WWDCが終わって III: よかったこと、悪かったこと

(This is a translated version of "The Mac Night Owl" blog post. Thanks to Gene Steinberg.)
アップルのイヴェントで期待がおおむね満たされたら、あなたは喜ばずにいられないだろう。というか、それは控えめな言い方だろう。スノウ・レパードを考えてみよう。いつからだったか、わたしは同業の仲間たちとそろって、アップルはレパード・ユーザのためにアップグレード・ヴァージョンを通常よりずっと安い値段にするべきだと提案してきた。わたしなりの理由は、たしかに新機能はあるのだが、スノウ・レパードはだいたいにおいてバグ修正と無駄を削ぎ落とすことが目的のヴァージョンなのだから、通常のアップグレードの値段をつけるようなものではないというものだった。
たしかに、スノウ・レパードの新機能といっても全部わかっているわけではないと言う人もいる。アップルはひそかに、「マーブル」と呼ばれる新しいインタフェースのモチーフに取り組んでいて、それ以外にもイカしたものがWWDCで披露されるかもしれないというのだ。なるほど、ディヴェロッパは今週10.6のデモ版が出たあとで、最終ベータ版を入手したのだが、新機能というのは、もうどこかで読んだことのあるようなものばかりで、せいぜい目立たない機能強化だとか、マイクロソフト・エクスチェンジへの完全対応くらいのものだった。インタフェースへのてこ入れもあるし、「ファインダー」もキビキビ動くけれど、10.5の発売時に宣伝された300の新機能と並ぶようなものではなかった。
それに加え、アップルは横を眺めれば手強い競争相手、ウィンドウズ7がいるのだ。たしかに、ウィンドウズ・ビスタにアップグレードをしたところで、だいたいにおいて先代の改良と、あとはちょっとした目を惹くアメ玉で、なんだか新しいそうでちょっと違うぞと思わせる程度のものだと言ったほうがいいのかもしれない。だが、マイクロソフトがこれは全面的な改良だ、パーソナル・コンピューティングの将来への道のりだと強がっているのはあなたも知っているとおりだろう。
ビスタにアップグレードするのに実際いくらかかるのか、わたしたちは知らない。もっとも、的外れな値段のそのリストには、「ホーム・プレミアム」というのがあって、これはいちばん普通の個人ユーザが買うヴァージョンだが、アップルが課金している29ドルの約2倍ほどになるのだ。
もしあなたが「アルティメット」ヴァージョンを手に入れて、すべての機能を使えるようにしたいと思ったら、さらに支払うことになるのだ。それに対し、クライアント・ヴァージョンのスノウ・レパードはご存知のとおり、ひとつのパッケージで全部が入っている。
そのほかに期待できる進展とは、アップルが13インチのユニボディのマックブックを、マックブック・プロと名前を改め、15インチ以上のものに載っていた「ファイアワイア800」を搭載してきたことだ。それに加えて値段が下がったことは、購入を検討している人にとって、相当な魅力を追加したことだろう。その一方では、「エクスプレス・カード・スロット」がなくなったことは一部の人に否定的にとられたかもしれない。その人たちはこの機能を得るには17インチのマックブック・プロを買わなければならないからだ。アップルが言うには、この拡張スロットを気にするのはほんのごくわずかのユーザだけだというが、でもまだわからない。
いずれにしても、マイクロソフトによるラップトップ広告キャンペーンはますますひどくなっていていくようだ。マックとPCはいままでだいたい同じくらいの値段だったと言う人もいるかもしれない。だがアップルに言わせればものごとは変わったし、その小手先の見せかけはもはや我慢の限界を超えつつある。アップル税なる評判は、もはやこれまでにないほど説得力がなくなっている。
アイフォンについて言えば、3G Sの発表は、驚くほど控えめであった。多くの人はスティーヴ・ジョブズがちょっとだけでも出てくると期待していたし、彼が「ワン・モア・シング」としてなにか新しい製品を発表するのではないかと期待していた。これが実現しなかっただけでなく、アップルは期待をはるかに上回る早さで、これを市場に出してくるようだ。同じ本体デザインをとったことが功を奏したのと、内部が改良されたことは、新しく性能の上がった部品を採用したにもかかわらず値段が下がったこともあって、期待にうまく応えることとなったのだろう。
もっとも、3Gから3G Sに換えるというのは、多くの人にとってはさほど急を要するアップグレードではないかもしれない。ストレージの容量をどうしても増やしたいとか、ヴィデオ録画もできるカメラがほしいとか、3Gからのダウンロードがもっと速ければというのでなければ、いまのアイフォンを使っていてもべつに気にならないことだろう。実際問題として、アイフォン3.0ソフトウェアが約束通り性能向上に寄与すれば、それだけでもずいぶんよくなるだろうし。
それからわたしが惹きつけられたのは、予想されなかったことではないが、99ドルのヴァージョンを出すという決断と、8GBヴァージョンも改良されたという事実である。というのは、これこそが多くのユーザがほんとうに必要としている携帯電話だと思うからだ。さらに興味深いことは、アップルはパームの仕掛けた挨拶がわりの一撃に対し、大砲で打ち返したことで、とくに値段を下げてきたことは直ちに効果が上がるだろう。パーム・プレは同等のストレージ容量であるにもかかわらず、値段は2倍だからだ。
パームはいま、包囲網を敷かれた会社であり、プレの値段を下げて対抗しなければならないとしたら、財政的には相当きびしい時期をくぐりぬけることになるだろう。たしかに、パームにとって唯一のワイアレス・パートナーであるスプリントは、この損失の大部分、あるいは全部を肩代わりしてくれるかもしれない。だがアイフォンの販売が急速に伸びれば、それはこの競争にも相当な影響を与えることだろう。これは請け合ってもいい。
ではわたしはいま使っている16GBのアイフォン3Gをアップグレードするか。たぶんしばらくは決断を先延ばししたいと思う。知っていると思うが、AT&Tは既存の顧客に、2年契約を更新するように期待している。だがもしあなたが1年未満で現状の契約を解約すると、200ドルの違約金を払うことになる。これはどのアイフォンを選んだとしても同じことだ。第一世代のをもっている人は気にする必要はないだろう。初代を購入した人が払った値段には奨励金が入っていないからだ。
それでも、わたしはAT&Tは現状の契約が18か月を過ぎているのであれば、違約金なしでアップグレードができるのという話をどこかで聞いた。そうなると、わたしの場合は2010年1月中旬にその時期に達する。まあ、それまで待とう。その頃になれば、たとえばインターネット接続に障害があったとき、アイフォンを使ってマックブック・プロでオンライン接続できるようなつなぎの機能が出てくるかもしれない。
フィル・シラーと数人からなる、WWDCキイノートに登場してきたアップル経営陣は、スティーヴ・ジョブズのようなカリスマはないが、じつはわたしのお腹を満たしてくれるようなものを十分出してくれた。賢明な読者、あなたはどうですか?