマック・プロやマックブック・エアに勝っている。
わたしが思うに、ミニが必ずしも目に入っていなかった多くの人が、ようやくそれを真剣に検討しはじめているせいだろう。これはたんにミニが小さくて愛らしいからではなく、統合型エヌヴィディア・グラフィックスのハードウェアがちょっとしたゲ−ムをしたい人にも受け容れられるものとなっているからだろう。すごいことじゃないか! それに加え、あなたのマックで相当な性能を要求することをやるのでなければ、多くの人にとってこれは十分な速さにちがいない。
まあ、ミニのハードドライヴはマックブックに入っているのと同じだから、遅いかもしれない。なるほどRAMを追加する作業は苦痛であろうが、販売店にやってもらえば済む話ではある。それに、あなたがもし、まともなディスプレイとキイボードひとつ持っているのなら、かなりのお買い得となる。アップルがもしこの眠れる製品のためにちょっとした宣伝費を工面してやれば、その単純な事実に気づく人はもっといるのではないか。
だがウォール・ストリートがいちばん喜んでいるのは、アイフォン3.0 SDKソフトウェアがビジネス向けに成り立つ可能性があることだろう。なるほど消費者はカット、コピー、ペースト、マルチメディア・メッセージングなどを評価するだろうが、ドック・コネクターをつかって接続のできる外付け機器がおそろしく増えたのは、ありとあらゆる産業にとって、広大な可能性の広がりを見せるものだろう。
アップルによるアイフォンSDKアップグレード発表のなかで、ヘルスケアの製品候補がほんの触りだけ実演されたが、これはほんの小さな例にすぎない。血圧や血糖値が測定できるという話は、医療産業がアイフォンで実現できることのほんの一部にすぎない。それ以外にできることには、膨大な数の診断機器に接続すること、その情報が容易に患者の医療記録と照らし合わせられることがある。これはドクターやナースが巡回の際に起こす可能性のある過失を減らすことにも役立つうえ、患者へ正しい診断や処置を施す時間を早めることにも役立つ。
たとえば発作に見舞われた人に検査をする、救急機器を考えてみよう。その患者が誰なのか、接続して基本情報を読み取って、そして救急隊は十分な量の情報に当たってみることで、救命に必要な措置を施すことができる。
それからもちろん、ヘルスケア産業に向けられた、医療事故の訴えの数も減らすことになる。
アイフォンのビジネス界における使い道については、あなたがたにも考えてもらえたらと思う。この端末のポイント・オヴ・セールの競争は、はじまったばかりだ。たとえば、ショウルームであなたを迎える自動車のディーラーは、あなたが欲しいモデルが入手可能か、すぐに照合して問い合わせができるようになれば、その場で競争できる価格を提示できるかもしれない。自動車工場での生産管理などもやはり、効率を上げられるだろう。
その結果、膨大な数のアイフォンが企業ユーザに売られることとなる。RIMは兜の緒を締めることを強いられよう。マイクロソフトは? もう忘れていい。マイクロソフトにはいまだ、世界がどうして見向きもしなかったのかを知る手がかりはない。