フレームバーの台頭、ケヴィン・ローズがディグバーを語る

(This is a translated version of "Search Engine Land" blog post. Thanks to Danny Sullivan.)
ディグバー」が出てきてから、もう1週間は経つ。それからというもの、リンクの愛情で成り立っているサイトをだめにしてしまうのではないか、コンテントをフレームに入れてしまうとしたら不公平ではないか、という議論が関心の的になっている。わたしはディグの創業者ケヴィン・ローズと今日、ディグがこのツールにまつわる懸念を解決するためにどのような方法を前向きに検討しているか、いい話を聞くことができた。
ディグバーになじみがないという人に言っておくと、これを使うとツイッターのようなサーヴィスで便利な短縮URLをつくることができる。ディグを通じて短縮URLをクリックすると、そのページに飛び、最上部にディグバーが表示される。たとえば、わたしの個人ブログで、新聞とグーグルへの懸念について書いた記事で、最近試してみたときの画面はこんなものだ

赤い矢印で示しているのがその機能のひとつで、ディグバーを使うと誰でも見ているページに投票することができる。それ以外にもかんたんな機能はいくつかあって、たとえばディグでページについてつけられたコメントを見ることができる。

あなたがディグをたくさん使うのなら、ディグバーを気に入ることは間違いないだろう。だがこのバーは、一部の人(わたしもその一人)にとってあまりうれしくないことも、ふたつある。リンクのクレジットが入らないこと、それからウェブ・コンテントをフレームに入れてしまうことだ。
リンクのクレジットという問題
先週、わたしの書いた「URL短縮: どの短縮サーヴィスを使う?」という記事で、多種あるURL短縮がどのように動作するのかを深く見ていった。その鍵となる議題は、このURL短縮が検索エンジンに対し、転送先のURLをクレジット表示してくれるのかというものだった。これは「301 redirect」問題と呼ばれている(わたしの書いた「グーグルのページランクとは? 検索する人とウェブマスタのための手引き」という記事で、リンクのクレジット問題について、それからなぜ検索ランキングが重要なのかをくわしく取材した)。
ディグバーでは、301 リダイレクトが行なわれない(というかできない。そうするとディグバーを外さなければならないからだ)。ディグバーのサーヴィスを使ってページを短縮し、受け取った短縮URLツイッターに書き込むと、グーグルなどの検索エンジン短縮URLを経由して知ったリンクは、ディグのほうにクレジットを表示してしまい、短縮された転送先のページには行かないのだ。
ここで注釈をひとつ。ツイッターはツイートされたリンクはすべて、自動で「nofollow attribute」を付加する。これは検索エンジンに対し、そのリンクがランキングに影響する「投票」として数え入れられることがないように通告するための方式なのだ。ところが、ツイートの多くは、twitter.comのドメイン外にも頻繁に出てくるのだ。
そういった場所では、「nofollow attribute(またはタグ)」は使われていない。そうなるとツイートされたリンクは、検索エンジンから数え入れられてしまうので、URL短縮が転送先のページにクレジットを表示しないという問題がどうしても残る。
ディグは昨日のブログ投稿で、正しく行なわれていないリンクのクレジットにまつわる懸念が払拭されるように自分たちにできることはすでに着手していると説明した。SEOの専門家グレッグ・ボーザーはこの投稿を解明し、それでは道理に合わないと述べた。わたしも今日それを検分したところ、いくつかの問題が見受けられた。
1) noindexのタグを使って、ディグが短縮URLをつくったページが、グーグルなどの検索エンジンから発見されることを阻止することはできる。だが、リンクのクレジットが転送先のURLに行かないという問題はやはり解決されていない。それから一部には、noindexを使ったにもかかわらず、グーグルにリストされてしまったページがある。これもそのひとつの例だ。(そのソース・コードを見ると、ページにはnoindexタグやカノニカル・タグは見当たらない。もとをたどればディグバーがこのタグを付加しなかったようだ。これは現状の話だが、検索エンジンが追いつくには数日かかるだろう)。
2) カノニカル・タグをリダイレクトの方法として使うのはうまく行かない。というのは、このタグは検索エンジンから見ると「ヒント」と見なされていて、必ず従うべき義務とはみなされていないからだ。べつのドメインの場合もやはりうまく行かない(つまり、digg.comではdigg.comという自分のドメインを使わない指定をできないので、タグを使うと検索エンジンになにかを通告することになってしまう)。
3) 「ソースURL」という解決策をディグは提案しているが、これではなにも解決しない。どういうことかと言えば、ディグのホームページに載ってしまうと、そこからウェブ中にリストアップされてしまうのだ。たとえば、「デイリー・テレグラフ」の、目下人気の記事がある。
http://digg.com/d1oOii
ディグは短縮URLを使って、その記事に直接行けるようにする。その代わりにディグバーをページ最上部に表示させる。ところが、JavaScriptが動作しない場合(検索エンジンはこれで動いている)、ソースURLはこのように表示される。
http://www.telegraph.co.uk/scienceandtechnology/science/evolution/5131017/Egg-collected-by-Charles-Darwin-found-at-Cambridge-University-after-200-years.html
ディグが考えたのは、この長い「ソースURL」を検索エンジンに対し表示することで、長いURLにリンクのクレジットが行くというものだった。そうはいっても、ウェブにはありとあらゆる場所があるので、短縮URLはどのみち検索エンジンによって発見される。というのは、検索エンジンは標準のHTMLでリストアップし、そこにJavaScriptは介在しないからだ。
フレームという問題
1990年代後半は、フレームが大きな問題だった。よく知らない人のために言うと、フレームを使うと、ウェブ・サイトをほかのウェブ・サイトから持ってきたコンテントを自分のページに組み込むことができる。これはいろいろな理由で、嫌われてきた。これを使うと得てして使い勝手が悪くなる検索エンジンにも深刻な問題を引き起こし、コンテントを正しく発見することが困難となる。なかには、フレームを使っているサイトが、許可を得ないままその題材をそっくりコピーしているのは著作権の侵害だと考える人もいた
これらの問題から、フレームの使用はいったんほぼ消滅した。だがこんどはそれが復活したのだ。ディグがディグバーを使ったおかげで、その問題がむし返されることになりかねない。
昨年の10月、「スタンブル・アポン」がサイトにフレームを追加した。これはスタンブル・アポンのホームページでこのようなフレームバーを読み込めば、誰でもブラウズするのにこれを使えるというものだ。赤の矢印で示しているとおり。

12月には、フェースブックがフレームバーを使ってコンテントのフレームを追加した。これはサーヴィス内で投稿されたリンクをクリックすると現れる。これも赤の矢印で示しておいたので、ここで見てもらうこともできる。

アスク・コムは2月に検索結果をフレームに入れることをはじめた。赤の矢印で示しているのがフレームバーだ。これはアスクの検索結果をクリックしてウェブページに飛ぶと、このようにして現れる。

アスクが最初にこれを採用したのは、90年代のことだったが、その後フレームを取り除いたのはやはり、このような方式を取り下げるサイトが多かったからだろう。そしてまた景気の悪い時代がやってきて、ブラウザのウィンドウ上部になんとか付加価値を与えようとしてきたのだ。
もちろん、グーグルも「グーグル画像検索」サーヴィスでウェブ・サイトをフレームに入れている。たしかこれは最初に画像検索をはじめたときからこのやり方で何年もつづけてきたはずだ。

じっさい、これには訴訟も起こされていて、グーグルが勝訴している。にもかかわらず、グーグルにとってフレームを考え直すにはちょうどいい時期かもしれない。
それに、もしグーグルが検索結果からクリックでたどりついたウェブ・サイトを(アスクがそうしているように)フレームに入れようとしたら、ウェブ中が怒りで身を震わすことだろう。もっとも、そういうことはないと思うが--とはいえ、これはグーグルにはそうさせたくないと思うようなことだし、どのサイトだってそうさせたくないと思うようなことだ。
フレームバー対ツールバー
フレームの新しい波をつくりだしたのは明らかにディグではない。だがフェースブックやスタンブル・アポンがやってきたのよりもずっと大きな火を注ぐことになってしまった。わたしが思うに、URL短縮とフレームの組み合わせが、その危ない橋を渡らせるきっかけになったのだろう。フレームとツイッターの人気がかみ合ってしまったのだ。ツイッターではこの頃URL短縮を使う人が多数派だ。そのせいで、もはやフレームやフレームバーを止めることはできないのではないかという懸念も生まれているのだろう。
わたしはディグやフェースブックやスタンブル・アポンといったサーヴィスには共感する。フレームバーは便利だし、たしかにブラウザにツールバーをインストールするよりもかんたんだ。だがやはりそれはフレームだ。過去に経験したフレームにまつわるネガティヴなものをすべて持ち込むことになる。
わたしはできることなら、フレームバーに関してなにか産業共通の規準をつくったほうがいいのではないかと思う。たとえば、それを使うのなら、ブラウザのウィンドウの上ではなく最下部に表示して、サイトの発行者のじゃまをしないようにするとか。あるいは、ブラウザのウィンドウに表示されるURLが「ソース」のサイトであることを明示して、そのうえでフレームバーも表示するといった方法もあるだろう(わたしがフレームを使っていた時期からずいぶん経つので、これが可能かどうかは確信がない)。
サイトの発行者がフレームのコードを除去したいと思ったら使えるようなスクリプトをつくって、その一方で特定のサイト(ディグやフェースブック)からの訪問者には同様の機能をソフトウェア・ツールバーで利用できるように通知する、というやり方もあるだろう。あるいはべつのウィンドウで動作するポップアップのツールバーを使うとか。もっともポップアップ・ブロッカーはどうするという問題もあるが。
わたしには正しい答えはわからない。個人的には、いちばんかんたんなのは全員がそろってフレーム不要と言うことだ。ツールバーのような機能を使う熱心なユーザを集めたいというのなら、フレームバーではなく本物のツールバーをインストールしてもらえばいい。
ケヴィン・ローズがディグバーを語る
ディグはこの騒ぎをどう見ている? 「まったく、教えられるところの多い経験をしました」とローズは言う。「できるかぎりの手を打ちたいと思っています」
ローズは、ディグは最初、たんにツールバーをつくって、アクティヴ・ユーザの人たちがもっとディグのコンテントを活用しやすくなり、コメントしてくれたらと思った、と説明する。
「サイトに行くのにクリックひとつでできるような、それでいてディグらしい使い勝手も残るようなものをつくりたかったのです。それが、バーをいちばん目立つところに置くことの背景にあるアイディアでした」と彼は言う。
ツイッター短縮URLが人気になったことがきっかけで、ディグバーに短縮機能を追加したことをいまどう思うか。
「これをつくろうと考えたときのゴールは、『どこでも使えるURL短縮にしよう』というのではありませんでした。『ディグ・ユーザの使い勝手を向上させるようなツールにしよう』ということでした」
ローズによると、ディグの誰かがグーグルのソフトウェア・エンジニアと、グーグルにクレジットが行くようにする最良の方法はなにかと話し合ったという。それはブログ投稿にも書いてあるが、結局それが誰なのかはわからなかったという。これは言っておくのが妥当と思うが、その後すぐ、ローズがマット・カッツと話し合うことになったことから、誰のことか判明した。カッツはグーグルのスパム撃退班のまとめ役で、ウェブマスタ問題についてもよく知っている人物だ。
ディグバーの将来についてローズは、同社はフィードバックを集めて次の最善の道のりを決める、と言う。
「あらゆる手をつかってそれを明らかにし、皆で集まってこれをどうするか考え、誰にとっても意味のある解決策をもってこようと思います」と彼は言う。
ウェブマスタはどうする?
ディグがディグバーをやり直すというが、やはり心配だというウェブマスタはいる。URL短縮について書いた、わたしの元の記事にはフレームバーをブロックするのに使うコードがついている。ウィキペディアにも該当する項目があるし、ジョン・グルーバーの書いたコードもここにある。ところで、ディグバーが出てくる前から、わたしたちはこのコードをつけていた。これはフレームを阻止するのに最良の方法と言えるだろう。
もっとも、あなたのコンテントをディグ(やスタンブルやフェースブック)で利用しやすくなるというアイディアが気に入ったなら、フレームを使うのにとくに問題はないでしょう。
それでもわたしは、自分のサイトに短縮URLを使いたいのなら、主にそれが目的のサーヴィスで、301リダイレクトが使えるところにしたほうがいいと思う。