ただ、10年早すぎた

(This is a translated version of "A VC" blog post. Thanks to Fred Wilson.)
わたしの友達であり同僚のVCでもあるハワード・モーガンのブログの「ウェイ・トゥ・アーリイ」(先を急ぎすぎた)という名前が気に入っている。ヴェンチャ・キャピタルというビジネスにとって、これは緋文字の罪に等しく、わたしたちが罪だと認めているものだ。
これを思い出したのは、ちょうど今日NYタイムズがネットブックについて書いた記事を読んでいたときだった。わたしの脳裏に焼き付いた記憶を呼び覚ましたのは、この部分だった。

AT&Tは火曜日、アトランタで、インターネット・サーヴィス・プランの契約にサインをした顧客に対し50ドルで、ネットブックと呼ばれる小型PCを提供すると告知した。この電話会社は試用期間が終わったあと、全州で同様に提供することも検討している。

10年前、わたしが勤めていたフラティロン・パートナーズは「インターネット・アプライアンス・ネットワーク」(その後IANとして知られるようになった)という会社を「育成」した。そのアイディアをうまく成功させたのは、わたしたちの法人内にいたセス・ゴールドスタインと、親しい友達でもあるラス・パイラーだった。そうしてできた計画は、安いインターネット専用端末をつくり、それに提携する会社の銘柄をつけて無料で配布するというものだった。そのアイディアは、多数のユーザを獲得することで、広告、マーケティング、イーコマースを通じてカネを稼ぐことが可能となるというものだ。それはもちろん、1999年当時の話だ。
わたしたちはそのビジネスに1000万ドルほど投資して、才能あるエンジニアやビジネス畑の人たちでチームを結成し、そうしてヴァージン・エンターテインメントと提携して、端末を市場に投入した。その端末はこのようなものだ。

言うまでもないが、これは成功した投資ではなかった。この端末はちゃんと使えるのだが、いくつもの致命的な欠陥があって、それは2000年に「PCワールド」のこの記事でリヴューされた(当時にほんの1秒以内で戻れるのだから、インターネットというのはありがたい)。トム・スプリングがIAN端末について、このように述べている。

がっかりしたのは、接続速度が遅いことだ。ウェブに接続している時間の70パーセントほどが、うまくログインできないせいで費やされてしまう。ウェブ・ページを開くのに10分くらいかかることもあった。わたしが接続に利用しているプロディジに訊いてみると、接続が遅いことや失敗することは、ネットワークのせいというよりは、アプライアンスのモデムとプロディジのモデムとの対応問題のせいだという。困ったことに、プロディジの最高技術責任者のビル・カークナーに訊くと、「標準でないオペレーティング・システムと標準でないハードウェアを採用した装置では、ソフトウェアのアップデートを行なうのは、いかなるときも推奨できない」という。

この端末についてはほかにも問題があった。だが率直に言ってこのビジネス・モデルとインターネット・バブルの破たんは、この端末が不足するというIANの失態が大きな原因のひとつであった。
だがもうひとつ失敗の理由は、わたしたちは10年早すぎたのだ。安いハードウェアと接続環境があって、ウェブ・ベースのアップス時代が到来し、そこに加えて消費者ひとりひとりに値ごろな価値を提供できれば、それが勝利を約束するものだということをわたしたちは知っていた。わたしたちが知らなかったのは、それを実現するのに10年かかるということだった。
「先を急ぎすぎた」には気をつけよう。これは痛手だったし、いま思い返しても痛手である。それはそれでいい。痛みなしに、得られるものはない。学ぶならできるだけ大きな失敗から学びたいものだ。