ヴェンチャ・キャピタル - このアセット・クラスへの考察

(This is a translated version of "A VC" blog post. Thanks to Fred Wilson.)
先週あたりの投稿だったか、よい「ヴェンチャ・リターン」とはなにか、ここで書きながら考えてみた。昨日、わたしたちの投資者のひとり、UTIMCOのリンデル・イークマンがこのブログに立ち寄って、この投稿について非常に興味深いコメントを残してくれた
リンデルが指摘したのは、UTIMCOのポートフォリオでは、過去10年間にわたるすべてのVCファンドにおけるリターンは9パーセント圏で、彼はそれをあまりよくない数字と考えているということだ。彼が言うには、自分たちのポートフォリオのなかでも、公開されているエクイティ市場のなかでVCはかなり抜きん出ていて、そういうわけで自分たちの投資ドルはVC(あるいはほかのプライヴェート・エクイティ)に預けているという。現状では、公開されているエクイティよりもいいのだそうだ。
リンデルがコメントで強調したことばは、大事なことだ。彼はもし、VCがその裾野の広がったポートフォリオで9パーセント以上の実績があげられないのなら、UTIMCOはVCのように流動的でリスクの大きいアセット・クラス(資産形態)よりも、単純に債券にしておいたほうがいいのではないかと、疑問を述べた。
そして哀しいことに、それはじっさいそうかもしれないのだ。VCは90年代半ばから、アセット・クラスとしてスケール拡大ができることを実証できていないのだ。過去15年から20年のあいだ、公開されている年金ファンドからこの領域に膨大な量のカネが流れ込んできたが、これは必ずしも万事うまく行っているわけではないし、このアセット・クラス全体としてのリターンは下落してきた。公開されている年金のカネ(やその他のカネ)は、CIOや投資委員会がちょうどリンデルの言ったようなきびしい質問を投げかけてしまえば、このアセット・クラスから距離を置いてしまうことも十分ありそうだ。
ピーター・パーカーは、長らくVCやアントレプレナーをやってきたが、彼がリンデルに返信して述べた意見によると、VCビジネスのサイズ縮小はLPにとってよいことのはずだといい、理由としてこのビジネスで最良の法人は非常にうまく行っているし、9パーセントを十分超えるリターンを生み出していて、過去10年以上のあいだVCというアセット・クラスにおける多くの投資者が受け取ってきた成果の平均も、同等だからだという。
わたしは先月だか先々月だかにこのブログに投稿したとき、この産業のリターンは10年平均で17.3パーセントを記録していると述べた。ということはUTIMCOのポートフォリオは定説どおり見れば平均を下回っている。だがここに挙げた10年平均のリターンというのは、90年代後半のインターネット・バブルと、KPやセコイアがグーグルへの投資から引き揚げてきた、社会現象的リターンにも重大な影響を受けている。9から10パーセントのリターンというのは、このようなビッグ・リターンを生み出したところの有利を生かしていないファンドのものなら、平均してこのくらいでもわたしは驚かない。
これはアントレプレナーにすればよい知らせではないと言いたい人もいるだろう。そしてそれは、たぶんほんとうなのだ。だがわたしが思うに、ウェブ領域に並みいるアントレプレナーがすばらしい仕事をやってくれたのは、これまでよりはるかに低い資本の額で会社を起こす方法を打ち立ててくれたことで、そこへ持ってきて頼れるエンジェル投資家たちや初期ステージの(VC以前の)市場の発展が現れているのだ。ということは、ほんとうの問題は単純にVCというアセット・クラスに投げ込まれて行き場を求めているカネが多すぎること(情報技術ではこれはたしかにある)なので、カネがこの領域から離れはじめれば、小さくも健康なVCビジネスの運営ができるようになるだろう。
バイオテックやクリーンテックではどうなのかわたしにはわからないし、こういった領域ではヴェンチャ・キャピタルの桁が多くてもなお、十分なリターンが生み出せるということも十分ありそうだ。それについてはよく知っている人がコメントしてくれることに、お任せしておこう。