オックスフォード大学ワクチンの治験から、医薬品開発を知る

オックスフォード大学が新型コロナウイルスへのワクチンを開発することで、製薬会社のアストラゼネカと協働に入りました。
7月には英国の医学雑誌「ランセット」の論文で、その過程が公表され、現在のところ治験のフェーズ1に進んでおり、安全性の確保がされたうえで、免疫系の働きを促進する薬品の臨床試験が進捗過程にあることが判明しています。
この治験には健康な成人の方が選ばれ、1000人以上がワクチン「ChAdOx1nCoV-19」の接種を受けました。その様子については、実際に治験者になった男性(リチャード・フィッシャーさん)の手記がBBCのウェブサイトにも公開されています。読むと赤裸々な内情も打ち明けられていて、
もちろん副作用についても、70%の方において発熱、頭痛の訴えがみられたそうです。
では、そもそもワクチンを開発するとは何なのか、私は十分な知識がなかったので、この機会に少しだけ学んだ成果を共有します。

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COVID-19のワクチンを早急に開発する必要がある

では、いつまでにワクチンを開発すればいいのか

ワクチンとはなにか

副作用はないのか

ふつうのワクチン開発にはどのくらい時間がかかる

新薬とは

スクリーニングとは

臨床試験とは

フェーズとは

開発にかかる費用は

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COVID-19のワクチンを早急に開発する

ワクチンとはなにか

感染症の予防に用いる医薬品。病原体から作られた無毒化あるいは弱毒化された抗原を投与することで、体内の病原体に対する抗体産生を促し、感染症に対する免疫を獲得する。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ワクチンja.wikipedia.org

副作用はないのか

たとえば、2000人に1人がおたふくかぜのワクチン接種で無菌性髄膜炎に罹患するという場合、その副作用の割合は0.05%です。コロナウイルスのワクチン開発では、オックスフォードの治験で70%の割合で発熱、頭痛症状がみられたとのことで、その割合が多いか少ないかという話になります。まったく副作用のない薬とは、病気を治す効き目もほとんどない薬という意味になってしまうので、医薬品ではそのバランスをどこに定めるかがきわめて重要な基準になると思われます。コロナウイルスに関しては、重症率や死亡率は低いものの、感染する力が強くて、重症になる際の容態が予測困難なことが問題になっています。そうすると、ワクチン開発にもやはり、おたふくかぜのワクチン程度とはいかず、ある程度の副作用を織り込んだ開発にならざるを得ないということだと思われます。

新薬とは

医薬品開発のこと。

前臨床(動物実験)から実際に人に投与して有効性と安全性を確認する臨床試験までの過程のことである。前臨床開発(ぜんりんしょうかいはつ)は、リード化合物の段階から臨床試験を行うために必要な検証を完了するまでを指す。

https://ja.wikipedia.org/wiki/医薬品開発ja.wikipedia.org

スクリーニングとは

ターゲットとなる集団に対して実施する共通検査によって、目標疾患の罹患を疑われる対象者あるいは発症が予測される対象者をその集団の中から選別することをいう。

https://ja.wikipedia.org/wiki/スクリーニング_(医学)ja.wikipedia.org

フェーズとは

第1相から第4相の試験をフェーズI、フェーズII、フェーズIII、フェーズIVといった区分で行なうことで、医薬品開発の承認にまで適切かつ迅速に到達することが目的です。前臨床試験に対し、本臨床試験ともいえます。
日本では、厚生労働省への届出がないと、臨床試験は行なうことができず、その点で安全性の担保が裏づけられる一方、手続きに時間がかかるという難点もあります。

開発にかかる費用は

世界中では・・・
80億ドル程度
DiMasi J, "The value of improving the productivity of the drug development process: faster times and better decisions",Pharmacoeconomics, 20 Suppl 3, pp=1-10.
日本では・・・
製薬協(日本製薬工業協会)が公表している数字があります。

英文名称 Japan Pharmaceutical Manufacturers Association、略称製薬協・JPMA)は、新薬メーカー等、研究開発志向型の製薬会社による業界団体。

https://ja.wikipedia.org/wiki/日本製薬工業協会日本製薬工業協会 - Wikipedia

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新薬開発費用(平成14~平成22年)

出所:http://www.jpma.or.jp/about/issue/gratis/guide/guide12/12guide_08.html

あとがき

感染症の治療薬は、病原体が入って体内で増殖をはじめている状態を、可能なかぎりその進行を遅らせ、身体が自らの免疫機構を生かして細菌、ウイルスを退治するための後方支援という役割だと考えられます。では、その効き目はどの程度にするのか?スピード制限なしでは身体がかえって弱ってしまうことがあるので、その微妙な調整が大事になる。でも、感染症は次々と感染者を伝って生き残ろうと伝染、変質していく。そのかけっこに対処する。新型コロナウイルスは、こういった感染症の治療薬の可能性を、世界規模で人類が共有するという、きわめて珍しい事例になったようです。オックスフォード大学、アストラゼネカというすでに確立された組織が、歴史的にも稀な事例、見たこともない社会現象に立ち向かう。伝統と、革新の意味について、容赦なく人類に問いかけているのがCOVID-19ということなのかと思いました。
なお、このまとめは一般人が個人の領分で集めることができた、すでに公表されている情報に基づき研究した成果を共有することを目的としています。正確性について、全部を保証することはできかねますので、お含み置き下さい。