レムデシビルとヒドロキシクロロキン10

前回は抗生物質の深堀りを進めました。アジスロマイシンが、ヒドロキシクロロキンとの併用で有効な治療結果を生んでいるとの研究も発表されて、ますます気になる抗生物質。では、たんぱく合成阻害薬であるマクロライド系抗生物質は、やはり現在の医療においては有望な抗ウイルス薬候補なのか?

インフルエンザに効くという点で、広範囲ペニシリンマクロライドは共通項があることがわかりました。
では、インフルエンザウイルスに効果があったマクロライドが、新型コロナウイルスにも効果を発するのか。
インフルエンザウイルスの増殖を阻害する薬品としては、「どこ」を阻害するかによって種類があって、出芽、脱殻、核酸合成といった感染サイクルの段階を考慮するとうまく理解できるようです。
核酸合成阻害薬としては、ファビピラビル(アビガン)が定評がありますが、今回の新型コロナウイルスに動員されたものの、レムデシビルやヒドロキシクロロキンにくらべて、やや旗色が悪いようです。

少し話を戻します。

リファンピシンの作用機序

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リファンピシン


抗生物質のなかで、核酸合成阻害薬としてはリファンピシンが挙げられます。リファンピシンは

RNAポリメラーゼに結合して、mRNAへの転写を阻害

という作用機序があります。

病原体の増殖を阻害できる一方、ヒトのRNAポリメラーゼには結合しにくいという性質から、大事な役割を果たしてきました。
とくに、結核への治療には定番とされて、20世紀にはヒトの死因の上位に並んでいたこの病気を、先進国にあっては相当に対策してきた部分があります。
リファンピシンが、結核に使われてきた。核酸合成を阻害する抗生物質
何か、ヒントがありそうな気が・・・。

RNAポリメラーゼについて少し調べてみました。

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RNAポリメラーゼによる転写


細菌の細胞が増殖するとき、

DNAの一部がほどける→複製

こういったプロセスが発生します。
こちらを阻害する場合は、同じ抗生物質でも、キノロン系の「ナリジクス酸」や「オフロキサシン」などがDNAジャイレースやトポイソメラーゼIVに干渉して阻害する。
それに対し、RNAポリメラーゼは上にあるWikipediaの図のように、RNAが一本になっている、転写の過程を指し示しています。この、注釈にあるような、一本鎖というあたりがポイントかと思われます。「鋳型鎖」と「非鋳型鎖」のうち、鋳型鎖が転写の対象となる。
むずかしいですね。とにかく、リファンピシンはこのRNAポリメラーゼに結合する

リファンピシンと組み合わせて検索されたワード

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リファンピシンと組み合わせて検索されたワード

Yahooにおいては、「カプセル」「副作用」「空腹時 理由」が上位に、Googleにおいては「効果」「分類」「系」が上位に入っています。

「リファンピシン 結核

結核への対策に役立った核酸合成阻害薬が、ウイルスの増殖にも役立つということはないのだろうか・・・。

アビガンのことを調べたときにわかったことですが、副作用として催奇形性があって、妊娠している方には投与することが困難という事情がありました。
やはり、リファンピシンも副作用があるのですが、妊娠している方に投与できないのでしょうか。
少し調べてみると、どうやら相互作用が干渉しているのかな、と思いました。

リファンピシンは薬物代謝控訴であるCYP3A4の誘導を行うため、この薬物相互作用に対して注意を要する

https://ja.wikipedia.org/wiki/リファンピシン


そうすると、やはり単独で治療に足りるような病気がリファンピシンの出番ということになるのでしょうか。結核ハンセン病

新型コロナウイルスが流行して、死亡率が比較的高い地域と、比較的低い地域があることはすでに十分に伝わっている事実とは思います。しかし、その原因については、十分に伝わっているとは言えず、このように死亡率にへだたりが生じてしまうことも、COVID-19治療薬の特定が難航していることの理由のひとつかもしれません。
一部に伝わっているのは、BCGの接種が行われた地域において、死亡率が低くなる傾向です。これは結核の予防を意図した公衆衛生の取り組みですが、日本で死亡率が目立って低い推移をつづける要因として、BCGの存在感が強まってくれば、結核の治療に用いられるリファンピシンと、RNAポリメラーゼとの結合を通じてmRNA合成の阻害という作用機序をもつ同様な薬物が、やはり存在感が強まるのでは?
このあたりに、レムデシビルが先行している要因かもしれません。レムデシビルは、RNAポリメラーゼに干渉してウイルスの増殖を阻害する薬物ですから、結核治療薬として通用しているリファンピシンとの共通項があります。

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レムデシビルの作用機序

レムデシビルの作用機序をみると、RNA鎖の合成を終わらせるのか、突然変異を引き起こすのかは不明、だそうで、リファンピシンと通じるところがある一方、具体的には「どこ」を阻害するのか解明されるには至っていない。

その一方では、ヒドロキシクロロキンがアジスロマイシンと併用され、早期に投与された場合の顕著な効果も発表されています。
なぜ、ランセット誌の撤回論文では併用した場合の死亡率が目立って高い数字になったのか、撤回されたとはいえ、同様の治療結果が同時期に出ていて、やはりクロロキン類とマクロライド系が併用されるときの注意すべき点があることは容易に想像がつきます。

レムデシビルとヒドロキシクロロキン

レムデシビルは抗ウイルス薬、ヒドロキシクロロキンは抗マラリア薬とそれぞれの守備範囲があります。それがCOVID-19という社会現象のなかで、不思議なほどに近接してきた経緯を、歴史の偶然というか、ある種必然とも感じているのは、筆者だけではないと考えます。

あとがき

これらを読み解くことは、レムデシビルにしてもヒドロキシクロロキンにしても、COVID-19への治療薬としての地位を獲得するまで、大事な過程になると筆者は考えています。
次に考えて行きたいことは、RNAポリメラーゼと、mRNAへの転写というあたりになると思います。ウイルスのなかにあるのは核酸で、核酸のなかにあるのはmRNAへの転写という機能だからです。

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レムデシビルとヒドロキシクロロキン 9

前回まで、抗生物質のなかでも、ペニシリン系とマクロライド系に触れてきました。
COVID-19の20年初期においてヒドロキシクロロキンとの併用で治療に用いられたのは、マクロライド系です。

なぜ、併用されたのか

マクロライド系の抗生物質が、クラミジア肺炎に用いられることが多く、とくにアジスロマイシン(商品名「ジスロマック」)が通販でも買われるほど普及していることがわかりました。
アジスロマイシンも、ヒドロキシクロロキンも、病原体の増殖を阻害するという機能が共通項としてあります。
併用する意図は、それぞれの阻害する過程が違うことにあるといってよく、マクロライド系抗生物質は、たんぱく合成を阻害します。
ヒドロキシクロロキンは、作用機序という観点でいくと、「どこ」を阻害するのか解明され尽くしたとは言えないので、マクロライド系抗生物質との関係は「補完的」もしくは「重複的」である可能性がどちらもあります。

細胞毒性とは

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細胞毒性とは

むずかしいですね。何回も読んでみましたが、まだわかりません。
細胞毒性とは、「細胞に対して死、もしくは機能障害や増殖阻害の影響を与える、物質や物理作用などの性質」(Wikipedia)だそうです。

増殖阻害とは、病原体が増殖するのを抑えるという意味でよかったと思いますが、どの過程を阻害するかが不明瞭です。

ヒドロキシクロロキンの使い方は意外なことに未解明

ヒドロキシクロロキンの使い方は、こうしてみると、その普及の広さにくらべて、あまり広く共有されてきたとは言えないようです。
だからこそ、これだけ様々な説が提出され、検証され、また別の説を呼び込むわけですが。
COVID-19が流行する速度に、治療薬の策定の速度が追いつけるかどうか。いま考えるべきことはそこだと人類は認識しているはずです。しかし、誰がそれを策定するのか。これが決まっていないと、ものごとはかんたんには進まない。こう考えています。


抗生物質とは、抗菌薬であり、このうちペニシリンは「細胞壁合成阻害薬」に分類されます。ペニシリンにも種類があり、天然ペニシリンと広範囲ペニシリンに分類されます。

どの細菌に効くのか

これは、相当に奥深いので、表を自分なりに作成してみました。薬理学の基本書をいくつか読むかぎり、このかたちで合っているとは思いますが、正確性について全部を保証しかねますので、お含み置きください。

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ペニシリン抗生物質と、マクロライド系抗生物質


球菌に効く、淋菌に効く、梅毒トレポネーマに効くという共通項はありますが、「天然」では破傷風菌や髄膜炎菌に効くのに対し、「広範囲」では大腸菌インフルエンザ菌に効くという違いがあって、これはけっこう大事な違いではないかと思いました。
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同じ表に入れてみたのですが、マクロライド系のクラリスロマイシンも、インフルエンザ菌に効くという共通項があります。
これは少し調べてみると、抗生物質の発展の歴史が関係しているようです。

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抗生物質の発展の時系列

このように、ペニシリンの発展が40年代、70年代という大きな戦争(第二次大戦、ベトナム戦争)の時期にかかわっている一方、クラリスロマイシンは90年代、アジスロマイシンは2000年代に出てきています。
インフルエンザが流行することが多くなったのは、海外旅行の発展ともかかわりが深いとされています。
そうすると、ペニシリンの有用性を「巨人の肩」として拝借し、マクロライド系の興隆があったと考えてみるのも、参考になるかもしれません。
インフルエンザに効くマクロライド系抗生物質が、COVID-19の治療に試されたのは、意外と偶然ではないのかもしれないと思いました。

レムデシビルに追いつくか、ヒドロキシクロロキン

ところで、レムデシビルとヒドロキシクロロキンの歩みをみてきたなかで、新たな展開がありました。

www.sciencedirect.com


これは、ヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンの併用が、一定の条件で有用であったとする研究成果です。
どう有用だったのかといえば、重症化してICUに入る前の併用では、死亡率の低下がみられたという結果です。

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Hydroxychloroquine and azithromycin as a treatment of COVID-19
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ヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンの併用で得られた治療過程

13日に発表されたばかりの査読論文で、この論文の影響が強まるとしたら、まだこれからだと思われます。

「ヒドロキシクロロキン アジスロマイシン」

Yahooで「ヒドロキシクロロキン アジスロマイシン」と検索してみると、上位1ページ目にはこのようなアドレスが出てきました。

f:id:aki1770:20200814154446j:plain
Yahoo検索「ヒドロキシクロロキン アジスロマイシン」上位10件

これを内訳で覗き込んでみます。

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10件に対するpdfの割合
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10件に対する.or.jpと.go.jpの割合

どうやら、学術団体あるいは医療関係の機関が提供する、論文の割合が多くなっています。
これは、もちろん今年に入ってからの論文が大半で、これまでにこのような組み合わせで研究がなされた実績が少ないことがわかります。

参考:ツイート数からみるレムデシビルとヒドロキシクロロキン

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レムデシビルとヒドロキシクロロキンのツイート数

あとがき

レムデシビルの新薬申請で決着ありか、とも思われたヒドロキシクロロキンとのレース。まだ審判は動かないようです。誰が審判なのか、それもわかりませんが、アジスロマイシンが2000年代に興隆した抗生物質なので、20年代になった現在、その作用が解明され、ヒドロキシクロロキンの作用にもヒントが浮かび上がるのかもしれません。
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レムデシビルとヒドロキシクロロキン 8

前回はクラミジア肺炎との係わりで、抗生物質が果たす、新型コロナウイルス治療への道筋を考えてみました。抗生物質にも色々ありますが、掘り下げていきます。

マクロライド系抗生物質と組み合わせて検索されたワード

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マクロライド系抗生物質と組み合わせて検索されたワード

Yahooにおいては「一覧」「市販薬」「副鼻腔炎」が上位に、Googleにおいては「コロナ」「副作用」「副鼻腔炎」が上位に入りました。
前回のアジスロマイシン、前々回のクラリスロマイシンはマクロライド系抗生物質に分類されます。ヒドロキシクロロキンは抗菌薬のひとつで、それとともに抗生物質を投与する場合、主な目的はどこにあるのでしょうか。

クロロキン類は抗マラリア薬として長らく用いられてきた経緯があって、その点からマラリア原虫(真核生物)に効く抗菌薬と分類するのが普通のようです。真核生物は細菌の一種で、ウイルスとは異なります。
ウイルスによる感染症であるCOVID-19は、クロロキン類で治療することが可能なのか。
病原体の増殖を阻害することで回復を助けるという役割でみれば、可能な場合もあるといえます。
ただ、今回の新型コロナウイルスは肺炎の一種という位置づけにされて、その点でクラミジア肺炎などに効き目が認められていたマクロライド系抗生物質との併用で治療されたのが、結局遠回りになってしまった部分があります。
ランセット誌の撤回されてしまった研究論文は、対照群にくらべてクロロキン類投与患者の死亡率が目立って高かったので、これが信憑性を疑問視され、確たる裏づけを得られなかったので数字が不適切という結論になりました。
しかしながら、多数同時期に発表された研究論文では、ヒドロキシクロロキンとマクロライド系抗生物質の併用が必ずしも好ましい成果を得られていない点で共通項がありました。
ということは、真核生物に対処するための治療薬がウイルスに効くのか? という問題がまずあって、それに加えて肺炎の治療に使われる抗生物質が組み合わせられることの意義が不明瞭になる問題。
かんたんな問題ではありませんが、考えてみるだけの意味はありそうです。

抗生物質

抗生物質について、ここであらためて浚いだしてみましょう。

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ペニシリン Wikipediaより

抗生物質の役割をおおいに知らしめた「ペニシリン」。これを抜きに抗生物質を語るのは難しいと思います。

ペニシリンと組み合わせて検索されたワード

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ペニシリンと組み合わせて検索されたワード

Yahooにおいては「とは」「系抗生物質」「バンド」が上位に、Googleにおいては「作り方」「仁」「結核」が上位に入りました。
個人的に気になったサブワードがありましたので、少しここで触れておきます。
ペニシリン 発見 偶然」
この「発見」と「偶然」ですが、じつに興味深いエピソードなので、ここに共有したいと思います。
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-0818627www.kinokuniya.co.jp

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『歴史を変えた10の薬』紀伊国屋書店ページより

今年日本語訳が出版された『歴史を変えた10の薬』(トーマス・ヘイガー著、久保美代子訳)には、サルファ剤の話が出てきます。戦争中にドイツで感染症への治療に尽力して製薬会社バイエルの躍進にも一役買ったゲルハルト・ドーマクの話です。サルファ剤も大事な薬品になりましたが、同時期にロンドンで見つかった薬品の話が、より強く興味を惹きます。
https://www.youtube.com/watch?v=OoXb3Bosud8

ドーマクがバイエルに新薬発見のために採用されたころ、ロンドンのある研究所で働いていたスコットランド人が、奇妙なものに気づいた。1928年にアレクサンダー・フレミングは、培養プレートの上で細菌を培養していたが、どこからか入りこんだカビにサンプルが汚染されているのをみつけてがっかりした。けれども、このカビはどこか奇妙なところがあった。そのカビをどこで繁殖させても、その周りがきれいに、菌のいない領域になり、菌の立ち入り禁止区域のような部分が生じるのだ。そのカビが菌を止める何かを発しているようにみえた。フレミングはその働きをしている物質を純化しようと試み、「カビのブロス」と彼が呼ぶものについて試験した。それが、現在私たちがペニシリンという名前で知っているものである。けれども、活性のある成分は分離して新鮮に保つことが非常にむずかしく、フレミングはとうとうこのプロジェクトを打ち切った。そして、別のものに注意を向けた。当時多くの科学者が注目していたもの。サルファ剤だ。
 その後のサルファ剤の成功は、ほかの研究者をさらなる「魔法の弾丸」となる薬の研究に引きもどした。フレミングペニシリンもそのひとつだ。第二次世界大戦中、サルファ剤よりもっと多くの種類の細菌に効果を発揮する何かをみつける必要性に駆られ、科学者たちはペニシリンを大量に生成し、製造し、保管する方法をみつけだした。戦争がまもなく終わろうとしている時期に、この薬が広く利用できるようになると、ペニシリンは急速にサルファ剤を脇に追いやった。ペニシリンはより多くの種類の菌に対して効果があり、梅毒や炭疽熱など、真菌からも、ストレプトマイシン、ネオマイシン、テトラサイクリンをはじめその他数十もの殺菌性の化学物質がみつかった。

ペニシリンと、サルファ剤が同時期に偶然発見されたことは、ヒドロキシクロロキンと、マクロライド系抗生物質の作用を考えるうえで、なにかヒントになるかもしれません。
COVID-19は決定的な治療法が見つからないなか、全世界にその脅威が知られるに至った、感染症です。
ヒドロキシクロロキンにしても、マクロライドにしても、別々の特効薬になっていました。それが急遽動員されて、ただちに主役になるというのは、たやすいことではありません。
では、望みがないのか。そう考えるのは気が早い。現状では、ヒドロキシクロロキンの有用性が疑問視される向きが根強く、一方ではレムデシビルが新薬申請されるという前進を遂げ、これで決着ありか、という印象も強まってきました。

あとがき

今回の考察では、レムデシビルとヒドロキシクロロキンは、何かしらペニシリンとサルファ剤の並立関係になぞらえることができるのでは、と思ったことがきっかけです。
もう一歩進めればと期待していますが、現状ではヒントが十分に揃わず、その場で足踏みといった具合です。

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レムデシビルとヒドロキシクロロキン 7

前回は視点を変えて新型コロナウイルスクラミジア肺炎の双方に投与された抗生物質について探りました。もう一歩、先に進めればと思い、調べ物を継続します。

ツイート数からみるレムデシビルとヒドロキシクロロキン

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レムデシビルとヒドロキシクロロキンのツイート数

レムデシビルは日本語については「24時間で70件」英語については「2時間で50件」という数字、ヒドロキシクロロキンは日本語については「24時間で70件」英語については「2時間で270件」という数字でした(8月12日13時現在)。

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クラミジア肺炎と組み合わせて検索されたワード

クラミジア肺炎と組み合わせて検索されたワードは、Yahooにおいては「症状」「感染経路」「検査」が上位に、Googleにおいては「検査」「ct」「ジスロマック」が上位に入りました。

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レムデシビルと組み合わせて検索されたワード

レムデシビルと組み合わせて検索されたワードは、Yahooにおいては「添付文書」「株式会社」「入手方法」が上位に、Googleにおいては「副作用」「承認」「添付文書」が上位に入りました。

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ヒドロキシクロロキンと組み合わせて検索されたワード

ヒドロキシクロロキンと組み合わせて検索されたワードは、Yahooにおいては「通販」「製薬会社」「コロナ」が上位に、Googleにおいては「副作用」「硫酸塩」「添付文書」が上位に入りました。
さて、サブワードで個人的に興味を惹かれたものがありますので、少し触れておきたいと思います。

「ヒドロキシクロロキン アジスロマイシン」

Yahooで10番目

これは、前々回で見ていた、マクロライド系抗生物質との併用です。賛否両論の末、学術論文の撤回になった「ランセット」掲載研究なのですが、具体例として、クラリスロマイシンとともに記載されていたアジスロマイシン。この抗生物質クラミジア肺炎のサブワードにも登場しています(Googleで3番目)。

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アジスロマイシンの関連文献の推移

アジスロマイシンはよく知られているのか

JST科学技術振興機構)の「J-GLOBAL」サイトの統計情報(https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907014382733739
をみると、「アジスロマイシン」は1990年代から関連文献が安定して伸びており、年間200件を超えたのが2001年、400件を超えたのが2014年、600件を超えたのが2017年、800件を超えたのが2017年、1000件を超えたのが2018年です。

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アジスロマイシン

このように、研究はさかんに行なわれており、抗生物質を通販で買う方の需要として、「ジスロマック」がGoogle検索でもクラミジア肺炎との組み合わせで登場しています。

アジスロマイシン、効くの?

気になるのは、その効き目と副作用です。
クラミジア原核生物のうち、ウイルスにもっとも近い性質をもち、抗生物質であるアジスロマイシンはこの細菌に効き目があると一般に判定されています。ウイルス性のかぜにも投与されることがあります。

アジスロマイシンの作用機序は?

その作用を考えてみます。
抗菌薬、抗ウイルス薬は菌やウイルスの増殖をどこかの段階で阻害することで、身体がみずからの免疫機能を正常に働かせる下地を整えます。この、アジスロマイシンはどこを阻害するのか?
たんぱく合成です。詳しくは、細菌に吸着、内部に侵入。たんぱく合成の「リボゾーム」(70S)を構成する「50S」との結合を図り、たんぱく鎖の活動を阻害する。そうすれば、細菌が増えようにも、構造的に不可能になります。
なるほど・・・。
こういう薬が、クロロキンあるいはヒドロキシクロロキンと一緒に投与されたのか。新型コロナウイルス、おそらくはインフルエンザと近いと判断されたのかもしれません。
実際にはインフルエンザウイルスと、新型コロナウイルスは決定的に違う点があって、たんぱく鎖が「プラス」か「マイナス」かというところだとWikipediaにも記載されていました。

自分でまとめた、こちらの記事にも少し触れてあります。
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そうなると、研究がさかんに行なわれて、臨床実績もある「アジスロマイシン」が、結局インフルエンザには効いても、新型コロナウイルスには行き届かなかった可能性も考えられます。
ランセット」誌の研究では、ヒドロキシクロロキンとアジスロマイシン(などマクロライド系抗生物質)の併用では患者さんの死亡率が対照群を上回ってしまったので、その危険性が注目を集めることとなってしまいました。

あとがき

もとはといえば、このような経緯があって、十分な時間をかけた、臨床試験を通過した裏づけのある、抗生物質。問題はそれ自体が効くか効かないかというよりは、用法、用量だったと考えることで、次の治療可能性を探る作業に進めるのではと思います。
近日公開された治験データをみると、どうやらヒドロキシクロロキンは早期投与するか、しないかで大きな差が生まれるようです。「ランセット」誌で撤回されてしまった、くだんの論文ではそこが不明瞭で、アジスロマイシンとの併用が危険という結論に先走りするよりは、もう少し治験のデータを待つことで何かが開けるのでは・・・という筆者の感想で今回は締めくくりたいと思います。

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レムデシビルとヒドロキシクロロキン 6

前回では、ヒドロキシクロロキンの治療薬としての可能性を、マクロライド系抗生物質との係わりで探ってみました。アジスロマイシンについては、「コロナ」というサブワードでの関心が強いことがわかりました。、やはりヒドロキシクロロキンとの併用を念頭に置いた、市井の人々の知恵の集結なのでしょうか。この展開はなかなか面白いと思ったので、もうひとつのマクロライドである、クラリスロマイシンについても考えてみます。

咽頭炎扁桃炎、慢性気管支炎の急性増悪、肺炎(特にマイコプラズマ肺炎クラミジア肺炎)、皮膚感染症、非結核性抗酸菌、レジオネラによる感染症の治療、ヘリコバクター・ピロリの除菌療法に用いられる。

https://ja.wikipedia.org/wiki/クラリスロマイシン

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クラリスロマイシン Wikipediaより

このように、肺炎にも効く抗生物質で、よく使われるのはピロリ菌(おなかの病気)の治療なんですね。

クラリスロマイシンの関心の向きを検索から

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クラリスロマイシンと組み合わせて検索されたワード

どうも、気になるサブワードが紛れ込んでいるようですが・・・。

クラミジア

そういえば、アジスロマイシンのサブワードでも、Yahooの7番目に「クラミジア」が入っていなかったっけ?

クラミジアとは、微生物のなかで、もっともウイルスに近い性質をもつ原核生物です。よく「クラミジアにかかった」などと若い男女が内緒ばなしをするイメージがありますが、やはり抗生物質で何とか治そうと通販を検索するという発想なのでしょうか。
そのクラミジアに効く(とされる)アジスロマイシンと、クラリスロマイシン。
では、クラミジアに効くのと、コロナウイルスに効くのはどういったつながりで、可能性が出てくるのでしょうか。違う病気なのに・・・。

一方で、非生物の特性を併せ持つウイルスでは、ゲノムを持つRNAウイルスとしてプラス鎖のもの(コロナウイルスなど)とマイナス鎖のもの(インフルエンザウイルスなど)の両方が見つかっている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/リボ核酸
思い出してみると、インフルエンザウイルスを勉強したとき、コロナウイルスとちがって、リボ核酸の内部で、マイナス鎖の一本鎖だという点がありました。だから、インフルエンザのワクチンは予防に不十分だった、治療も同じではないということなのですが。
これは、逆に考えれば、コロナウイルスに効く(かもしれない)抗生物質で、クラミジアに効くということは、似ている部分というか、ヒントがあるのでは?

クラミジアは何の病気を惹き起こす?

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クラミジアの係わる病気

なるほど・・・。クラミジア肺炎というのが、あるんですね。こうしてみると、やっぱりコロナウイルスと似ているというか、つながる部分が見えてきます。

そもそも「コロナ」の略称で呼ばれるようになったのは、感染症のこと。なんの感染症かといえば、新型肺炎。1月くらいには報道機関でもそう呼ぶことが多かったのを思い出します。

コロナウイルスの肺炎と、クラミジアの肺炎には、なにか共通項があるのでは?

考えてみると、抗ウイルス薬であるレムデシビルが、いち早くCOVID-19に効くと期待されたのは、ウイルスの「RNAポリメラーゼを阻害する」という作用機序がポイントだったはず。

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レムデシビル Wikipediaより

この、ポリメラーゼは、ウイルスが遺伝情報をmRNAに転写し、たんぱく質を合成するための部位。レムデシビル自体はもちろん、ウイルスを阻害するのですが、ヒトのポリメラーゼには作用しない、ということが大事になってきます。
ややこしい話ですね。でも、少しゆっくり考えてみると、さほどおかしな話でもない気がします。
ウイルスはその遺伝情報を、ヒトの細胞のなかに仮住まいして、その状態でしか増殖できません。その増殖を止めるのが、ウイルス治療薬の役割。でも、遺伝情報を複製するのは、なにもウイルスだけではなく、ヒトも毎日複製しています。だとすると、ヒトとウイルスを分けて、ウイルスにだけ攻撃(阻害)を加えられる薬品が欲しい。

ウイルスにだけ効く薬品っていったい何よ?

これを考える上で、クラミジアはなかなかいい線をついています。ヒトがかかりやすい病気のひとつでもあり、とにかく感染力が強いので、その辺に蔓延している可能性もある。だから、通販で買いたいという関心の向きが、検索結果にもあらわれている。
だとすると・・・。
レムデシビルではなく、ヒドロキシクロロキンとの併用で、クラミジアに効く抗生物質が使われた理由って何かあるよね?
ここを考えると、もう少し前に進めそうな気がします。
というあたりで、今回はヒントを撒いて終えたいと思います。

参考:レムデシビルとヒドロキシクロロキンの現況

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レムデシビルとヒドロキシクロロキンのツイート数

ツイート数の推移をみると、レムデシビルは日本語については、「24時間で80件」英語については「2時間で50件」の数字、ヒドロキシクロロキンは日本語については、「24時間で70件」英語については「2時間で320件」の数字でした(8月11日13時現在)。とくに変動したのは英語のヒドロキシクロロキンが減少したことでしょうか。これは誤差の範囲かもしれませんが、レムデシビルとのレースでは抜かれたり、追い抜いたりといった状態がまだ続くのかもしれません。
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レムデシビルとヒドロキシクロロキン 5

前回までは、治療薬としての効能の賛否、ヒドロキシクロロキンの詳細、レムデシビルの抗ウイルス薬としての側面、インフルエンザウイルスとの違いなどをみてきました。いろいろわかってきたこともあるけれど、そもそも・・・。という気がするのは、いつになったらコロナウイルスの治療薬は決まるの? 間に合うの? という疑問。ただ、ここは粘り強く臨床の現場に対処してもらうしかないのかな、と思いました。そう思ったきっかけがあるので、考えたヒントを共有します。

ツイート数からみる現況

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レムデシビルとヒドロキシクロロキンのツイート数

レムデシビルは日本語においては「24時間で60件」英語においては「2時間で40件」だったのに対し、ヒドロキシクロロキンは日本語においては「24時間で200件」英語においては「2時間で450件」という数字(8月10日13時現在)。こうしてみると、ヒドロキシクロロキンの数字があまり変動せず、レムデシビルの数字が減少に転じたと判断できます。

理由としては、ヒドロキシクロロキンの賛否両論の盛り上がりがありそうです。現段階ではどちらの論者が優勢とも判断しかねるのですが、やはり米国では3月からの大統領の肝いりで進められたFDA公認の手続きが一転覆されるという混乱が生じたこと、その後英国でのヒドロキシクロロキン投与治療の重症化リスクを指摘した学術雑誌の「撤回」騒ぎもあって、とにかくややこしいのですが、話題には欠かないという点で、レムデシビルの前に出たようにみえます。

ヒドロキシクロロキンはほんとうに効くのか?

英国の医学雑誌としてまず名前が挙がる「ランセット」。今回の撤回論文は、いったいなんだったのでしょうか。
むずかしい内容で、とても全部を網羅するまで至らず申し訳ないのですが、少し見えてきたかな、という部分をかいつまんで共有します。

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クロロキン投与単独群と併用群の内訳

この表は、論文で事例として挙げられた、9万人あまりの感染者への治療と、その後の経過の一部です。どの一部か、というと、1万4千888人の方にクロロキンあるいはヒドロキシクロロキンの投与がなされたので、その内訳です。両方の治療薬を投与されなかった8万1千144人の方に対して、事後分析するなかで重症化リスクを特定することを目指して行なわれた研究と思われます。数字をみると、マクロライドとの併用で投与を受けた方の人数が多くなっています。
また、死亡率をみると、投与を受けなかった8万1千144人の方では9.3%だったのに対し、ヒドロキシクロロキンの単独群では18%ほど。ヒドロキシクロロキンと併用でマクロライド系抗生物質を投与した患者が23.8%ほど。これをみると、どうもヒドロキシクロロキンは危ないのでは? と判断してしまいそうです。
ただ、この数字をさらにみていくと、クロロキンの単独群は16.4%、クロロキンとマクロライドの併用は22.2%、ということがわかります。一定の要素としては、クロロキン系が影響した可能性もありますが、マクロライドを併用した場合に高い割合のリスクが示唆されていることも、一定の要素といえそうです。
上の数字から、類推できることはさほど多くはないのですが、はっきりいえることがあります。それは、これが医学雑誌ならば、複数の視点から精査したうえでこの数字を見なければ学術調査の前進には役立たないということです。病院における治療の成功に役立つ、ということと、学術調査の前進に役立つ、ということは違う意味があります。それは、時間に対する考え方です。
病院での治療は時間との闘いでもあります。ウイルスの増殖を、薬物で阻害することによって、健康な身体であれば免疫機能がウイルスを抑え込めるという状態に近づける。それができないのが感染した方なのですが、いずれにしても時間がかぎられる。
学術調査には時間をかけることが正義になる場合がある。というより、そうしなければ正義にならないという事情があります。
新薬の誕生には10年から15年かかることがわかりました。でも、10年も待っていられないという場合もあって、それがいまの新型コロナウイルスという社会現象の進行。

マクロライドって何?

ヒドロキシクロロキンとともに投与されたマクロライド系抗生物質

論文をさらに読み進めると、具体的に名前が出てきました。

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Lancet誌に記述された、マクロライド系抗生物質

クラリスロマイシンと、アジスロマイシンです。

これらの抗生物質を、ヒドロキシクロロキンと組み合わせるのが危険?

そう読み取れてしまう論文が、撤回されたのはある意味では幸運だったのかもしれません。
というのは、4月には南米でこれらの併用によって治療が奏功したとする研究論文も出ていました。
ann-clinmicrob.biomedcentral.com


学術調査の前進には、やはり複数の視点からの精査が役立つ。両方の論文を全方角から比較検討している暇はないかもしれません。それでも、人類が感染症を克服してきた過程をみるかぎり、時間をかけることが克服への近道だったことは、指摘しても差し支えないはずです。
というわけで、マクロライドとの併用が果たして重要な転機をもたらすのか、というあたりで今回は終わりにします。

参考:ヒドロキシクロロキンと、アジスロマイシンの関心の向き

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ヒドロキシクロロキンと組み合わせて検索されたワード
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アジスロマイシンと組み合わせて検索されたワード

ヒドロキシクロロキンと組み合わせて検索されるワードとしては、Yahooにおいては「通販」「コロナ」「製薬会社」が、Googleにおいては「通販」「副作用」「ジェネリック」とあり、いずれも通販への関心が高まっていることが伺われます。
アジスロマイシンと組み合わせて検索されるワードとしては、Yahooにおいては「錠250mg」「効果」「コロナ」Googleにおいては「コロナ」「通販」「肺炎」とあり、いずれも「コロナ」への併用が有効なのか、きわめて高い関心が見受けられます。

あとがき

抗生物質の効能については、さまざまな研究があるだけでなく、一般にも市販され、それを通販で買い求める方の需要がひじょうに強くあるようです。これを、ヒドロキシクロロキンとの組み合わせに照らし合わせて考えることは、今後のCOVID-19世界の天下布武というべき時代に、少しは意味をなすのかもしれない、と思いました。レムデシビルとヒドロキシクロロキンのレースは微妙な課題設定ですが、意外と掘り下げるところはまだ残っているのかもしれません。
追記:「クロロキン投与単独群と併用群の内訳」画像に一部数字の誤りが見つかり、その説明に該当する本文を訂正しました[20200811/21:55]。
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レムデシビルとヒドロキシクロロキン 4

新型コロナウイルスがきっかけで、ウイルスへの関心がますます高まっています。同じウイルスでも、インフルエンザのウイルスは、ウイルスの一般認識と分けて考えることが通例のようです。
ここでは、自分なりにその違いを探り、わかったことを共有します。

インフルエンザのウイルスはどんな構造?


インフルエンザウイルスはその内部構造たんぱくから、3種類に分けられる。
A型はRNA分節が8、鳥や豚にも感染する。B型はRNA分節が8、鳥や豚には感染せず、ヒトに感染する。C型はRNA分節が7、豚に感染する。

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インフルエンザウイルスの内部構造 Wikipediaより和訳

ウイルスと違うの?

インフルエンザウイルスの表面はエンベロープをもつという点でウイルス全般と同様だが、特有のたんぱくをもって、この分類がおこなわれる。

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インフルエンザウイルスの特徴

A型の場合。
細胞内部では、ウイルス粒子から遺伝子が放出される。この、ウイルスゲノム複合体は、細胞核へと移行する。ノイラミニダーゼは、細胞表面のシアル酸を分解する。そうすると、子孫ウイルス(出芽で発生)はべつの細胞へと移るとき、宿主細胞と切断を行なって、また感染のために吸着する。

吸着→ウイルス取り込み→膜融合→脱殻→ウイルスゲノム転写→複製→ウイルスたんぱく質の合成→ウイルス粒子の再構築

インフルエンザの治療薬のポイントは?

上に挙げた感染サイクルを、いかにして中断するか?
これがインフルエンザの治療に本質的解法をもたらします。
たとえば、インフルエンザを対象に開発された抗ウイルス薬の例は、このサイクルの「どこ」を阻害するのかで分けられます。

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抗ウイルス薬を阻害過程で類別

抗ウイルス薬といえば、アビガンもあるけど?

インフルエンザから話を転じると、

「複製」のプロセスを阻害する抗ウイルス薬が、新型コロナウイルスの治療薬として、富士フイルムの肝いりで開発されたアビガンです。

アビガンの別名はファビピラビル。中国語では、「法匹拉韦」で知られています。

富山化学工業の江川裕之らが合成し、古田要介らが抗インフルエンザ活性を見出した。富山大学医学部の白木公康らがインフルエンザ感染マウスでの有効性を確認し、タミフルより強い治療効果を有していること、薬剤耐性を生じないことを見出した。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ファビピラビル
インフルエンザの治療に使えることで普及が進んできたファビピラビルですが、2020年に一気に有名になったのは、新型コロナウイルスの流行中の3月です。日本国内では、これまでに2月から厚生労働省の判断で、感染者への投与を開始しています。
中国の武漢では3月下旬に、7割以上の軽症患者において1週間以内での快方がみられるとの研究結果が発表されています。
アビガンとレムデシビルの共通点は、このRNAポリメラーゼを阻害する点です。一方、異なることはレムデシビルが点滴を通じて投与するのに対し、アビガンは内服薬として投与すること。また、副作用も異なります。レムデシビルは肝障害、腎障害が主な副作用なのに対し、アビガンは催奇形性が指摘されています。このため、アビガンを妊娠している方に投与することができないという問題があります。現状ではレムデシビルを承認する国が続出したのに対し、アビガンは承認に至らず、やはり副作用の安全性が大きな要素になっているようです。

アビガンの関心の向きを検索から

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アビガン検索とサブワード

Yahoo!ではアビガンとともに検索されたサブワードとして、「製薬会社」「効果」「副作用」が上位に、Googleでは「副作用」「承認」「コロナ」が上位に入っています。なお、Googleでは「レムデシビル」との組み合わせで検索する人が比較的散見されます。Yahooでは、「価格」という関心を寄せる方が見受けられ、このあたり、日本国内での承認を目指し、先行しているレムデシビルとアビガンが比較対象になりつつあることが垣間見えるようです。

レムデシビル、ヒドロキシクロロキンの現況をツイート数から

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レムデシビルとヒドロキシクロロキンのツイート数

レムデシビルがやや優勢だった前日とは若干の変動があったようで、ヒドロキシクロロキンは日本語で「24時間以内200件」英語で「2時間以内で400件」(8月9日14時現在)という数字を見せています。レムデシビルをファイザーが製造するという速報に影響された前日からの反動もあったかもしれません。

あとがき

インフルエンザのウイルスが新型コロナウイルスと共通項が多ければ、もう少し治療薬の開発は順調に進んだかもしれません。RNAを基盤とするウイルスであることは共通ですが、増殖過程をみていくと、

プラス鎖の一本鎖RNAをゲノムとして持つため、標的細胞の細胞質でそのままmRNAとして機能し、標的細胞のリボソームに結合して、RNA合成酵素を含むウイルスのタンパク質が作られる。

との記述がWikipediaにもあるように、インフルエンザはマイナス鎖の分類であって、このあたり一筋縄ではいかない要因とも見受けられます。
アビガンに関しては、中国での先行事例が奏功するかに見えた3月に、日本が国を挙げて推奨したのが期待を盛り上げたのですが、その後承認へのプロセスが難関で、結局中国でも事例が十分にあったレムデシビルを日本も承認するという流れが出来やすかったように見えます。
現状では、レムデシビルを上回る関心がヒドロキシクロロキンに寄せられている観測結果もあり、筆者のみたかぎり、レムデシビルとヒドロキシクロロキンのテーマで継続して調べていく意味はあると思われます。


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