続・アップルの心理を読み解こうとする人たち

(This is a translated version of the "Gene Steinberg's Mac Night Owl" blog post. Thanks to Gene Steinberg.)
勘違いないでほしい。近しいパートナーや契約製造業者以外に、アップルの将来計画をほんとうに知っているという人は、アップルの外にはほとんどいない。ところが、あまりにも秘密を厳格にしているせいで、アップルはむしろ何も言わないことによってウワサに絶好の機会を与えてしまっている。アップルの口数が少なければ少ないほど、多くの人が口を開くことになるのだ。
最近アップルがヴェライゾン・ワイアレスと重大な交渉をしている、合衆国内でのAT&Tとの契約期間が満了したら、つぎのキャリアの契約を結ぶ予定で、2010年になるという話が出回っている。
パッと見では、信頼できそうな話だ。ヴェライゾンはオールテルの買収によって、合衆国内で第一位のワイアレス・キャリアに躍り出た。さらに有利なことに、ネットワーク品質や顧客サーヴィスがすぐれているという評判もある。じっさい、ヴェライゾンのほうがアップルのような会社と相性がよかったはずだという人もいて、いわく顧客にとって最高の使い心地を提供するという自負に裏付けられているからだという。
その一方で、ヴェライゾンはCDMA規準を採用している。世界でこれを採用している業者はかなり少数派だが、むしろAT&Tが採用しているGSMベースの製品をつくることで、アップルは世界中のありとあらゆるキャリアで動作するモデルを1種類つくるだけで済んでいた。
そうはいっても、ヴェライゾンがこれから世界中で採用の進みそうなLTE規準と相性がよいことも事実だ。ただし、その変更は2年ほど後になるだろうが。もしそれが実現すれば、アップルはヴェライゾンをキャリアのリストに入れることができ、しかもアイフォンのヴァージョンを2種類つくりつづける必要もなくて済む。
この産業では、アップル以外の人たちは何年にもわたって複数のヴァージョンの製品をつくりつづけることをやってきたのだ。アイフォンがさらに数百万台売れる可能性があるのなら、アップルが人の集まるほうへ参加することもありえない話ではない。だからわたしは「絶対ない」とは絶対に言わない。そうかと思えば、アップルは国内第4位のキャリア「Tモバイル」とのあいだに商談をまとめるかもしれなくて、TモバイルもやはりGSM規準を採用している。それでも、Tモバイルの契約者リストは、せいぜい3300万人というのが概ねの調査結果で、これではヴェライゾンとくらべてはるかに小さいし、3Gネットワークはあまり普及が進んでいない。
話を戻すと、アップルはいつでも将来のパートナーを求めて交渉をしている。それは疑いようのない話だが、だからといって契約が保留になっているとか、成立寸前ということではない。これはひょっとすると、ヴェライゾンの経営陣が、交渉の様子をメディアに流してしまったせいかもしれない。もしそうなら、ヴェライゾンは将来の顧客をだまして、アイフォンがそのうち出てくると思い込ませたという話にもなりかねない。だとすれば、アップルがヴェライゾンを見限ってAT&Tに行くような理由はないだろう。
それ以外の面では、アップルが製造業者と、一種のネットブックを組み立てる契約を結びつつあるという報道もすでに出回っている。ある記事では、10インチの画面が今年中にも出荷できるように注文されたという。
これが本当だとしても、アップルのネットブックがすぐに出てくるわけではない。もっともわたしはこれに似たようなものが出てくるだろうとは思う。たぶん、アイフォンのオペレーティング・システムが採用されることだろう。アップルがいつも自社の実験室で新しい製品の試作品に取り組んでいるのはご存知のとおりだ。かれらは多種多様の部品について製造可能量を情報収集していて、製品を発売すると決めたらすぐに判断できるように準備しているだけかもしれない。
だとしたら、アイフォンをベースにしたネットブックが開発中なのではなく、そこにあるのは従来型マックのポータブル・コンピュータによく似たものなのかもしれない。CDMAヴァージョンのアイフォンもそこにあるだろうし、わたしたちが夢見ているようなものはそこにいろいろあるだろう。
新しい製品がどれか出てくるのなら、そのときはアップルがひいきにしている大手の記者、たとえばニュー・ヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、ニューズウィーク、タイムと連絡をとるだろう。そうすると、かれらは発売前の製品や作戦について深い背景があることをアップルから聞き、アップルから直接聞いたとは言わない約束をすることだろう。
ウォール・ストリート・ジャーナルがスティーヴ・ジョブズについて書いた記事は、かれが6月後半にも戻ってくる計画であることを確約したかのようで、新製品について会社と頻繁にやりとりしていると信じさせるような口調だった。この記事はあちこちで引用され、これは本当だと受け取られているが、これはアップルがほぼすべてを明かして、だが口止めをしたせいだと思われている。
このような記事を読むと、心理を読むとかそういう話ではないことがわかるだろう。電話がかかってきたとか、誰かからこっそり聞いたとか、そのどちらかだろうし、それがなぜ行なわれたのかはべつだん精神分析の才能などなくてもわかる。それはアップルのマーケティング戦略の重要な一部なのだ。
ついでに言うと、もし新製品の詳細がアップルのサイトにほんの一瞬だけ載るということが起きたら、不手際があったのだとあなたは思うだろうか。それとも、そのようなものが突然出てきたと思ったらすぐに消えてしまうこともあると思って、サイトに出てくるものはすべて見回りしている人がいたのだと思うだろうか。