とある中年女性が、DNA検査キットをきっかけに新たな家族と出会った、ふつうだけれどふつうでない話

DNA検査が、少しずつ世の中を変えていくのかもしれない。もしかしたら、もう変わっているのかもしれない。
そういうことを、感じた新聞記事を偶然みつけたので、読んで分かったことをここに共有します。
フェアファックス・タイムズ紙の記事として6月12日に公開されたものを、かいつまんで日本語に置き換えてみた結果です。

パンデミックのなか、多くの人が自らの新たな暮らしに慣れようとしているところで、キンバリー・ティモラさんは、やはり自分のまったく新しい現実に、慣れようとしはじめている。フェアファックス郡に、養子として暮らしてきた彼女は、23アンドミーのDNA検査をきっかけにして、自分の両親や親戚が韓国にいるということを知った。
キンバリーさん(38歳)はいまフェアファックス郡に暮らしているが、生まれは韓国。3歳のときに養子になった。コロラド州アスペンの街で育ての親、妹とともに暮らしてきた。こちらの妹もやはり、韓国から養子で引き取られてきた。「アジア人の家族は、たしかもう一軒だけ街にあったと思います。だから、妹と、わたしと、その家だけだったと思います」と彼女は話す。
母親が逝去してから、彼女はロンドンへと移住し、そこでファッションのマーケティングを研究し、小売店に勤めていた。クリスチャン・ルブーティンやプラダといった高級店で、ストア・マネージャにもなった。ロンドンではのちに夫となる相手と知り合い、そこで9年間暮らしていた。彼女は6歳の娘、3歳の息子がいる。家族はその後、ヴァージニア州北部にも2年暮らした。
キンバリーは「アンセストリー・コム」のDNA検査を10年くらい前に試してみたと話す。だがその結果は大まかなものにとどまっていて、自分にはこれといった親戚が見当たらないという状態だった。「人から聞いた話で23アンドミーを知ったんです。自分の遺伝子についてよくわかった、遺伝的に近い間柄にある人の存在もわかってきたという話がありました」彼女は2月に、誕生日祝いとして23アンドミーのDNA検査キットをもらった。
3月13日には、結果が送られてきた。ページをひらくと、3インチの画面に次のような文句が記されている。「親戚がみつかりました。片親が共通の妹です」
「宇宙って、こんな感じだろうな、という気分でした。重力も、動きをとったという実感もない、っていう」と彼女は感想をもらす。「自分の心臓が止まったような、なんだか息が出ないような気持ちで、でもクリックしてみました」キンバリーはそれからまもなく、自分の親戚だというカテリンをみつけようと連絡をとり、数日後には返事がかえってきた。
カテリンはすでに自分の家族が韓国にいるとわかって連絡をとっていた。キンバリーのメッセージが来るよりも先に、すでにその、新たな家族の人たちと会ってきたという。話をしてみると、あまりにも似た境遇なので、びっくりした。コロラドではほんの2時間の距離という近所の街で育ったというだけでなく、それぞれの息子は誕生日まで同じ、しかも19歳のときには腰の右側に韓国名の刻まれた刺青まであった。
そこまで同じことづくめの彼女たちは、それ以上の共通点を見出すことにはならなかった。カテリンは別のルートから真相を知るため、韓国にある養子縁組の当局に問い合わせてみたところ、どうやらふたりの関係性は少し違ったものだったことを知る。キンバリーにとってカテリンは片親が共通の妹というのではなく、姪だった。
つづきは本文へ

あとがき

実際に自分の思わぬところで、違うような人生がとつぜん目の前に開けていくという経験は、この記事のふたりだけでなく、いろいろなところで、見えなくても起きているのだと思いました。
DNA検査の善し悪しについて自分が言える内容はこれといって見つかりませんが、そこにあるのはごくふつうのヒトが、ごくふつうのヒトに対して感じる、親しみや、愛着といった子供のころからもつ感情なのかな、と思います。人間の知覚できる世界が少しずつ広がって行く、その過程に自分たちは生きているのかもしれません。
なお、上記の文章は一般人が自分の勉強した成果を共有することを目的としています。すべての内容について正確性を保証するものではないことをお含みおきください。