新聞におけるフリーミアム・モデルと、生き残りのアイディア

(This is a translated version of "Don Dodge on The Next Big Thing" blog post. Thanks to Don Dodge.)
新聞はウェブ・サイトを収益化させるのにうまい手が見つからない。これはグーグルが問題なのではなく、じっさい検索エンジンは最良の友達のはずだ。AP通信NYTのミゲル・ヘルフトに語ったのを引いてこよう。「釣り合いをとるのが難しいのです」と彼は言う。「わたしたちは、もっと払ってくれる相手がほしい一方で、検索エンジンから来るトラフィックもほしいのです」。新聞はウェブ・ベースの会社を見習って、フリーミアム・ビジネス・モデルを採用するのがいいだろう。これはコンテントを基本は無料(フリー)、そしてプレミアムのコンテントやサーヴィスを有料購読とするものだ。フリーミアムを主体にした会社のほとんどはユーザの2%から10%を有料購読に招き入れている。平均すると4%ほどだが、プレミアム・サーヴィスと価格帯によって変わってくる。
ここでひとつ、ニュー・ヨーク・タイムズでグーグルCEOのエリック・シュミットが語った言葉を引いてこよう。「シュミット氏は発行者に対し、さらにパーソナライズされたニューズ製品をつくり、ウェブ、携帯電話、その他の端末を利用して効果的に配達できるようにしたらいいと推奨する。『わたしたちが考えているのは、なにかビジネスを--そう、あなたがたとですよ--たとえばすぐれた広告媒体を利用して、やっていけたらと思うんです。コンテントにターゲットされた広告だとか』と彼は言う。発行者はつぎつぎとコンテントに課金することを検討しはじめていると彼は指摘し、新聞産業はそのうちにテレヴィジョンと同じように、コンテントの一部は無料だが、一部は有料購読で、一部は見るたびに毎回課金する方式になるのではないかと述べる。その一方で彼は、広告世界はオンライン・メディアの主要売り上げモデルでありつづけるだろうと述べた」
このニュー・ヨーク・タイムズの記事は「人はケーブル、音楽、オマケにはお金を出す。だがニューズはどうだろう?」と投げかける。この記事では消費者がどういったコンテントやサーヴィスにお金を出すかを指摘するものの、それがなぜなのかうまく説明していない。消費者が何に対しお金を出すか、それがなぜなのかを知ることは、あらゆるビジネスにとって決定的に大事なことだ。フリーミアムを成功させた連中は、それがよくわかっているのだ。NYTの記事にはそのすばらしい例がいくつか出ている。

1995年、ブリタニカ百科事典はオンライン購読を始め、7万人の有料の顧客を獲得した。だが1999年にブリタニカはその門戸を公に開き、インターネット広告ブームの優位を生かそうとした。2年後、かれらは方針を撤回し、現在はサイトの大部分に年間70ドルの接続料を課金している。2001年に課金を再開したとき、かれらは10か月で7万人の購読者を取り戻し、いまやその数は20万人にのぼる。
「ザ・フィナンシャル・タイムズ」のウェブ・サイトFT.comは2001年に100万人以上の登録ユーザを獲得している。半分以上のコンテントに接続料を課金しはじめたとき、FT.comは記事の多くをすべての人に公開しつづけた。「1年後、わたしたちは5万人の購読者を獲得しました」とFT.comの取締役ロブ・グリムショウは言う。8年後その数字は10万9000人にのぼりました、と彼は言い、それはサイトを訪れる読者の数からすればほんの一握りだという。

個人的には、ブリタニカ百科事典が毎年1400万ドルも購読料を集めていることに驚きを感じる。なぜって、ウィキペディアなどのウェブの情報源は無料なのだから。でもこれを見れば、わたしが今日言おうとしていることはよくわかるだろう。つまり、昨今のビジネスは複数のビジネス・モデルや課金形態を組み合わせる必要があるということだ。むかしは消費者をまとめてひとつのモデルに押し込めばよかった。だがそれはもうおしまいだ。すべてのビジネスは、顧客が求めていること、どのような製品やサーヴィスであればそれにお金を払ってもいいと思うか、理解しておく必要がある。無料ウェブ・サーヴィスや無料の新聞には成功した例がたくさんあるし、それはたいがい広告で成り立ってきた。そしてフリーミアムの会社、すなわち基本のサーヴィスは無料(フリー)で、プレミアムのサーヴィスや特典には課金する会社にも、例はたくさんある。購読も、毎回の課金も、やはり通用する。新聞はこのモデルを採用する必要があるだろうし、意味のあるサーヴィスを提供できれば、収益はまた戻ってくるだろう。
製造コストが新聞の首を絞めているのだ。わたしの住む町の新聞が印刷するのは、火曜、金曜、日曜だ。印刷と配達のコストは週7日のモデルを支えるには高すぎる。とある新聞は、毎日ウェブ・サイトを更新しているが、印刷するのは日曜版だけだ。「ボストン・グローブ」は日曜版の新聞を家庭配達にして、日常的にはプレミアムのコンテントに接続料を課金し、その購読料を一律に設定するというやり方を検討したいところだろう。国内ニューズ、ビジネス・ニューズ、スポーツ・ニューズはインターネットの多くのウェブ・サイトで無料で見られる。地方ニューズ、地元限定コンテントなどは多くの人がお金を出してもいいと思うものだ・・・それに、こちらのほうが広告もはるかに高い値がつく。新聞は自分の市場を細かくセグメントに分けること、売り上げの機会を最適化させること、が必要だろう。抵抗してもむだだ・・・のこされた時間は短い。