ネットブックは「おとりで買い替えさせる」手口か?
- Is the Netbook a Bait and Switch Scheme? | Gene Steinberg's Mac Night Owl (April 9th, 2009 at 6:00 PM Gene Steinberg)
(This is a translated version of the "Gene Steinberg's Mac Night Owl" blog post. Thanks to Gene Steinberg.)
アップルが、急成長するネットブック市場にできるかぎり早く飛び込むようせき立てられていることは、ご存知のとおりだ。この刈り込みのされた、スリムなノートブックのコンピュータはこの景気後退のなかでPCメーカにとって事実上唯一の収益源となっているといわれる。
残念なことに、(その名がどう呼ばれようと)ノートブック・コンピュータに「ほんの」300か400ドルの値札をつけると、見込める収益はスリムになってしまう。まともなカネをかせぐことのできそうな唯一の方法は、そこに積む荷物を売ることだ。そうでなければ、数多くのアドオンをつけたいならそうできるような、カスタマイズのオプションを追加することだ。ということはもちろん、PCメーカが追加料金を銀行口座に蓄えることができるというわけだ。
だがネットブックについて、取材になっているとはいえないような記事もたくさんある。そのどれもが、どのネットブックがどのくらい性能があるか、どのモデルと機能が入手可能か、それからアップルがこの比較的新しい市場セグメントに参入して発売する準備ができているかといった話題に終始している。
あまり言われていないことをひとつ挙げると、ネットブックがどんな用途に向くかということだ。たとえばインテルの新しい「アトム」のように低性能のチップと、統合型グラフィックスと、小型のハード・ドライヴと、せせこましいキイボードと、小型スクリーンと並べていけば、これがふつうのノートブックの小型版にほかならないことがわかるだろう。じっさい、そのモデルの多くはまったくそのようにして成り立っている。
その主な用途は、イーメール、ウェブ・サーフィン、そしてときにはかんたんな文書作成だ。じっさい、少しでも節約しようという人はたいがい、ウィンドウズXP(ビスタはあまりにも重たくて、効率よく動かない)よりもリナックスを使おうとする。リナックスはデスクトップPCにはあまり向かないように見えるかもしれないが、じっさいはちょっとした環境設定をしてやれば、じゅうぶん動作してくれる。ファイアフォックスなどのブラウザは、ウィンドウズ版とほとんど変わらないインタフェースなので、しっかり動いてくれる。イーメールは多くのISPからオンラインで回収することができるし、グーグル・アップスはかんたんな文書作成なら十分できる。そうでなくても、マイクロソフトのオフィス・スイートの代わりとして、「オープン・オフィス」などを使うこともできる。
じっさい、前にも書いたとおり、HPがグーグルによるオープン・ソースのスマートフォン・オペレーティング・システム「アンドロイド」を採用して、適切に手を加えればネットブックに最適化できるかどうか検討している。一方マイクロソフトは、次期のウィンドウズ7が最適化できると主張している(そしてそう望んでいる)。これがどうなるかは先の話だ。
いずれにしても、PCメーカが新しい世代のネットブックにどんどん力を注いでくれば、その製品の販売拡大へと動くことは必至だろう。もっと大きなスクリーンを選ぶこともできるし、カスタマイズのページでクリックしていけば、オプション選択で、ふつうのノートブックとほとんど同じくらいの装備をできる。じっさい、両者の値段が近くなれば近くなるほど、実質的な違いというのはぼんやりとしてくる。
もちろんそれこそが、PCメーカのねらいなのだ。じっさい、ネットブックはある意味、景気後退のあいだ売り上げを伸ばすための代打の製品なのではないかと思う人もいるだろう。多くの人がもっといいものが買えるようになったら、ネットブックは厄介ものとして見放され、もっと収益の出るコンピュータを買ってくれるという期待に反することをしているのかもしれない。それでは「おとりで買い替え」させる手口と同じではないか? そうともかぎらないかもしれないが、わたしの言おうとしているのはわかるだろう。
その一方で、このような状況ではどこの会社もとにかく売れれば万歳なので、もっと高いネットブックをつくろうというのは必要以上のことである。もちろん、アップルへの要求がだんだん増えるのかもしれないが、結局は、ネットブックが牽引力を確保しつづければ、アップルは参入してくると見ていいだろう。
賢明な読者にはおわかりと思うが、ネットブックにいちばん近くて、わたしが使ってもいいと思うのはアイフォンだ。わたしにとって、アイフォンのスクリーンが大きくなればもう少し高度なコンピューティングをするのに助かるし、少なくとも物理的なものにかんしては、せせこましいキイボードはあまり好きではない。もっとも、アイフォン3Gについているタッチ・ヴァージョンのキイボードはなんとか我慢して使うと思う。
それよりPCメーカにとってほんとうの脅威となるのは、多数の顧客がフル・サイズのノートブックPCなど、もはや不要と決め込んでしまったときだ。ネットブックの機能が制限されているといっても、たいていの顧客の需要を満たすには十分以上なのだ。このカテゴリがちょうどよかったという人がたくさんいるのをわたしは知っているし、マックのネットブックにしてもアイフォンの拡大版にしても、それがあれば自分のコンピューティング端末として十分と言う人はたくさんいると言って差し支えないだろう。
アップルがマックとネットブックを混在させようとせず、なにはなくとも別々に分けておこうとしている理由のひとつは、そこにあるかもしれない。覚えている方もいると思うが、スティーヴ・ジョブズとティム・クックのふたりとも、アイフォンのラインアップからアップルのネットブックを出そうと考えていると、複数回にわたって言明している。
ネットブック市場がどうなるにせよ、ほんとうにテクノロジを進化させるようなものを見るのは楽しいものだ。いまのネットブックはほとんど縮小版のノートブックに毛が生えたようなものだ。アップルがその腕のみせどころを披露してくれるには、もうすこし待つ必要がありそうだ。つまり、アップルにとってネットブックなる名前が必要なのか、それもまだ答えのない質問であろう。